酔いどれ天使じゃない方の酔っ払い
「この野郎、金は腐るほどあるからウイスキーをくれや!! ビールでもいいし、ウイスキーでもいい。とにかく、ウイスキーでもいいし、ウイスキーでもいい」と酔っ払いが泣きながら居酒屋『酔いどれの溜り場』の大将に向かって叫んだ。
「川上さん、酔いすぎだってば」と大将の荒木雄二は川上に注意した。
「この野郎、家の女房はおっぱいとケツがめちゃくちゃデカイんだぞ!! めちゃめちゃ怒ると怖いんだぞ!! お前ら、それでもいいのかよ!!」と川上は言って周りを見た。
「川上さん、酔いすぎだよ、まったく、もう」大将の荒木雄二は困り果てていた。居酒屋は混雑していた。あちらこちらから注文の声が飛ぶ。
「大将、頼む。ウイスキーをくれや。なっ、俺だって辛いんだよ」川上は空のコップを大将に差し出した。
「やめときなさいよ。飲みすぎだって。はい、おまち」大将の荒木雄二はおでんのちくわを3本皿に乗せると他のお客さんに出した。
「俺はな、俺はな、酔い潰れて泣き崩れてスッカラピンになって二度と何処にも行かないと誓いたいだけなんだよ!! だからウイスキーをくれや! もう何処にも行かないよ! 俺は何処にも行きたくない!」
「川上さん、水を飲みなさいな」と大将の荒木雄二は優しく言った。
「何処にも行かないよ!」
「川上さん、分かったから」
「大将、聞いてくれや。何処に行ってもさ、皆、澄ました顔して歩いているだもん。皆、他人みたいな顔してよう。他人のクセによう。他人は生意気だよな。俺さ、出張する度にさ、ビジネスホテルに泊まるんだぞ。たまにはさ、立派な五つ星のホテルに泊まりたいのにさ。なんで毎回1泊3000円のビジネスホテルばかりなんだよ! 社長、給料上げろや! 俺はな、ビジネスホテルが好きなんだよーっ!! あはははは!!」
「川上さん、わかったから。とりあえず、水を飲んでよ」
「家の女房はな、めちゃくちゃオッパイもケツも態度もデカイ。どうだい? ビビったか? 家の女房は全てがデカイんだ。凄いだろう?」
「わかったから。水を飲んでよ」
「家の女房はな、あげまんなんだぞぉ。そう言えばさ、家の女房の乳首もデカイんだぞ。大将、ラメタップはどうしたのよ?」
「サランラップ? サランラップはここにあるよ」と大将の荒木雄二はまな板の横にあるサランラップを見た。
「ワトソン君、僕はねライヘンバッハの滝壺には落ちなかったんだよ。ワトソン君、僕はねライヘンバッハの滝壺には落ちなかったのさ。あはははは!」
「川上さん、頼むから水を飲んで」
「大将、何でさ、女にはオッパイがあって男には立派なオッパイがないんだよう! 俺もオッパイが欲しいよ〜う! サンタクロースさん、お願い致します! 今年はハドソン・ジョイスティックをくださいっ!!」
「川上さん、水、ほら水だよ」と大将の荒木雄二は言ってコップいっぱいの水を川上に差し出した。
「大将、本当はさ、水に見せ掛けた日本酒なんだろう? やるやん」と川上は言って水を飲んだ。
「美味い!! やっぱりヒューマンは水みたいな日本酒だよな!!」と川上は言ってはんぺんを食べた。
「はんぺんが美味い。大将の水みたいな日本酒とはんぺんが1番美味い!!」
「川上さん、嬉しいね。単なる水とはんぺんを褒めてくれてありがとうございます」
「大将、左利きの女には気を付けてよ」
「なんで?」
「左利きの女は右利きじゃないから」
「そりゃそうですよ」
「大将、左利きの女には優しくしないとさ。右利きの女にも優しくしないとね、後でどっちからパンチが来るか分からない」
「へぇ〜。川上さん、もう帰宅した方が良いよ」
「大将、俺はシンデレラ・タイムには帰宅します」
「もう午前2時だよ」
「シンデレラは可愛そうだよな。ツンデレラした姉にイビられてよ」
「そうだね」
「ノラ・ミャオは何処に消えたのよ?」
「えっ?!」
「大将、俺ね、アカペラでね、雪をテーマにした曲を歌いたい」
「どうぞどうぞ」
「♪ドント・レット・ミー・ダウン〜♪」
「川上さん、それはビートルズじゃないの。その曲には雪は出ないよ」
「♪ドント・レット・ミー・ダウン〜♪」
「川上さん、もう帰ってよ」
「大将、無修正のアソコを見たいかい?」
「無修正???」
「ほら」と川上は言って頭を大将に向けた。
「あーっ、10円ハゲだ。しかもデカイ」
「なっ。俺ってハゲチャビンだろう?」と川上は言って泣き崩れた。
「ティモテのシャンプーが恋しいよう。うわーん! うわーん!」と川上は言って再び泣き崩れた。
「もう帰ってよ」と大将の荒木雄二は言って泣きたくなった。
ありがとうございます。