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EP7 2054年1月14日 レイジー博士杯(ハイ)争奪<眼福付正妻の座バトル>☆


挿絵(By みてみん)  EP7gif


______私がジョーやバニラ、新参の守護者、桔梗の戦闘を見てみたいのには理由がある。

それはまだバニラ・アイスが誕生していない頃、私の趣味の一つに異世界転移物の古いラノベがあった。

2054年になっても、ラノベ投稿の勢いはそのままで、依然、創作意欲を掻き立てる魅力ある趣味なのである。


「私達が置かれているこの状況は、ラノベの世界に良く似ていると思う。王城や馬に乗った騎士達が大勢居たし、中世のような王国を形成した貴族社会だとしたら、やはり冒険者もいるかもしれない」


 事実、私は騎士以外の住人が、防具に身を固めてバスターソードや、弓、斧、槍を持っているのを見ているのだ。

『もしこの世界に魔法が存在しているなら、治癒や補佐役の神官職も存在しているかもしれないが、それは現状まだ未確認であって、科学者の私としても早急に確認したい事柄だ』


『彼等は傭兵稼業か害獣退治で生活しているのだろうか。それなら冒険者組合や宿屋も存在している事になる。我々二人と2体がこの異世界で生きていくには、冒険者として振る舞うのが自然だ。このバトルはその為のいい見極めになる筈』


______しかしレイジー博士の意思とは関係なく、一人と二体の思考は遥か右斜め上にあったのだ。


 バニラ・アイスはご主人様に永遠の愛を捧げる為、常に傍らに有り続けて毎日熱いチューを。

ジョーは30歳になる前に、ハメリア合衆国情報部を引退してレイジー博士と結ばれ、子作りに励みたいと。

新参の桔梗も、主を守る事を使命としながらも、良き伴侶となる意思を既に固めていた。


 その桔梗の決意は、バニラの言う<ハイパーインパクト刷り込み効果>とは無縁だった事が、後日判明することになる。


 いづれにしてもこの戦いは、女の愛と意地を賭けた、負けられないレイジー博士争奪戦なのである。

 そこで彼女達は、奇遇にも偶然にも思った。


「「「この戦いは、レイジー博士の<正妻の座>を賭けた戦いになる」」」

 と。


 彼女達の想いは、全ての法則を書き換えてしまう程マジだった。

例えば、頭上に核ミサイルが跳んで来たとしても、博士との愛を邪魔する無粋な核など、一瞬で破壊して無力化しまう事だろう。

 それ程なのだ。

レイジー博士を想う一念、愛の力とは物理法則さへ曲げる力を秘めていた。


 物理法則を曲げてしまう程の愛の力......これは非常に重大な現象である事に、天才のレイジー博士であろうと誰もが気づいてはいないのだ。



______さて、そんな物騒な事になっているとも露知らず、私は言葉を発した。

「勝者には私から、ちょっとしたご褒美をあげるから。では始め!」

 と言ってしまった。


 はッ(ご褒美とは.....まさか主様のチュウ!) 

 ゴクリ (ご褒美.....それはボクだけへの愛の証チュウ)

 任せてぇ~(ご褒美は.....ご主人様からの180秒チュウ!頑張らなくちゃ)


 私には何故か全員が、拳を握り占めていたのが不思議に思えた。

『ご褒美と言っても、丁度、手元にあるハイ・ブチューしかないのに、お菓子のガムでも褒美は褒美だよね』


 ご褒美はチューだと勝手に妄想した2体と一人の瞳に、メラメラと炎が宿った。

 しかしジョーは、生足を露出した生身で防御が薄く、桔梗の持つ日本刀で斬られたら、医療設備のない艦内では治療は出来ないのが心配になる。


『ここにヒーラーが居ないのは拙い。しかし桔梗は私の言葉には従うだろう......危なくなったら私がストップすればいいか。バニラも桔梗も万一の場合は修復ができるし』


 私の開始の言葉で、ジョー、バニラ、桔梗は既に攻撃態勢に入っていた。ここで止めることはもう出来ない、バトルロイヤルの開始である。


 カ~ン


 開始早々、まず狙われたのは新参の桔梗である。

桔梗の亀頭流48手抜刀術とは、恐らく居合なのだろう。

深いスリットから美しい生足をズイと差し出し、深く腰を落として鍔に右手を添えて構えた。


挿絵(By みてみん) 桔梗 背景free素材


『赤いパンツを見せるのは、やはり正当派の居合の証拠! 無手の白いパンツのジョーには厳しいかも?......』


 対する桔梗の剣を迎え撃つジョーの構えは徒手空拳。

両腕を背後に向けると、指先から紫電のような蜃気楼のような物を発して気を凝縮しているようだった。


『南友千葉拳、凄まじい気がジョーの両手先から出ている。ほう、あんな技を持っていたんだな、エージェントのジョーって』


バニラ・アイスと言えば、桔梗にジョー(生ゴミ)を先に始末させるつもりか、静観の構えをとっていた。

『流石AI-myu96。勝利の方程式を計算しているぞ』


 そこで桔梗が口を開いた。

「私の相手は貴様か、かぶら足!」

 かぶら?! 二ャ、ニャンだとぉ~!


 ぷぷ

 今笑ったのはバニラ・アイスだ。


美脚自慢のジョーにとって、バニラにも言われたそれは禁句だった。余りの怒りに、ジョーの股間が震え出した。

 ブルブル

「ボクの、ボクの美脚をバ、馬鹿にするなぁ!」


「なんだ貴様、震えているのか便所か? ふっ、ならば冥途の土産に教えてやる。私の日本刀はDr.立木様がG県が誇る刀匠<孫八>が鍛えし名刀に、超高速振動を与えた可変バイブレーター<妖刀ムラムラ>。これで逝かない物は無いと知れ。お前の命運はここで終わったのだ。潔くここで逝くがいい」


『......なるほど、それで亀頭流48手なのか。この勝負、いいものが期待できそうだ』


 ブルブル


 尿意ではないジョー股間の怒りの振動が、後ろ手に構えた指先まで伝わった。黄色い工事現場のヘルメットを被って居なければ、恐らく怒髪天を突いていた事だろう。


 見れば怒りと振動によって更に紫電が強く、激しく黄色いオーラのような物が纏わりついていった。


「フン言う事はそれだけか! ならばボクの方から逝ちゃうよ!」

 来い!かぶら!

 シャァァ!!


 フぅぅぅぅ

「何? あれはアニメの南斗焼鳥拳なんとしょうちょうけんなのか!?」

 この後、私はジョーの繰り出した技に驚愕する事になった。


「南友千葉拳秘奥義<イクイク振動空波>!」

 あへシャウ あへシャウ


「なんだ?あの変な掛け声は!? 南斗レイとは違うぞ?」

「亀頭流48手抜刀術<壱の型>!」


 ジョーの<イクイク振動空波>が届くかと思ったその時、桔梗も可変バイブレーター<妖刀ムラムラ>を高速で抜き放つと、振動と振動が共鳴して更に大きな振動となり、桔梗の刀を弾き返した。

 キィィン

 パァァン

同時にジョーの<イクイク振動空波>も、相殺されたのか掻き消えてしまったのだ。


「ふっ、この身と相打ちとは中々やるな。だがこれは我が亀頭流48手の内の最初の抜刀術に過ぎない。さて貴様に次の手はあるのかな?」


 確かにジョーが最初に繰り出したのは秘奥義で、残るのは体術で戦うしかなかった。

『こちらは生身、拳と蹴りだけではあのアンドロイドを倒すのは無理だろうね......ならここでボクの最終奥義を出すしかない』


如何にジョーが強いとしても、人間がアダマンタイト合金製骨格を持つ桔梗に叶う道理がなかった。しかしジョーは桔梗に勝てないにしても、捨て身の最終奥義を繰り出す事にしたのだ。

 ズゴゴゴ


 ジョーの体にまたオーラが纏ったが、今度は死を覚悟したような漆黒のオーラだ。

 ヒョォォォ

『ま、まさか!あの構えはアーカイブで見た南斗レイの<断己で相殺拳>!ジョーは死ぬ気か!』


「ふん無駄な事を。また<イクイク振動空波>か? 懲りない奴だ。ならば、この身も亀頭流48手抜刀術<弐の型>で応えてやろう。かぶら、今度こそ逝くぞ」

「さて、それはどうかな」


 見るとジョーは腰を落とし、スラリとした右足を前に、尻を高く上げたクラウチングスタートの姿勢を取った。

 ゴクリ......おぉ、これは眼福、眼福。

「しかし<断己で相殺拳>と違うのか? いったい何をする気なんだ?」


 はぁぁ!

「秘技南友千葉拳顔面股間ダイレクトアタァ~ック!」

 ナンバァァ~ワァァン!

 おあぁ~!


 ジョーが叫び跳躍したかと思うと、大股を開いて私の顔面に激突し挟みこんで来た。

 あん


 うぷうぷ ぐるちぃ~けど 何だか暖かくて幸せな気持ちぃ。

 何ぃぃ!


 ジョーの両太ももが、私の顔面を挟み込んでガッチリと離さず、勢いで私はジョーと床に倒れ込んだ。

 むぐぅ

 ジョーの股間は、相変わらず私の顔を塞いでいるので、息が出来ない程だ。


「かぶら! 貴様、我が主様になんと破廉恥な事を! くっ、主様もそのように幸せそうな顔をするとは! う、羨ましいではないか!」


「ふん、桔梗、ボクは勝負には負けたと認める事にしよう。でも本当の勝負は、博士との既成事実を勝ち取ることなのよさ!」


「こんなふうにだよ!」


 うぷぷ グるじぃ~ けど幸せぇ~

レイジー博士は、ジョーの技で<死兆星>ではなく<桃源郷>を見た。


 その真意とは、レイジー博士との過激な顔面スキンシップ攻撃で、正妻の座を勝ち取ろうとしているのだ。


「ジョロジョロ! いつまでご主人様の顔に張り付いているのさ!」

 ガゴォ~ン ォ~ン ォ~ン

「うっ、異世界で除夜の鐘が?」


その音は、鬼のような形相のバニラ・アイスが、どこからか取り出したお馴染みの金ダライで、ジョーをどつき飛ばした音なのである。

 黄色い工事現場のヘルメットが千切れ跳び、ジョーが宙を舞っていく。


 キュゥィ~ ぴよぴよ

ジョーがまたヒヨコを飛ばして、120度大股開きで気絶してしまった。もちろんお約束の白いパンティが丸見え~るである。


「うむ、やはり洗剤はアリ〇ールか。かほりと白さが眩しいジョーのW眼福だったが、ジョーと桔梗の戦闘力の一端は確認出来た」

 私はこの結果に、大いに満足して頷いていた。


「ご主人様!!バニラのも見て欲しいのれす!」 

 バニラ、お前のパンツをか? バニーガールは私の大好物なんだぞ。

 でも......でも。


「なら主様!! そんな糞ウサギより、私のチャイナドレスから除く赤パンチーは最高だと思います!東村山(むらむら)しませんか?」


「いやそもそもお前達はアンドロイドだし」

「「いいえ!心は人間より乙女なんです!!」」


 いくらアピールしようが、アンドロイド二体の想いは、一向に鈍感変態レイジー博士には伝わってはいないのだ。


______「しかし糞ウサギ、まさか金ダライとは奇抜で見事だった。褒めてやるぞ。この身はどうにもこのかぶらが、最初から気にいらなかったのだ」

「あやや奇遇だね。桔梗もそう思う? やっぱりAI-myuアンドロイド同志、気が合うんだね」


 結局、私はバニラ・アイスの技が何か見れなかったが、ジョーがアレではここが潮時と判断してストップを命じる事にした。


「お前達、もういいだろ」

「はッ御意です主様」

「ジョロジョロは、いづれ処理すればいいし、これで良しとしますか」


 私はジョーが気づいたら、これからどうこの異世界で生きていくのかを決めようと、皆で考えを纏める事にし、ご褒美のハイ・ブチューをバニラと桔梗に渡した。


「ほらご褒美だよ。最初から皆に上げるつもりだったけどね。お前達は食べれないのだから、ジョーに上げなよ。きっと喜んで仲良くなれるから」

 がぁ~ン

 ぐふぅゥ


「あぁ~ん、ご主人様、こ、これでは約束が、約束が違うのれす......私は(*´ε`*)チュッチュが」

 バニラ、私は約束を守っているけど? ほらこれご褒美のハイ・ブチュー。

「ひ、酷いです主様」

 ??

 

 顔に黒い縦線を刻んで、バニラと桔梗がガックリと肩を落として虚空を見上げていた。

(*´ε`*)チュッチュが......

接吻が......


次世代AIを搭載したアンドロイド二体が、チュウ チュウと言いながら魂が抜けていったような、レイジー博士も初めて見る光景だった。


「ふむ、これは! 実に興味深い現象だ。私とした事が、次世代AI-myuがネズミの縫いぐるみを欲しがったとは、私もまだまだと言う事か......もっと精進しなくては」


 あほだ......

 主様は たわけじゃった......


 罵倒されているとも知らないレイジー博士は、120度大股開きで気を失っているジョーの復活を、特殊効果付きコーヒー<ドウシタモンジャロ>を口にしながら待つことにした。

「さて、どうしたモノか。しかし実に旨い! そして実に白い!」


「......糞ウサギ、今なら金ダライをブチかましても、私に異存はない」

「そうだよねぇ桔梗、私も丁度ムカムカしてたんだよねぇ~」


 この後の事を、レイジー博士は覚えていなかったが、レティキュラム号が潜んでいる森では、不気味な鳴き声が王城に向かっていた。





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