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■ 07 毛皮を燻して草を編む

「そうそう。毛皮の裏の薄い皮。こうやって剥がすんだ」

「コウカ!シャッシャッシャッ!キシャァァアアアアアア!」


 うん。ブービー君。擬音はいらないぞ?後、喜びの雄叫びはみんなもビビるからヤメなさい。

 ナイフではデカすぎるので皮剥ぎ用の石包丁をみんなに配っている。

 みんなの手に合わせた1点ものだ。ちなみにデザインは全て同じにしてある。片手用の手斧がイメージしやすいか、アレの先っぽみたいなやつだ。

 砥石モドキは俺が魔力ハンドで圧縮して超綺麗な長方形で作っている。

 木製のザルが出来たおかげで、一定の大きさの石に分けられたのがデカイ。

 焼成して作るもんだが切れ味がソコソコない方がいいのが石包丁。

 皮剥ぎをしない女性陣も当然欲しがる。草刈りとかも便利だから大事にしてほしい。


「こうやって広げて、煙で燻す作業だ。自分でやってみ?」

「モエナイノ?」

「モエソウ。コワイ」

「そう。だから高さが必要だし、炎が舞い上がらないように、かつ燃え移らないように工夫しなければならない」


 なんて先生ちっくな授業が進行していく。

 毛皮の鞣し方は色々あれど、今できる方法はこれぐらいしか思い浮かばなかった。

 まぁなんとかなるじゃろ。






 モクモクと大量の煙が毛皮の裏側を燻してくれている。

 俺の用意した角材をカルラやマロン達が作った草紐で固定した。

 草紐を作った者も、そうでない者も結んで固定するという事が理解できたようだ。実地教習は大事だよね!


「毛皮の裏はバリバリに乾きやすい。数時間燻したら力強く揉み解すってのを何度もする。ただ、苦労を掛けた分だけいいものが出来るから頑張れ!」

「「「「「アイ!」」」」」


 揉んだり擦ったり、引っ張ったり。みんな結構楽しんでいるが、一部は必至だ。

 何せ裏地の、革が柔らかい毛皮の素晴らしさを知ってしまったから!

 俺が初日に献上された兎の毛皮。反則魔力で思うがままに数日かけて鞣したヤツだ。

 当然、他人にやらせるわけだから、見本が必要だ。俺自身が工程を思い出すのに色々頑張ったせいでもあるんだが、まぁそこは置いとこう。

 鞣し脂なんて無いから裏地に刷り込む脂代わりに……脳ミソは使えなかった……まだ、俺にも嫌悪感というのが残っているのです。

 知識として何かで見たか読んだ気がするが、脳ミソ刷り込まなくてもソコソコ柔らかければいいぢゃない!

 脳ミソってアレなんだぞ?脳だぞ?怖いだろがっ!

 みんなが毛皮の鞣しに没頭してる間に、俺は石包丁で草の繊維を剥ぐ。

 そう、石包丁作っててやっと気が付いた。

 綿花はまだ勿体ないと!肌着向きのコットン素材は、まだまだ圧倒的に物量が足りない。

 あれも紡いでみないとわからんが、向いてない品種の可能性もある。

 繊維質が短いと紡ぐの難しいのよね、確か。それならそれで、そのまま綿として使えるから、どっちにしろ育てたいんだよなぁ。

 枕でもクッションでも大活躍ですわ。できたら布団に!あ、羽毛布団!鶏でも鴨でもいい!捕まえに行こうっ!存在しているかどうか怪しいが!

 綿花畑を視野に入れつつ、未知の羽毛を持つ生き物に思いを馳せつつ、茎の太い草の皮を剥いて剥ぎ剥ぎしていく。

 いろんな繊維を試さないとなぁ。布に適したものは俺にはわからん。ので、繊維を剥ぎ取って分けて保管せねばならない。

 タオルは日本手ぬぐいっぽい物を作ることができれば、しばらく生きていける!

 そう。俺は目の前にある大自然というお宝にやっと気が付いたのだ……長かった……まだ1週間も経ってないというのに!なんてエキサイティンっ!






 日本の都会ではなかなか見る事のない太く長い草。

 茎が太くしっかりしたものが望ましい。俺の背丈以上のも、それはもうすんばらしぃほど生えています!

 俺の手がかぶれない草、というのが条件だ。この世界の成分が不明だ。鑑定スキルの付与を求めます!

 返事はない代わりにプリマが吹いていたのが、ちょっと遠くから聞こえてくる。お前ホントに俺の思考ずっと読んでんなぁ……ズルイっ!

 そして、俺には魔力操作というプリマ様から借りている反則能力がある。

 プリマは俺にあげると言っていたが、俺はそんな厚かましい考えは持っていない。こんなもん借りものだ。俺が努力して得たものではない!

 だからと言って、出来るだけ使わないとか、そんな聖人のような考えは一切ない。だって俺だから!

 本当ならとてつもない労力を要する工程も、一気に気持ち良くスっ飛ばせる!素晴らしい……これが神の力のごく一部……神様すげぇ。

 正直地球もそうなんだが、人間に都合がいい物多すぎるんだよな。

 ふと、思う。プリマみたいな存在が、世界に必要そうなものを何処かしらから集めまくったら……地球の出来上がり……ナンテナー。

 当たってたら怖い。なんとなく当たらずとも遠からず……なんて妄想をしながら魔力ハンドで大量の繊維を叩いて洗ったり、茹でてみたり。

 洗っただけバージョン、茹でただけバージョン、焼いた骨を砕いたものと茹でたバージョン。

 割とラインナップは多いが灰とも茹でてみた。どうなるかは知らんが干しておく。

 白く輝くようにふわふわな繊維になってるのがベストだが、どれが一番向いてるかは数日かかるな。

 本当ならそれ以上かかるのだ。楽し過ぎである。






 さて、本当なら大人数でやるような作業を一人でこなす俺だが、全然疲れない。

 若いって素晴らしいな。昨日あれだけ絞られたのに!

 何がとは言わないが、これでも凄く悩んでいる……彼女自身が喜んではいるものの、俺はされるがままの状態。

 これは愛想を尽かせてほしいというわけぢゃあない。切実に!

 手を出してはいけないって思うじゃないか!実年齢知らんけど!

 それに嫌いじゃないんだ。好きは好き。でもこのご時世に未成年への……じゃない、未成年同士のあれやこれやも大問題ではないか!だろっ?


「そんな事悩んでんの?あの子たちは10年も生きればベルゼの言う大人だよ?10年経ったら十分なんだよ?カルラなら15年前後でしょ?」

「プリマ。それでもほら、倫理的にっ!」


 言い訳してるだけの大人がいる。そう。俺である。

 15、6歳でも若すぎんだろっ!ってのが通じないってのか……


「あっちの法律持ってこないでよぉ……罪とか罰って誰がベルゼに与えるの?」

「……タシカニ……ぇーっとぅ……」

「私とは結婚してるわけだから、カルラとも結婚すればいいじゃない♪」

「……は?」


 俺既婚者でしたっ!






 落ち着くのに相当かかり、俺はプリマの言い分を、途中で遮ったり、言い分けせずに最後まで聞いた。

 ツッコミどころ満載だったが!でも、それって俺の基準でしかないんだなと、プリマの言い分を聞いて半分は納得した。


「つまり、最初からカルラは俺の愛妾として行動してたって事か?」

「そう。神様の愛妾って、あの子らからしたらそれはもう!最っ高の役職よ♪私たちってベルゼの言うところの神様じゃないけどね」

「うーん……そう言われると……そんな気もする……」

「いいじゃない!あんなかわいい子が愛妾ってのもいいけど、ちゃんと嫁にしてあげないとっ♪」

「この世界じゃ嫁も愛妾も……いや、ドラゴニアンからしたら、ちゃんとした序列があるかもしれないか……」


 そう。序列。現在のカール部族の序列第1位はカルラなのだ。

 つまり、あの少女は何しても許される姫様でもあるし、女王様でもある。母親のカーリーママを差し置いて。

 そして一旦枝分かれする。男性陣序列3位までが優先され、その後女性序列が始まる。

 女性序列1位の次が男性序列4位とあとは交互っぽい。

 っぽいというのは、その辺りから上下関係があんまりないからだ。

 初日のナグールが、カルラからコップやら食べ物を奪い取った時、カルラはカール夫妻の娘ではあったが、序列順では大分下だったという事だ。

 今思い返せば、俺の行動はお気に入りの娘を庇い、更に側に置き、更に同衾した上に数々の贈り物……

 そんなつもりは一切無かったハズなのに!


「あ、本妻は私だから。あとは好きにして♪100人くらいまでなら覚えられそうだけど、それ以上は勘弁ね」

「とんでも発言に俺が一番衝撃を受けている……FaaaaaaaaAAaurururururuFoFuoFouFouooOOOOOOOOOO!!」


 初めての雄叫びは気持ち良かった!

 プリマの尻尾でぶん殴られて地面に埋まって死にかけたけど!






「おふぅ……びっちゃびちゃだ……うへぇぇ」

「あほみたく叫ぶからでしょっ!まったく!どう?治ったでしょ?」

「うん。オレナオッタ。こうやって治されたんだな……」


 プリマの巨大な口の中で、もっちゃもっちゃ舌で蹂躙されながら!知りたくなかったっ!俺、清くなかったんだ!

 この世界で初めての相手はプリマさんでした!なるほど!結婚してたかも!

 軽く精神が崩壊してて治ってない気もするが……


「これで治したのはベルゼだけだから。力分ける時はちゃんと体の中から接触させて……説明難しいからもういい?」

「うん。いいよ。大体わかったから」

「だと思った♪だから好きよ♪」

「うん。俺も好き。そしてまぁ……カルラの事も好きだなぁ……参ったな」


 そう。プリマが好きなのは元々なのだ。感謝もしているし、大事な関係で居たいと思っている。

 じゃあカルラはというと……これも俺の癒しにもなっていたし、見た目は……ちょっと変わってきているような気もしないでもない……ん?

 最初のインパクトから1週間ほどで大分見慣れたせいだろう。可愛く思える。


「ベルゼの基準はわかったけど、私からすれば今が大事だと思うよ?明日どころか今日を生きなきゃ!」

「……全くだな。うん。ありがと。大好きだぞ!」


 めっちゃくちゃ嬉しそうに舐め挙げられて涙目だったのは俺でした。

 プリマの唾液でべとべとになってしまったので、頭を冷やすついでに軽く洗っとこう。

 泉の水は当然冷たいが、川よりマシだった。

 飛び込んでばっしゃばっしゃ洗いたいところだが、飲み水でもあるので自重した。

 っふぅ……サッパリした。後はプリマにもカルラにも誠実に行きたいと思う。

 出来るかどうかはわからない。独身時代が長すぎて、恋愛関係は忘れたい思いの方が強すぎる。

 誰でも失敗したくないのは当たり前だが、お互いを思い合うだけでは足りないんだと気づいた頃には、大体失敗してて、取り戻せない上に次に行けない年齢になってたりする。

 正に俺の事だ。失敗だらけで苦笑する。楽しい事もあったはずなのに、それすら霞んで逝ったわけだ。

 いろんな人に出会って、学んで教えてもらったはずなのに……なぁ?

 夕方の食事広場は賑やかだ。焚火前で身体を乾かしていた俺は、みんなを何となく眺め、プリマは寝息を立てている。

 食ったらすぐ寝る奴だな。まぁいいんだけど♪

 気分は良かった。






 今日の食事は何時もとちょっと違って塩にエグ味があった。

 不味いわけではないが、ちょっと美味しくないので、柑橘系と思しき酸っぱい実を絞って、塩レモン的な感じで食ったら案外いけた。


「コレ、タベラレナイモノダト……」

「まぁレスタなら普通そう思うよな。俺もそう思う。普通に食う物じゃない♪」


 レモン系の酸っぱい汁は味を絞める事も出来るし、フレーバーとしても最高の素材だ。芳香剤に使うつもりでたまに捥いで研究しよう。

 腐りやすいのが難点だが、密封する術があれば果汁で保管できると思うんだが……知識はあれど技術がない。

 ドラゴニアン達の発展に期待する!今日も明日も生かせてやる!

 とはいえ、普通に美味い塩は欲しいよなぁ。

 最初に作った塩も、俺の記憶からすれば拙いもので、ろ過機を通してエグ味を最小限に避けたつもりの物だ。

 ちゃんと思い出せば、もっといい物が作れそうだったんだけど、あの時はアレで良かったと思う。

 さて、塩田をちゃんと思い出そう。社会科見学会の時に俺も桶で海水撒かせてもらったはずだ。

 ただし、売り物の方じゃなくて実体験コーナー的な奴で、男子生徒は全員やらされたやつだ。

 砂に撒かずに自分に被ってた奴はお調子者でヒーローになってたが、今思い返せばアイツ以外がやったらウケてなかったのだと理解できる。

 年取らないとわからないことも多かったなぁ……しみじみ思う。

 問題は海水を撒いてー……自然に太陽に晒して乾かしーの、砂を集めて真ん中の箱に海水を入れて……それを毎日やるとかいう説明だったはず。

 つまり、砂は再利用可能。風で飛ばされたら継ぎ足す的な感じ?っく……この辺が曖昧だ。

 海水をど真ん中で撒いてたのにいつの間に箱が?ん?いりゅーじょんっ!?

 かなり悩んだ!俺の記憶が断片的過ぎる!






 日が落ちる前に石板に軽く塩田の構想を石筆で書いてみる。

 別に彫らなくても石板の目を粗めにして、白い石で黒板にチョークみたいに書けるのだ。

 普通は消すのにちょっと苦労するが、俺は魔力サンダーでザックリ消せる。石板がブ厚ければ何度でも書けるのが魅力だ。

 あ、これちゃんと黒板作ったほうがいいな……チョークってどう作ればいい?魔力で圧縮するか?出来そうだな!

 何時もの脳内劇場はいろんなところに飛び火する。

 いかんいかんいかん!1歩ずつ進まねば。やれることも多すぎて収拾がつかなくなる。

 うんうん唸って書いていると、俺の斜め後ろにちょこんと座るお姫様。

 あれ?いつもなら声かけてくるのにな?と、手を止める。

 珍しく俯いてる。え?どっか怪我でもしたか?と、顔を見る。

 ものすごく紅い。目線が合わない逸らされる……病気ではないな。コレ。


「カルラ?……どした?」

「ゴッ、ゴメンナ……サイ……」


 なにが?昨日の事か?凄かったです。いや違う!

 じゃなくて、心当たりはある。俺は察しのいい自分がちょっと嫌になる。コレだ。

 俺の過去のよくあった失敗だ。察しは良いのに羞恥心が勝ってしまう病気の事だ。ごまかしたり逃げたりして、あの時ああしていればとか、こうしていればとか、たくさんあったよな?

 間違えないようにしないとだ。後悔ばっかりしてきたじゃないか。

 相手にももちろん後悔させたくない。だから逃がさない。

 俺はカルラの手をゆっくり握って捕まえた。

 ビクついて逃げ出そうとしたが、抱き寄せて落ち着かせた。

 初めて俺の方から抱き寄せて、カルラの背中から優しく包むように軽く抱きしめる。


「ほら、これなら恥ずかしくても……顔見ないで話せるだろ?なんでも聞くぞ?ついでに先に言っとくが、俺は怒らないから安心しろ♪」

「エ、エット……ウン……エヘヘ~」


 照れてくれる上に、嬉しそうにしてくれるだけで十分だったんだが、カルラの言葉を待つことにした。

 そう。俺は紳士。決して変態紳士ではない。若干おちゃらけておかないと俺の心は持たないのだ。

 50年以上生きようが生きまいが、教えてやろう。中身は中高生時代とそんなに変わらないという事実をなっ!


「まぁ……プリマにも怒られたけど、俺はプリマもカルラもどっちも大好きだと自覚してる。でも別の世界で生きてた記憶があってな?聞いてくれるか?」

「ウン……ダイスキ……ウレシイ!」


 ああ、なんか甘いですよ奥さんっ!甘酸っぱい奴じゃなくて!これがあまぁあああいって奴ですわ!砂糖作れそうっ!

 あとプリマ。女性陣となにしてるのか分かってるからな?実況してるよな?ん?

 当たり前のように返事はないが、とても静かなのが恐ろしく不気味だった……これ絶対女性陣に筒抜けな奴です!

 だが、俺も覚悟を決める。これから先もここでやってくんだ!と、思えば羞恥心など置いて行ってやればいいじゃないか。

 俺はカルラに今まで違う世界で生きてたことも、死にそうになってたことも、プリマに助けてもらったこともポツポツと話した。

 大半が理解はできなかったと思うが、それでも嬉しそうに相槌をしてくれながら、手握られながら、指を優しく絡めてくれたり、なぞったり。

 ああ、なんか恋人同士の時間だなって雰囲気が漂っている。

 客観的に見ればリア充死ね状態だ。殺されません俺が勝つ!


「プリマサマガセイサイデ……ワ、ワタシガ……ソノ……キイチャッテ……ソノォ……ワタシノコトモ……オ、オナジクライ!」

「ああ、同じくらい大好きだ。言い訳はしない。両方好きだ。正直に愛してるぞ」


 異論は認めます。カカッテコイヤ!

 構えていたがカルラはもう感極まったように振り向いて大しゅきホールド!力強っ!前から思ってたけど俺の基礎身体能力ひっくいな!

 プリマもカルラも尻尾がビッタンビッタン鳴ってるので変な振動が起こってるし!

 ん?プリマも?やっぱ実況してんなアイツ……姿は見えないがアイツならやる。確実に!

 ちなみに俺も顔真っ赤で耳まで赤いのが自覚できた。

 興奮冷めやらず、月が綺麗ですね。とか言っても通じない世界。

 俺は二人の女性を同時に口説いたわけか。恥ずかしくて悶絶死しそう。しないけど。

 その夜、何時もならされるがままの俺は、本当にカルラを優しく可愛がってあげた。

 指で、舌で、上から下まで初日にされたこと以上のお返しだ。

 カルラの想像以上の喘ぎ声が響き渡ろうが手は止めず、胸にある綺麗な実を舌で丹念に転がす。

 跳ね上がる身体を優しく抱いて、カルラの舌と俺の舌が絡み合う。

 カルラの下半身が跳ねる。少し刺激が強すぎたかもしれないが、今度は優しく舌で色んな所を可愛がってあげる。

 口を押えて悶絶しながら何度も腰が跳ね上がるが、波打つ快感を引き出せているだろうか?男の俺ではカルラの感じている様は演技されているとわからない。

 それでも彼女の吐息と共に漏れる言葉を信じるならば、相当気持ち良くなってくれているようだ。

 もう小一時間は凄いことしてるなと思っている。

 舌は絡み合ったまま、激しい吐息を吹きかけ合いながら、意識してしまう部屋に充満した噎せ返る、独特なほんのりと生臭い果実の芳香。

 お互いが一緒に達せる事を予感し、嬉しさがこみ上げたのは同じだったようだった。

 粘度の高い体液が身体の間で混ざり合い糸を引く、そんなことも気にせず抱き合い、肩で息をしながら何度も舌を絡めたり呼吸を整えたりで大忙しだ。

 興奮は収まることなく、身体から滲み出る互いの汗が、肌の隙間で何度も音を立てる。

 涙をぽろぽろと零すカルラの瞳から雫を舌で掬って味わったりしたら、羞恥心に負けたのか俺の胸に顔を埋めてか細い声を出して可愛くごまかしている。

 そんな、なんとも言えない甘やかな時間を楽しむ。こんな時間は随分遠い昔に忘れて来たんだけどな……いや、それは違うな。

 カルラだからだ。カルラがくれた大切な時間だ。

 だから一緒に大事にしようって思って欲しいと、俺は誰かさんに聞こえないようにポソポソと彼女の耳に囁いた。

 俺に顔を埋めたまま、コクコクと頷く彼女の頭を、優しく何度も撫で下ろす。

 こんな可愛い彼女が出来てしまいました……正直嬉しい。

 思えば初日からダイレクトアタックされてたよなぁ……むしろ1週間もかけて申し訳ない気持ちの方が大きい。

 流されてる感は否めないが、この世界でも、恥ずかしさを理由に逃げ出すなんてことはしたくない。


「俺と一緒に……その……一緒に幸せになる努力をしてほしい……」

「……ハィ……」


 体温を感じながら返事をするカルラの顔は見えないが、抱き付かれてる腕の力に随分感情がこもってる。

 幸せにしてあげるなんて言えない。幸せにしてあげようと片方だけ頑張る虚しさは味わいたくもないし、相手に味あわせたくもない。

 今を大切に。知らない間に手放してしまわないように……しないとなぁ……

 なんて格好のいいセリフは置いといて、それでも俺は堂々と言わせてほしい事がある。

 当然のごとく断っておきたいことがある。聞いてくれ。






 本番はしてないからセーフだろ?

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