■ 09 敵襲!ブラックドラゴニアン
「ふはははははっ!馬鹿めっ!俺に勝てるとでも思ったか?」
「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアシャアアアアアアアアア!!」」」
3匹まとめて空中で捕獲し、四方八方から空気の壁で圧縮プレスしてやった。
このままぺったんこに潰してもいいんだが、相当グロイ絵面になるな……
とりあえず2匹固定して1匹解放。当然逃がさない。
相手に見えない魔力の鎖は手足を拘束し、口には空気の塊を固定している。
俺を見る瞳に恐怖が宿っているのだろう。小刻みに震え、上下に広がり過ぎた瞼が痙攣している。安心してくれ。これからだ。君たちは順番に味わってもらおう。
「ギャウッ!ゴふハァ!ッギィァ!」
無言で殴る、蹴る、どつく!延々と繰り返す!
一番槍かもしれないが、リーダーと思しきヤツを徹底して痛めつける。
加減はしてるつもりだが、骨は折れないように気を配る。殴ってて分かったが魔力ハンドの威力がえげつない。
騒ぎに駆け付けた、武装型の毛皮服を着たドラゴニアンを見て更に動揺している。
こっちのドラゴニアンとは違って、なんか野生っぽさがあるなと思いつつ、カール派部族と言えばいいのか悩みどころだが、俺がやっていることに微塵も動揺していない。
むしろ石槍とナイフを構えてゆっくりと囲みだし、一部は更に周囲を警戒している。
さて、1匹目を完全に沈黙させた後、カールに投げるとロープで素早く手足を括り、完全に拘束してくれた。
後で見せしめに殺そうとするかもしれないが、俺の意図はそんなもったいない事ではない。
「カール。ソレ殺さないようにな」
「「「ハッ!」」」
カールもブービーもトラープも良い返事をするようになったなぁと感心しつつ、手は止めない。
2匹目も同様に念入りに痛めつける。3匹目の悲壮感に染まる表情が素晴らしいな!
淡々と処理している俺を恐ろしい目で見るかと思いきや、さも当然だと言わんばかりに眺めているのはウチの陣営のドラゴニアン達だった。
「一体何で殴られているのか見せてやろう……フハハハハ!」
完全に悪役である。うるさい。
俺は両腕に魔力イメージで作った巨大な腕を纏って殴っていたが、俺にしか見えてない。
ので、その辺の岩やらなんやらを吸いつけるイメージでその腕を見せてやる。
徐々に巨大な腕の形になって行く様を見て、ようやくウチのドラゴニアン達が驚いてくれる。
俺も岩やら砂やらなんやらくっついてイメージ度がさらにアップする!
こ、これは!ディティールにも拘らないとっ!後から考えたら見た目はいらなかったが!男なら拘るだろ!?
巨大ロボットの腕だけが両側から生えているように見えるその姿。どこかの漫画で見た感じを再現しつつも光線が放てないのが悔しい!
が、巨大な腕も然ることながら、手も腕、相応の大きさだ。拳を握れば凶悪な金属調の輝きを纏っている。中身は魔力の空洞だけど、見た目がゴツイので実に痛そうだ。
巨大重機でも良かったんだが、見た目のインパクトに欠けるので除外した。
あと、この見た目がとても悪役っぽくて大好きだ!もうあの漫画も読み返せないんだなと思うと愛おしさすら湧いてくる。オイ。
ついでに何の意味もないが、機械型の触手のように短い石製パイプ繋ぎ合わせ、肩の後ろから何本もタコ足のように蠢かせている。
視覚効果も万全だ!俺のイメージで完璧に無意味に動いている!
最後の三匹目を痛めつけ軽く握って空に掲げる。
拡声器のイメージを口元に再現し、更に声が大きくなるようにイメージを乗せ、低く静かに言葉を発し、重低音を響かせる。
「『隠れている者は全て出てこい。今出てくるならば、こいつらは殺さずに居てやろう』」
大気が揺れる重低音付きの音声は、俺自身が恐怖を感じるほどの物だった。ちょっとやり過ぎたかもしれん。
でもしょーがないだろ?俺が楽しく綿花畑作ってたら襲ってきたんだから!
本当だぞ?食い殺さんばかりに大口空けて飛び掛かかって来たんだから!俺悪くないっ!
こら!カール達も俺にビビるな!カルラとマロンを見習えっ!めっちゃ喜んでるだろがっ!
この世界の初めての敵襲は、角兎でも未知の獣でも小型恐竜でもなく、黒い鱗を持つ別種のドラゴニアン達だった。
「『誓え。俺のために生きろ』」
ハハーッっと声も出ないくらいビビりまくって土下座しているブラックドラゴニアン一族
「怖っ!ベルゼ帰ってきて!」
「お前台無しだろうが。ちゃんと上下関係教えとかないと」
プリマがホントにガクブルしてるので俺も動揺してしまう。そんな怖かったかな?
襲撃犯達をプリマ広場前に連れて来たわけだが、このブラックドラゴニアン達7名は……痩せ過ぎであばらが浮いて見えるほどで、正直居た堪れない。
泣き喚きながら俺の前にヨタヨタと出てきたのは10歳にも満たなさそうなのが3人、それ以下の6歳かそこらのが1人
大人は俺を襲った3名だけだ。男はリーダーのみで、他は女性のみ。
後から気が付いて女性を二人もボコったのかと後悔しかけたが、いや、こいつら俺を襲って来たじゃないか。無傷だがそんなのは結果論だ。
レスタとライチが作った肉じゃが系塩スープ。別名なんちゃってポトフを、小さい子たちの前に並べて、みんなでゆっくりと食べさせてあげているのが見える。
スプーンなんて使ったことがないだろうし、なによりコイツらからしたら臭いは良いが、食い物には見えないと思う。
俺はボコった連中にもたっぷり具が入ったスープの器を置いた。
動かないのは俺が怖すぎたのかどうか知らないが、なんか言った方が良いのかな?
「いいか?ゆっくり食べるんだ。食べ方は周りを見て真似をするんだ。口突っ込むのは只の獣だ。わかるよな?」
コクコクコクコクと上下に首が降られるが、肉体言語とジェスチャーは全宇宙共通言語かもしれない。
心底ビビり散らかしてる彼らは、恐る恐るだがスプーンで具を掬って口に運んだ。
一口だ。たった一口でボロボロ涙をこぼしながら、声にならない声を嗚咽を吐きながら咀嚼し始めた。
警戒を怠らないカール達は武器を構えたままで、彼らをじっと見つめていた。
「そうそう。腹が減り過ぎている時に、食いすぎると死ぬからな?ほどほどにお替りしていいからゆっくり食えよ」
そう言って立ち去ることにした。これ以上見てたら俺がどうにかなりそうだった。
どっこんどっこん♪小気味良く大浴場を建築中!
前々から中途半端に作っていたが、タオルが出来るまで我慢していた。
まだ日本手ぬぐいすら作ってないのに!今日も機織り機に手を付けていなかった。
いや、正確には構造に納得いかないので、何度も試作機を作りなおしている。
気分転換に丁度いいし、と、いう感じでついでに作っとこうという安易な発想だ。
浴槽は石造りだが、寸分違わぬ大きさで切り出した石レンガを、隙間なく反則級の魔力ハンドパワーで圧着させている。
なんちゃってコンクリートが開発できるまで耐えてくれることだろう!
湯沸かし用の石窯鍋は、塩田の鍋と同じサイズで作り、こちらは穴を空けて加工。お湯が浴槽に流れるように石パイプで排出口を設置してみた。
石釜鍋の湯が沸き、排出口の木栓をひっこ抜けば浴槽に流れる感じだ。
塩田用石釜鍋も、後でこの加工をしてやってみよう!にがり用の場合は鍋の底に付けた方がいいかと思案する。苦い汁がちゃんと抜け切るようにせねば。
そっちは置いといて、ここはプリマ広場より一段下がった場所なので、いい傾斜が掛けられる。石窯鍋に直接水が流れ込むように調整して、俺天才なんじゃね?とか一人で遊んでいた。
簡易的な屋根も付け、もっと風情と景色に拘りたいところだが、何が襲ってくるかわからないので壁は必要だろう。
今はいらんけどな。と、湯を沸かしつつ試運転。
火傷するなこれ……コレも改善点だらけで問題作だった!
腐ったら交換方式で、木枠を使い火傷防止の枕木を設置して、風呂の排水はトイレの排水溝に繋げて川方面へ。
肥溜め用の汚水溝に繋ぐと一気に溢れる!ので、今は緊急対策としてこの仕様だ。
何れ汚水処理施設を作りたい。作り方知らんけど!
これも今後の課題だな……凄いな地球の昔の人たちは……どうやったら現代のような世界になるんだ……
こっちの世界より、俺が生まれ育った世界の方が、よっぽど考えさせられるという謎の現象が多々発生している気がする。
「とりあえず、ボロボロの毛皮の方で撫でるようにな」
「「「「はーい♪」」」
何故か先に女性陣と俺が風呂に入っている。
割とぬるめの湯だが、これはこれでいい感じだ。
綺麗だった湯舟に、汚れやなんやらが浮いているのをザルで掬いながら入るという。いろいろ台無しな仕様なのは何時もの事だ。あきらめよう。
石鹸に必要な材料は知っているが、重曹どこで売ってんだろ?すぐ買うぞ。
確か海水か謎鉱石から精製するんだが……精製施設がどころか精製方法すらわからない。たぶん他にもなんか無い。これは流石に作れない。
これが知識があっても出来ない事のパターンだ。力技が通用するならすぐやってる。
謎鉱石探したところで……見分け付くかな?いつもの思考劇場でも答えには辿り着けなかった。
そして男性陣に後から入ってもらい、更に湯が汚れたので一旦お湯を抜くことにした。
汚水構に流したかった……ちょっともったいないとか考えてるのは秘密だ。肥料の足しに!
石釜鍋を沸かしながら泉側の注入口と排出口の量を調整する為に、いろんな穴の大きさの木栓を作る。
沸かしながら湯を入れ続ける原始的システムだ。湯船からあふれるお湯と共に、汚れも一緒に流されてくれればと思ったが、それはそれで色々勿体ない。
クソっこれも誰か改良してくれないかな!
そして、ブラックドラゴニアンの子供達を洗ってやる。
「擦るなよ?撫でるようにしてあげて」
「はーい」
「オマカせー」
カーリーとピーチが割と率先してやってくれるので楽してる。
一番攫われそうな名前なのに子煩悩で頼りになる。カーリーママと凄く仲が良いので任せて大丈夫だな。
男性陣は大人の方のブラックドラゴニアンを監視中。次に入ってもらう予定だ。
服も着てないのに臭うのは、獣避けかなんかだろうか?まぁ聞かないけど。
女性二人も一緒に入ってもらう。
痩せすぎて男女の区別が微妙にわからないのもあったが、万が一暴れたらというカール達の強い要望もあった。
警戒しすぎて困ることはないが、彼らの歴史は俺にはわからんので、後は任せておこう。
毛皮服の材料はたっぷりあるが、やはり凝った作りにはせずに単純な物を作る。
カルラやカーリーママはちょっと豪華目にしてあるので、差別化が必要だ。
序列も大事。このドラゴニアン社会は俺にとってはまだまだ未知の領域だ。実質俺がトップみたいな感じだけどソレはソレ。コレはコレ。
適当に作った毛皮服も、後の調整はカーリーママ達に任せて、俺は彼らの為に部屋を用意する事にした。
同じ洞窟内でもちょっと離れた空間を使おう。拡張は難しくないが広すぎても落ち着かないのではなかろうか?
7人部屋と考えると俺の部屋より広くなるから文句出るかな?
いや、文句は出ないが、心に不満を持つかもしれない。面倒くさいヤツだ。
広くても文句が出ないように、かなり簡素なつくりにするのはどうだろうか?後々貯蔵庫にする感じで……
俺にしては名案じゃないか!まぁ今日は板間の床だけしか敷けないだろうけどさ。
元々洞窟なので基礎石置いて高さを決めて床下工事はすぐ終わった。後は資材置き場の加工済みの板を並べて打ち付けるだけ。超簡単に終わる。
今日のところは壁は作らないので、床に乾いた草束を敷いて毛皮を被せば十分だ。
しかし、俺の建築技術が上がり過ぎて作り直したいとこだらけになっている……こう……職人さんの気持ち超わかる!
卑怯な魔力を使いまくっている俺ですら、こうした初期の手直しをしたくなる気持ち。作った後だからこそわかる修繕箇所。
湿気とかも考えると床下の空間とかイロイロあるよなぁ……とても嬉しく悩ましい時間だった。
子供たちとその母親らしき二人には突貫工事部屋で休んでもらっている。
見張りは3人付いているが、険悪な雰囲気ではなかったので任せて大丈夫だろう。
そして、リーダーの彼が俺に頭を床に付けたまま土下座していて居心地が悪い。
「安心しろ。殺しはしないがお前らは罪人として扱う。異論はないな?」
「アイ……」
黒い鱗に髪の毛は灰色でウチのドラゴニアンとは反対な感じだなぁと思いつつ、肌の方に違いはあまりない。
若干野性味があるが、細すぎてどう考えてもカール達に敵いそうにない。
襲撃するとしたらやっぱ見た目で俺になるのかもしれない……一人でいると狙われるのは当たり前の話だよなぁ……
などと、ボーっと考えながら、今後の扱いを明確にしてやらないと、カール達が納得できないだろう。
なにより『罪人』の意味が分からないようだった。
敵対したら皆殺し文化!流石ドラゴニアン!いや、それぐらいじゃないと家族は養っていけなかったのだろう。
そもそもドラゴニアン達は、交流とか交渉とかすらしない。本能のままにって感じに偏っている。
「カール達の言う事は聞くように。理不尽な命令なら俺が破棄してやるから報告はきっちりしろ」
「アイ……」
「カール達も酷い事はするな。間違った行動は正していいが、無意味に痛めつける事を禁ずる」
「「「ハッ!」」」
うーん。偉そうな物言いってこんな感じで良いか?大体漫画の影響だがたぶんあってるよな?
あ、そうだ。ついでに罰も決めとこう。
「俺の命令に逆らったら死ぬまで汚物係にするからな?」
カール達は先ほどの元気な返事とは裏腹に、か細い返事はあったが非常に渋そうな顔をしていたのがちょっと面白かった。
カルラの待つ部屋に戻れるのに結構時間時間を食った。
ブラックドラゴン達はカールとブービー、トラープの3重鎮に任せて休む事にした。
ああ、やりたかったことが中途半端でちょっと残念ではあるが……新しい労働力が手に入ったと思えばとても有意義な一日だったと言える。
上手く馴染めるようにしてやりたいところだが……考える事も非常に多い。
手枷とか足枷とか首輪とか……漫画によくある奴隷制度も考えたが、この世界には早すぎる。管理するのが俺になるから却下だ。
であれば、服とかアクセサリーとかで差別化が無難か?
とりあえず、装飾品付けてるのが偉い感じで良いと思う。見ただけでわかるというのがシンプルだしな。
「キョウハタイヘンだったネ」
「ああ、まぁなんとかなるよ。カルラも疲れたろ?ゆっくり休んでくれ」
「うんっ♪イマガ……ホントのスガタだよね?アレじゃないよネ?」
あれってアレか……実はもっとビジュアルを追求しようかと秘かに設計しているのは秘密だ!
最初から作っとけば、わざわざ吸着イメージ追加しなくて済むじゃないか!閃いたっ!
明日からコツコツと制作だ……また計画が増えた。そろそろパンクしそう。じゃなくて適当に返事してごまかそう。
「ああ、あれってただのスーツ……服の強化版だから。この弱そうなのがカルラの知ってる俺そのものだ」
「……ソウ。ねぇ……じゃあ……カクニンしないと!」
「確認はしなくぇ?チョッ!お゛ほぉ⁉」
待って!そんな流れに何時なったの!?
慣れた手つきで脱がされながら舐め回される!凄いっ!
ん゛ん゛っ!カルラさん俺の扱い上手すぎるぅっ!