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■ 01 ようこそ緑あふれるこの春へ

 夜が明け始める田舎の壮大な景色に見惚れながら、どこまでも続く緑の樹海に人工物が全くない緑の山脈。

 視線をずらせば青い海と輝き始めた水平線を境にどこまでも恐ろしく広い空。

 煌めく翼を大きく広げた翼竜は、昔見た映画のように翼広げ、優雅に飛んでいくのをついつい視線で追ってしまうが実にでかい。


「ふぅ……なんだ、現実か……」


 遠近感を狂わせる大きさでないことを祈るばかりだ。

 とりあえず周囲360度。見渡してみたものの、人工的な建物は一切見当たらない。

 太陽は1つで月は3つかな?重なってるように見えるから多分そうだろう。

 なかなか良い乳白色から赤に青とうっすらと見え、美しく並んでいるようで心が落ち着かない。

 信号機と同じ順番だったら落ち着けたか?そうでもないか。

 見慣れてる景色と随分違うからどこで落ち着けばいいか俺の心が錯綜中。


「どう?なんとか生きて行けそう?」


 尻の下から小気味良く、高めの女性の言葉を下から上に聞き流し、胡坐をかいたまま呆然と空を仰ぎ見る。

 朝日に照らされただけでなく、自ら白銀に輝きを発しているような……鱗のような何かを無意識に撫でながら、今後の事は何も浮かばない。


「どないせーっちゅーんじゃ……」


 俺の素直な思いを口にした。


「とりあえず子作りする?」


 何を言っているのかは分かるが、何が出来るのかさっぱりわからない。

 巨大な人差し指が向ける方向に視線をやれば、遠目に人型の何かが数人こちらを向いて、何か叫んだりしてるんだろうが聞こえやしない。

 遠くて表情は見えないが、震えあがったり座り込んでいるのは見て取れた。


 「あの辺のと作れというのか?俺が?」

 「うん。あの辺とならいけるんじゃない?大体構造は似てるし♪」


 俺のケツの下に聞いてみたが返事が適当過ぎる。

 ケラケラと笑うように楽しそうな声だ。正直むかつくが、言葉のやり取りがなんとか俺の心を保ってくれていた。

 一人だったら自〇してるかもしれん。

 出来るだけ苦しくない方法で!






 時間はほんの少し遡る。

 綺麗なドラゴンだった。目の前で丸まって目を閉じている格好は、犬や猫を彷彿とさせるがスケールが違いすぎる。

 白銀の鱗が薄っすらと光り輝いているように、幻想的な世界に浮き上がって見えた。

 時々見る夢に出てくるドラゴンそっくりで、俺にとっては見慣れたようなデジャヴ感。あくまでも夢の話だが。

 現実世界で目の前に居るわけない。その存在感がどれだけ凄まじくとも!


「さっきから脳内で喋ってないで口に出してよ。もぅ」


 ドラゴンの口から出てくるにしては威厳も何もなく、甘く心地良い響きがする若い女性の声だ。つまり雌か?

 声の印象とは真逆な印象を受けてしまう巨大な紅玉。猛禽類の瞳は黒く輝き、瞳孔は縦長に収縮しながら不満そうに俺を睨みつけてくる。

 やめてください死んでしまいます。


「出来れば夢であってほしかった!」

「残念っ!現実でーす♪」


 ドチクショウがぁああああああ!

 とりあえず叫ばずに脳内で罵倒するのは社会人として当然の常識なのです。

 敵は作らない。これが処世術の第一歩。ホントだよ?


「俺死んだ?」


 何となく首を傾げてドラゴンの目を見て聞いてみる。


「半分くらいかな?ほっといたら死んでたと思うし。過労で孤独死するぐらいなら連れてきちゃっていいかなーって……」

「あっ……そぅ……かなぁ?」


 軽い感じで言われてもな、難しいところだ。最近全く眠れなくて2時間毎に目が覚めるという謎のルーティンに悩まされ、仕事は半分肉体労働。半分管理業務という悪夢の現場管理職になり早十数年。

 疲れが取れた気が全くしない休日を寝て過ごし、気が付けば仕事が始まり仕事着に着替える。ロッカーではさっき着替えたばかりでは?なんて錯覚も頻繁に起きていた。


「一応ほら……10代くらいには若返った……ちょっと若すぎるけどイイヨネ?」


 ナニイッテンダコイツ……ん?手が若々しいな……皺どこ行った?

 自分自身を確認するなんて何時ぶりだろうか覚えていないが、随分と縮んだような錯覚がしないでもない。

 ついでになにも着ていない感覚はあったが、改めて確認すると素っ裸だ。

 多少羞恥心はあるつもりだが、隠せるモンが無いなら隠す必要もない。

 嘘つきました。恥ずかしいです。なんか隠せるものを下さい!


「せめて葉っぱだけでも!」


 俺の魂の叫びだ。神に届けっ!

 葉っぱの代わりに急に暗くなったと思ったら巨大な手が俺にゆっくりと近づいてくるのが見えた。

 神は居なかった。だって聞き届けてくれなかったから!

 掌の迫力あり過ぎて身動きとか取れなかった……ナニコレ超怖い!

 このまま握りつぶされるのを想像してしまうが直前で止まる。

 と、同時にやってくる風圧に慄いているうちに優しく摘まみ上げられ、素っ裸で慌てふためく俺を楽しそうに眺めた後、ひょいっと文字通りに俺はドラゴンの頭に載せられた。


 ヒェッ!


 息を呑む。『玉ヒュン』って言葉は実に的を得ているなと感心しつつ、立ち上がったドラゴンの頭の上でへたり込む。

 堕ちたら死ぬ!十分高い!


「堕ちたら死ぬよぉ~♪」


 わかっとるわっ!

 必死で掴めそうなとこを掴むのは人間として当たり前の生存本能だろう。掴むとこがいっぱいあるごつい鱗とカッコいい角に感謝なんてしてやらないからな!


「どう?この広大な自然っ!凄いと思わない?」


 太陽が水平線と地平線から光照らし輝き始める絶景を眺めながら素直に思う。

 ……全く思いません。そんな事より下ろしてください。

 とりあえず無言で鱗をぺしぺし叩く俺だった。


「感動してくれて嬉しいよ!」


 もういいから!してないからハヨ下ろせや!

 なんてことは口にせず冒頭へ戻る。






 この高さにも慣れる……はずもなく、なんとかバランスがいい位置で座り込んでるだけだが、ドラゴンの脳天で空を仰ぎ見れる経験はなかなか積めないものだなと思う。

 思い返してみれば過度なストレスで精神系の障害でも発症してたんじゃないかと自覚はあるものの、病院へ行くという発想が無かった。

 そもそも休めば翌日は丸々仕事が残っているような環境だ。誰も肩代わりしてくれないし現場責任者は誰ですか?俺ですよ?

 有給?ありますよ?使った後のこと考えたら使えない!

 ブルーカラーの正社員はピンからキリまであるが!

 ストレスは解消……出来てなかったんだろうな……そういや最近の趣味ってネットで動画眺めてたくらいだもんなぁ……

 色んな事が頭の中を巡りはするが、過労死か……いや、まだ死んでなかったそうだけど。


「まぁいっか……」


 飛んでいく翼竜をぽけーっと眺め、遠くに見える海が輝きを増していく様は本当に綺麗だった。

 現実逃避というか現実世界からログアウトしてしまった。

 気が狂いそうで狂わないのはアホなやり取りがあったからだろう。

 相手が威厳の塊のような重低音のおっさん声だったら、間違いなく発狂している自信がある。


「勝手に連れて来たけどさ……怒ってない?」


 ん?何処かしらに罪悪感でもあるのだろうか?声色は少しバツが悪そうだった。


「んー……いや、怒るよりもありがとう……かな?割と落ち着いてるよ」


 朝日を眺めながら鱗を撫でる。

 そうかぁ……50歳までは生きられなかったか……

 苦笑してしまう。寿命はもうちょい先だと思ってたんだがなぁ……

 生活習慣も悪かったんだろう。今思えば毎日同じもの食って、栄養サプリメント飲んで暮らしてたからな。


「向こうには手を出せないんだけど、引きずり込むだけなら出来るんだよね」

「怖いこと言うなよ」


 ケラケラ笑う彼女(?)に突っ込めるくらいには精神は回復しているようだ。

 大自然のど真ん中にほっぽり出されて、目の前に巨大なドラゴンが鎮座していたら、普通の人はどういう行動に出るんだろうな?

 発狂するか錯乱するか精神崩壊か泣き叫ぶだろうか?

 なんて余裕がある思考は置いといて、彼女の安心したようなセリフにふと疑問が湧きあがる。


「引きずり込んだってのは俺だけじゃない?」


 何人か引きずり込んだことがあるような気がしたので普通に聞いてみる。


「うん……助けたつもり……だったんだけどなぁ……ネっ?」

「ネってなんだ。ネって」

「キミ頭回るタイプだから察しはもう付いたんでしょ?」

「まぁ……発狂して逃亡か、錯乱して崖から飛び降りるとかそんな感じじゃね?」

「否定できないネェ……事実だし……」


 気まずい時間が少しあったが割愛。






「服って何?毛皮とかならいっぱいその辺にあるけど」

「お前結構雑だな!」


 このドラゴン姉さんは、異界から生物は引きずり込めるが、無機物は持ってこれない中途半端な能力の持ち主らしい。

 確定ではないがたぶんそうだろう。俺の本能が言っている。余計なこと言って機嫌悪くさせない方がいいと!


「毛皮って言ってもなぁ……」


 中途半端な大きさに長さ。当然鞣されているわけもなく、バリバリに乾いてミイラ化しているものがほとんどだ。

 小さい洞穴の中に、雑に散らばっている毛皮もどきの破片と、板切れとかのゴミ達を眺めながら化学繊維を懐かしんでいる俺だった。


「一応この近辺の最先端だよ?」


 これが世界の最先端!文明の落差が凄まじい!難易度高すぎて泣けてくる。

 ドラゴン姉さんのお言葉に深く溜息を吐きつつ、腰に巻けそうなヤツを繋げて、なんとか一物だけは隠すことにした。

 靴に出来そうなものは……あるわけない。

 が、なんとかサンダルっぽい物を作ろうとする俺だった。

 紐替わりになんかの植物の蔓を引きちぎって、板切れでサンダルみたいなもんなら作れそうだ。

 そんな簡易的なもので、現代人のひ弱な足の裏が守られる。か、どうかは不明だが無いものはない。

 俺がなんとかしようと、努力してる姿を割と楽しそうに見ているドラゴン姉さん。

 視線が痛いのでなんか喋っとこう。


「あ、普通に喋ってるけど意思の疎通に齟齬はない?」


 現状把握はしときたい。


「言葉自体は脳内で都合よく変換されてると思ってネ。実際の音の話ならわけわかんないと思う」

「なるほど……ドラゴン姉さんの言葉は俺の知ってる知識。で、どこかの誰かの口調に変換されてるだけか……」

「なにドラゴン姉さんって!名前つけてよ!」


 無かったんかい!


「いや、ほら……普通あるだろ?なんかこう……あの辺に居たナニカに付けられて崇められてそうじゃない」


 なんとなく、さっき見た二足歩行の人型が居た方向を指さしてみる。


「やーだー!」


 大気が震える雄たけびのようだが、俺にはギャル(笑)っぽく聞こえるので普通に引いた。


「わかったよ。可愛いのがいいかカッコイイのがいいか言うてみ?」


 ゴミの物色を進めながら適当な返事を待つ。と、恥ずかしそうにモジモジ身体を揺らしているドラゴン姉さん。

 可愛いのがいいのね。みなまで言うな。

 一言も喋ってないが空気は読めるさ。さて……


「銀色というよりプラチナ系ドラゴンだからプラチーナって言ったら怒りそうだな」

「だったら言うな!」


 吠えられた。コワイ。


「まぁ候補はいくつかあるからちょっと待て」


 ジト目で見てくるな。死んぢゃうから!

 樹海というよりジャングルだな。とか思いながら周りの景色に目をやれば、花がポツポツ咲いてる感じが季節的には春っぽい。

 裸に腰巻で過ごせる分、夏になったら暑すぎて死ぬかもしれん。

 死亡率高そうな世界だ。虫に刺されても死ぬかもしれん。いやマジで。


「プラチーナは冗談だけど春っぽいしな。プから連想してプリマヴェーラだ。略してプリマってどう?別の国の言葉で春って意味だ」


 イタリア語らしいが本音のところは違う。

 俺が使うゲームヒロインの名前は全て春夏秋冬のプリマヴェーラ、エステータ、アウトゥーノ、インヴェルノの使いまわしだ!

 初めから決まってる系のゲームは大体デフォルトのまんまで行くタイプだが、名前が無い系は大体これを使っていた。

 そういやここ数年ゲームしてなかったな……なんて悲しい事実も発覚する。


「……ぷりま……んー……」


 俺と同じように空を仰ぎ見て、考えているように見えなくはないが……

 まぁ他にも英語ドイツ語フランス語!断片的な単語だけなら覚えてるぜ!

 全く自慢にはならないが。


「じゃあ私はプリマで!君は?」

「あー、俺は……今も俺は俺のままな感じなんだけど……なんか違う気がする……」


 何となくこの世界で自分の名前を口にしたくなかった。

 ドラゴン姉さん改め、プリマのバカでかい紅玉の瞳に映る姿が俺じゃない誰かだ。

 若すぎんだろ……金髪に近いが白っぽい髪の毛が俺の目にも映っている。


「ここまで変わってると、生まれ変わったと思って再スタートしたいって気持ちの方が大きいかな」


 俺としてはとても前向きな思いだった。


「ごめんね……原型はなるべく残したかったんだけど……結構壊れちゃってて……テヘ♪」


 可愛く言ったつもりかこの野郎!


「そうか……俺壊れてたか……物理的に!」

「うん。こっちに引きずり込むと真っ黒焦げになるんだよね」

「炭化一歩手前かい!」

「あ、そんな感じ♪」

「上手にコゲました!……まぁいいけど」


 痛かった記憶が無いので個人的にはセーフとする。

 記憶が残ってるだけでもかなりの儲けものだと思う。


「聞いた感じ治せるけど、普通には治せない感じかな?」

「たぶんね。制限的なものがかかるんだと思う。難しく言うと生体データの持ち込み禁止?」

「急にサイエンス始めるな……いや、これはアレか。俺の知識レベルで勝手に脳内変換されている造語的な奴か」


 生体データとか言われたら地球人のDNAの構造とか生命設計図とかそういう感じかなと勝手に解釈した。


「どう話しても理解できないと思うし、私もどうしてそーなるかわかんないのよね」

「ああ、気にすんな。痛くないってのが大事だからそれ以外は気にしてない」


 若返ってる気がするし!


「えっへへぇ♪嬉しいな!楽しくしゃべるの初めて!」

「そうなのか?何人かは喋れたと思うけどな?」


 何人引きずり込んだかは知らないが、全員が全員発狂したわけではあるまい。


「んー……えっとぅ……会話?対話?には……ならなかったネ」


 遠い目をして呟くように過去を思い返しているようだった。

 すまん。辛い記憶を掘り起こさせてしまったようだ。

 そりゃビビるよな。うん。俺がちょっとおかしいだけだな。

 言っててちょっと悲しくなるけど気にしない!


「まぁ気にすんな。しばらくは俺が話し相手になるよ。暇だしな!」


 素晴らしい!暇だしな!なんて言える日が再びやってくるなんて!

 なんて思ってたのはこの辺ぐらいまでだろう。

 現実はとても残酷なのだと、思い知らされるのはもう少し先だ。


「話し相手!いい言葉だね!で、君の名前はどーするの?元の名前で呼ぶ?」

「そういえばそんな話だったな。じゃあ……」


 と、なんか目についたものを参考に名のっとこうかと辺りを見渡した。

 見た感じ、地球で言うところの原始的な世界だ。恐竜みたいなのはまだ翼竜しか見てないが……あ、ドラゴン姉さん居たわ。

 小中学生時代に習った、歴史の記憶すら怪しいレベルの俺だが、原始時代辺りか?人型の何かは原始人かそれに近い感じの何かだと思う。

 近くで見てないから何とも言えないが、正直見たくもないが!

 毛皮の腰巻が物語っている気がする……石器時代ですらないんじゃなかろーかと……


「せっかくプリマって名前にしたんだから、似たような感じで行きたいところだなぁ……」

「じゃあヴェーラ?」

「それだと女の子っぽいから……ヴェラ、ヴェリ、ヴェル、ヴェレ、ヴェロ……ラリルレロで並べてみたが響きはルかレが野郎っぽい」

「語感は全部似てるね。意味はあるの?」

「全くない。強いて言えばヴェルがベルに似てるくらいか。鐘って意味だが……俺の脳内イメージでも音で言えばイロイロ種類があるヤツだ」

「ごーん♪キーンコーンカーン♪こんな音するんだ!」


 それそれ。俺の思考を音まで読み取れるようだ。素直に感心する。

 ん-、ベルの後になんか付けようと思ったが、ベルトやらベルベッドやら思い浮かぶ。が、ふとハエの王様の名前が浮かんだ。

 そうだな、糞の王とかって日本では思われがちで、海外では蔑むために侮辱の意味を後付けされた有名悪魔の1柱。

 糞みたいな人生からの生まれ直しだ。敬意を込めてありがたく拝借させてもらおう。

 俺は日本人で無宗教だからな。神様も悪魔様もほぼ同列の印象だ。あと女〇転生とかのゲームは大好きだったのも懐かしい。

 プリマには内緒にできるかどうかはわからんが、いい意味も悪い意味も含めとこう。


「ベルゼ。って呼んで。ちょっと厨二病入ってるけど」

「……いいんじゃない?私の名前の由来も絡んでるし、君も納得してる名前じゃないと意味がないからネ♪」


 なんか含みのある言い方だった。

 そして、俺の思ったことも理解してくれた上で暈してくれていた。

 プリマの知能はかなり高い。俺より絶対賢いなぁ……ギャルっぽいのは俺の脳内変換装置がバグってるからだろう。




 本当なら慌てふためいて焦るところだが、俺自身はかなり楽観視していた。

 ドラゴン姉さん改め、プリマさんが木の実っぽいものやら果物っぽいものやら、食料的な物が置いてある方を指さしている。


「お供え物的な感じがするな……」


 湧き水の小さい滝の前。祭壇のような石のテーブルにでかい葉っぱが敷かれた上にいろいろ置かれていた。

 小さい泉のようになっている。あれが飲めるなら水分と食料問題は解決しそうだなぁ……虫が湧いてなけりゃいいが。


「あれさー、毎日持ってくるんだよね。いらないのに」

「食べないのか?不味そうには見えないけどな」

「あーきーたー!食べなくても私は存在できるし!」

「食べ飽きたのか……流石だな」


 ドラゴン的な上に超常の存在だ。きっと勝手に体が維持されるんだろう。解明しようとも思わんが。

 好きに食べていいというので、リンゴっぽい物やらバナナっぽいヤツを警戒して食べる。


「不味くはないが……美味くもない?」


 素直な感想だ。甘さ控えめすぎる感じがする。


「そうなの?ベルゼの生きてた世界って、私見えてたわけじゃないからいまいちよくわからないんだよね」

「ふーん……ラジオ的な感じかな?意識同士がつながる感じ?」

「そう!そんな感じ!ラジオがわからないけど♪」


 当たってたみたいだ。

 夢に出て来ていたドラゴンによく似てるプリマは、あくまでも似ているだけで実際はかなり美しい系ドラゴンだ。

 デフォルメされたアニメ系とは違い、リアル系なので恐竜寄りだ。いや、これリアルだったわ。

 後めっちゃでかい!首からしっぽまで50メートルくらいありそうで、折りたたんでいる羽?翼?アレ広げたらとんでもないデカさになるだろう。


「あ、私飛べないから。めんどいし」


 俺の幻想をぶっ壊さないでくれ。

 そしてメンドクサイってことは飛べるんじゃねーか。突っ込まないが。


「それはそうと喋ってないぞ?そろそろ思考を読むのやめてくれ……それずるいぞ」

「減らないんだからいいじゃない♪楽しいし♪」


 本当に楽しそうなので無下にも出来ない。

 一応命の恩人でもあるわけだし。神様じゃないかもしれないが神様系の力は実際持ってるわけだしな。


「栄養があるのかどうかはわからんけどご馳走様。腹は膨れたよ」

「他に食べられそうなものあったら言ってね。近場にあるものなら取ってこさせるから♪」


 お前は行かないんだな……


「取ってこさせるって……さっきの人っぽい人らにか?」


 人っぽい人らというパワーワードに俺自身が戸惑うが、表現の仕方が難しい。

 いや、見たらだれでもそう思うって!


「うん。人型っぽいナニカ……」


 プリマさんや……貴女もそう思うんですね……

 無言の『……』が多い会話にどうしてもなってしまう。

 身体能力は高そうだったけどな。遠目にしか見てないが尻尾もあったし。

 ただし猿人系ではなかった気がする。


「とりあえず問題は先送りにしよう。意思の疎通はプリマを通せばなんとかなる?」

「難しくなければ!たぶん♪」


 なるほど。単純な仕事なら振れそうか。ふむ……

 どう考えても快適な生活はしばらくお預けだろうが、なんとか改善できそうな気がしなくもない。

 山も川も海もある。湧き水の小さい泉もあるし、洞穴もある。

 考えようによってはかなりイージーモードでは?なんて思ってしまう。

 何故この時点で俺は冷静に原始的生活を考えていたのかは不明だが、人生行き当たりばったりで生きて来たからだろう。

 あと、適当過ぎる生活も幸いしているかもしれない。災いしているかもしれないが。


「怪我とか病気とかはプリマが治してくれたり?」

「治せるけどベルゼは怪我とかしないと思うよ?大分力分けてあげたから」

「は?」

「私の力の半分ぐらい渡したかったんだけど、爆発しそうだったから五分の一くらいで止めたの」

「五分の一か……力ってナニ?」


 あれか?超常的な力か?


「再生能力は高いけど、死ぬときは死ぬから気を付けてね?再構築は出来るけど、霧散した魂は回収しにくいから」

「はい。ストップ。何となく理解した」


 最後まで聞きたくない!


「あれだよ?チュートリアルとか説明書って大事なんだよ?」


 そんなもんナナメ読みで十分だ!

 会社の作業手順書を省く!あれは大事!ホントだぞ?


「いや、その……わかっているつもりだが……その仮説だと俺の魂が100%じゃないと認めるようなもんだろ?」


 80%くらいかもしれん。20%の俺は死んでるという事じゃないか?

 肉体的にはほぼ炭化してたから!せめて魂だけでも!


「ああ、なるほど!大丈夫っ!今100%!」

「超安心!プリマさん大好き!俺生きていける!」

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