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七月が過ぎて、いつの間にか八月に入っていた。
その間、エイリは二人の人間を手にかけた。
一人は何人もの女性を地獄に沈めてきた男性のホスト。
もう一人は結婚詐欺を生業として巨額を稼いでいる三十代の無職女性。
どいつもこいつも取るに足らない小悪党たちだ。
エイリは二人を通り魔的な方法で殺害した。
暗殺者が使うような仕込み刃が搭載されたいる指輪で正確に頸動脈を切り裂いた。
一人はファミレスの共用トイレに入ったタイミングで、もう一人はエレベーターに一人乗ったタイミングで。
東京に来て始めての決行した殺人よりも大分スマートな方法だ。
その内の二回とも、僕がやることは事前調査の際の尾行ぐらいだった。
三人目の頃には僕もある程度後処理の手際が良くなり、人がもがき苦しみ死んでいく瞬間にも、あふれ出すどす黒い血にもあまり臆さないようになった。
人殺しの手助けという行為に大した罪悪感を抱かなくなっている自分に、ふとある時気がついて心の底からぞっとした。
僕の中でいつの間にか、殺人という行為が日常に根づいていたのだ。
今日までエイリと行動を共にして、自分の感覚が麻痺してしまった事実を否定することはできない。
あの夜以降、エイリが他人に情を見せることは一度もなかった。
無感動に殺害計画を巡らせ僕に指示をし、システマチックに殺害を決行した。
そして、腹を満たす。また殺す。
東京に来て以来、ナガシマさんからは一度も連絡をくれたりはしなかった。
都心の広いマンションの一室で、僕はいよいよ本当に狂ってしまいそうだった。




