どんちゃんと魔法のもろみ作り
ある日の朝、どんちゃんとタールは、お星さまのガラス工場で受け取った小さな星のガラスを手にして、魔法の水の国へ向かいました。目的地は、いつも美味しい匂いがする、魔法の醤油工場です。どんちゃんは、星のガラスがどんな風に醤油に関わるのか、ちょっとわくわくしていました。
工場に到着すると、アマミホシゾラフグさんが迎えてくれました。今日の作業は、アマミホシゾラフグさんが用意しておいてくれた大豆と小麦、それに星のガラスを混ぜて特別な「もろみ」を作ることなのだそうです。どんちゃんたちはアマミホシゾラフグさんの言うとおり、星のガラスを慎重に他の材料と一緒に混ぜました。星のガラスは油断するとふわふわ浮かんで逃げてしまうため、こぼさないように気をつけなければなりません。
「さあ、これを製麹室に運ぼう」とタールが言うと、どんちゃんは興味津々でその後をついて行きました。製麹室に入ると、中には先ほどのアマミホシゾラフグさんが準備して待っていました。アマミホシゾラフグさんは、海の底で不思議な放射状の模様を作るのが得意なフグで、タールとは昔からの知り合いです。
「アマミホシゾラフグさんはお絵描きが得意なのでしょう?今日はどんな模様を作ってくれるの?」どんちゃんが尋ねると、アマミホシゾラフグさんは「特別な模様をね」と笑って答えました。アマミホシゾラフグさんは、混ぜられた材料を広げ始め、器用にキレイな放射状の模様を描きました。しばらくすると、模様の上からキラキラと星のような光がふわりと舞い上がり、部屋全体が幻想的な雰囲気に包まれました。
「わあ、すごい!」どんちゃんは目を輝かせて、その光景に見とれていました。タールも満足そうに見つめています。
しばらく待つと、アマミホシゾラフグさんが「そろそろ良いよ」とタールに声をかけました。すると、「これに、私が深海から採ってきた特別な海水を加えるよ」とタールが言い、瓶に入った透明な海水を持ち出しました。その海水は、タールが長い旅の末に見つけた、深海の神秘的な場所から汲んできたものでした。タールが海水をそっと模様の上に注ぐと、星のキラキラがさらに輝きを増し、部屋中に柔らかな光が満ちました。
「さあ、これを瓶に詰めて持って帰ろう」とタールが言うと、どんちゃんは星のガラスが入っていた瓶を手に取りました。小さな瓶に詰めてみると、星のキラキラが漂っていて、どんちゃんは不思議な気持ちでその中を覗き込みました。
すると、なんと瓶の中でひとつのキラキラが、どんちゃんに向かって手を振っているではありませんか!「見て、タール!星が手を振ってる!」どんちゃんは嬉しそうに言いました。
タールもその光景を見て、優しく笑いました。「この星たちには、特別な海水の魔法がかかったんだよ。これからその魔法が瓶の中いっぱいに広がって、魔法のもろみに変化をするんだね」
どんちゃんは、星のキラキラに軽く手を振り返しながら、そっと瓶を大事に抱きしめました。これから先、この特別なもろみでどんな醤油ができるのか、どんちゃんは楽しみでたまりませんでした。
おしまい。