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EP67 出陣!思考型ダンジョン★


挿絵(By みてみん)

思考型ダンジョン(引用<ゲームまてりあるずさん>Free)


______誰も私以上の説得力ある案がない以上、それが意味するのは攻略するかしないかの二択しかない。


「いつかはやらねばならんのなら、早い方がいいのじゃねぇか?」

「新しい村とナイトメア亭の為にも、攻略するなら今でしょ、あなた」

 ほう。


 最初に折れたアデリアの影響もあって、アデリアがそれでいいのならと、バイソンの大将とモーリンさんも続いたのだ。

緑の5人にしても、軍人でありながら自分達では役に立つどころか、足を引っ張って全滅させてしまう事が理解出来ていた。


「異世界異邦人の我々は、レイジーさんの常識を破壊する賭けに従おう。私達では余りにも無力だと思い知らされたからな」


 オルガ隊長がチラリとアデリアを見たのは先日、全滅すると言われた事に軍人として、心をへし折られていた事もあった。それが間違いのない真実だからだと、思わずアデリアの目を伺ってしまったのである。


『ふふ、それは賢明な判断だ 緑の者達』

アデリアの美しい碧眼がそう語っていた。


『緑も賛成か......』

「レイジー、俺はおめぇの奇策に賭けるぜ。動かなきゃ何も始まりゃしねぇし、何かありゃすぐダンジョンに飛び込んでやるぜ」

 ......。


 モーリンさんもそう言いたかったのだろう。しかし子供のルルが居る以上、『それは出来ないの』と、すまなさそうな顔をして、私から視線を逸らしていた。

『謝る必要はありませんよ、モーリンさん』

「反対の人は、もういませんね」



______こうして私の<ピクニック大作戦>は決行される事になり、デリーシャの秘密兵器(おかし)の準備もあるので、作戦決行は3日後の早朝に決めた。


 選ばれなかった悔しさからか、アデリアの顔はいつまでも険しい。

「レイジー、お前が何を考えているのか、あたしにはさっぱりだ。しかしバイソンが言った通り、何かあればあたしがすぐに飛び込んでやる。そして全員、必ず生還させてやるからな!」

「私もです。レイジー様」



 バイソンの大将、モーリンさん、アデリア、アエリアの瞳が、じっと私の目を捕らえて離さない。

私達が異世界に来てまだ半年程度。仲間も増えて段々と馴染んでいる事に、改めて嬉しさを感じてしまう。


「大丈夫です。御利益のある<聖母(にせ)マリア様>のブローチも付けて行きますから」


 傍らではルチアとデリーシャが、<やってやるわ>と目から火花が出る程、睨み合っているのが、モンスターより恐ろしい。

『お揃いのヘアピンが......以前から何だか気になるんだけど』


それはバニラ・アイスやRenoがスキャンしたmade in japan。特異な思考型ダンジョン、私達を追って来た緑の5人、巨大モンスターのゴジラと、私を取り巻く環境は謎で溢れていた。


 それにしても、ルチアとデリーシャ二人の戦闘意欲が高まったのだろう。私には撤退も考慮する程のダンジョンを前にして、萎縮しない度胸には驚きだ。


 ◇潜入決行日◇

______思考型ダンジョンに潜るのは私、ジョー、バニラ・アイス、Reno、kanna、ルチア、デリーシャの7人。


 私はナイフ一本さへ装備せず、目立つのはバニラ・アイスの金ダライと、デリーシャの籠だけだ。

件の<思考型ダンジョン>の前で、私は送り人となったアデリア達を見渡して、一言だけ言って挨拶に変えた。


「必ず戻ります!」

 と

=レイジーチャンネル通信=

=桔梗、もしもの時は頼む=

=お任せを御屋形様=

何かあれば、桔梗に一報を入れればいい。


『むっ、レイジーからまた妙な波動が出たな』

やはりアデリアは、レイジーチャンネル通信の電波を感じ取っていた。


 一方で、アエリアは既に涙目だ。まるで私は二度と帰らぬ特攻隊員かと思ってしまう程だ。

アデリアは怒っているし、バイソンの大将は腕組をして仁王立ち。一応、ハメリア合衆国部隊も、私達の見送りには同行していた。


 ザッ

 私を先頭にして、いよいよダンジョンに足を踏み入れた。


 ◇1階層 生か死の再攻略◇

____不思議な話だけれど、足を踏み入れるとLEDのような青白い照明が、行く先を照らしてくれる。

けれど私達はまだ3階層の最初で離脱したので、このダンジョンの最奥が何階層まであるのかを知らないのだ。


 私の頭の中で<無謀><犬死>の文字が浮かんでは消えていった。

 私が先頭を歩くのは指示を出す必要があるからで、ルチアとデリーシャが並んで二番目、いつも通りバニラ・アイスは少し離れている。


 今回、作戦の要がデリーシャなので、ジョー、Reno、Kannaは最後尾を歩いているけれど、最悪の状況になるまでは、戦闘態勢に入るなと言いくるめてある。


「父ちゃん、前方の天井から沸いて来た。普通の窒息型スライム6」

「手を出すなよ。作戦通り素通りする」

「下衆様、うまくいけばいいのですが」


 ソロリソロリと威嚇しないよう、スライムの下を歩く。

私は万一スライムが落ちて来たら、この作戦は失敗したと思う事にしている。

その時はジョーの南友千葉拳の真空波と、Renoのまだ見た事のない技が、スライムを迎撃してくれるのだ。


______やがて7人全員が通り抜ける。

 ふぅ~


「兄貴ぃ、ボクには分からないけど、作戦は成功したの?」

ジョーも初めて見るダンジョンに、緊張していたのだろう。


「まだ偶然かもしれない。ゴブリンはどうか、それで大体決まる」

1階層ではごく普通のスライムしか出なかった。



◇2階層◇

______ここではアデリアのMD(マグナム・ドライヴ)と桔梗の抜刀術が炸裂し、雑魚ゴブリンの群れを吹っ飛ばした場所だ。


「私、江戸川ナンコの推理は2階層で決まる。皆、失敗したらすぐに離脱するから、心の準備を」


流石に緊張が走ったのか、マジック・ロッドを持つルチアの手は震え、デリーシャは菓子の入った籠を死守せんと、両手で抱え込んでいた。


「いいか、緊張はしても敵意を見せないで。これが作戦の肝だから」

私の策とは武器を持たない、敵意を見せない事が作戦となっている。

 その要がデリーシャの......籠だ。


「父ちゃん、またまた来たよ。前と同じゴブリンが多数」

『上位のか? 糞、作戦は失敗したか』

しかし私達を見ても、棍棒を振り上げる素振りがない。

 ん? これはいけるか ?


 それならばと、私はデリーシャの籠を開けて、クッキー一個ゴブリンの先頭に向かって投げてやった。


 ガウ ガウ ガウ

嗅覚がいいのか、クッキー一つに先を争うように群がっていった。

 ゴブリンが食う事に貪欲なのは、ラノベで読んで知っていたけれど、まさかこれ程の効果があるとは思わなかった。

恐らくダンジョンに潜る冒険者は餌で、それと武器___鉄の武器を感知し、自動防衛反応で冒険者を食う___殺される前に襲って食う。これがダンジョンというモンスター達の狩場なのだろう。


 争っている横を、またソロリソロリと口に出しながら通り抜けた。鉄の匂いがしなかったからなのか、ゴブリンの群れはクッキーに夢中だった。


 私の推理は当たっていた。

=レイジー通信 桔梗、2階層を突破出来そうだ。これから3階層に向かう=

=了=

桔梗はすぐアデリア達に、状況を伝えた。


「......アデリア、2階層を通り抜けて3階層に進んでいる」

 何、そうか!

 アデリアとアエリアは撤退の知らせはいつ来るかと、ずっと表情と体が強張らせていた。

 むぅぅ

 はぁはぁ

 しかし、いよいよ撤退を余儀なくされた悪夢の3階層に向っていると訊き、この場に居る者には、また恐怖が蘇って来るのだ。


「オルガ隊長、あの娘はどこに通信機を? しかも電波の通り難い地下からですが」

「それは魔法的な通信に決まっているだろう。トーラス副長、ここは何でも有りの異世界なんだぞ」

 はは、そうでしたな。


『そうか! あたしが感じたのは、レイジー様と娘達の間で意思疎通をしていたからか。う、羨ましい』


 ◇3階層◇

______「次からはもう油断が出来ない。ポイズン・スライム、武装したゴブリンとゴブリン・グレートが襲って来る」

「下衆様、今度もあのような手が通用するのでしょうか?」


 ゴブリン・グレートと言えばBランク。

しかし取り巻きが多すぎて、今度は2階層の技が効くかどうかだ。

 案の定、3階層に入った事を感知したポイズン・スライムを先頭にして、武装したゴブリンとゴブリン・グレートの登場だ。

私は3階層にセンサーでもあって、単に自動で徘徊運動をしているだけかもしれないと推理した。


「数が多すぎる。デリーシャ、籠のサンドとクッキーを半分、乱れ投げしてくれ」


「え~ これ全部レイジー様の為に作ったんですよぉ~」

全く緊張していないデリーシャは、実はとても大物かもしれない。

「半分でいい、襲われたら逃げらない、頼むよ」


=レイジーチャンネル通信=

=ワレ、 ゴブリン・グレートと遭遇 作戦続行=


「ゴブリン・グレートと遭遇、回避行動に入ったと」

桔梗もそろそろ出番かと腰の妖刀を確認、ダンジョンの入り口に移動していく。


「バイソン、アエリア、突入準備だ!」

 決めてもいないのに、アデリアがレスキュー隊のリーダーになっていた。


 「おう、いよいよか!」

 「あぁレイジー様、今、アエリアがお助けに!」


 バイソン自慢の筋肉がみるみる赤銅色に変化、アエリアは見えない鋼線をシャイン ピシィィと鳴らしている。

それぞれがアーツを駆使して救出に向かうのだ。






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