EP62 偽聖母様の変身<かぶら>も変身?
<欲求不満は誰のせい?>
______「どうしてまたボクだけが!」
二度もハチにされ、堪り兼ねたかぶら姐さんが吼えた。
「私もよかぶら! 社長秘書のKannaが、社長の傍に居なくて留守番ばかり! それで何が秘書なんでしょうかぁ!」
私が謎ダンジョン攻略チーム案を発表すると、予想していたとは言え、たちまち反旗の狼煙が上がった。
『全くこいつらは』
「理不尽過ぎるの!! それはちょっと待って欲しいのよさ!」
「よさ!」
むっ
気分を良くしていたアデリアは苛立った。
「貴様ら二人揃って何を待てと? いや、レイジーの案は的を得ている。何と言っても、あたしがリーダーとは流石だレイジー。それに攻守のバランスがいいし、あたしのMDは、威力を絞ればダンジョンのモンスターと相性がいいからな」
と、レイジーに選ばれた美女と美少女達の鼻息は荒かった。
「ふふん当然よ。Bランクでヒーラーと風魔法のルチアちゃん、私も居るんだからねぇ~ えへん」
=あっ馬鹿チビちゃんだ=
=Bランク? この身の程知らずが=
=おまえ達までも??=
メンバーに選ばれていても、何かと出番の少ないバニラ・アイスとRenoも、ストレスが溜まっていたようだ。
「馬鹿な! それを言うなら、私の48手抜刀術の方が最適だろう」
アデリア組合長は私を支持、バイソンの大将とモーリンさんもルルを置いてダンジョンに潜る訳にもいかず、これは仕方なしと言う表情だ。
「すまんなレイジー」
「ごめんねぇ。威力を抑えても、ダンジョン内でAZDは危険なの」
バイソンの大将とモーリンさんは、Sランクなのに何も出来ない自分達が不甲斐ないと思ったのかもしれない。俯いた二人の表情は曇っていた。
「それは問題ないですよ。攻略チームがダンジョンに潜っている間の戦力、これは頼れる人に残って貰わないと......ね。分かるよね? かぶら姐さんと優秀なKannaちゃんなら」
「「むぐぐ」」
Sランク冒険者が二人、南友千葉拳のジョー、戦闘力ならReno並みにあるだろうKannaが残れば、ゴジラは無理でも相当な戦力になるからだ。
『Kannaは仮にも<保毛坂48ナンバー2>、何らかの武装はしている筈』
それに付録みたいな姐さん命の三馬鹿トリオ(ジャッカル、メンマ、チャーシュー)も、今はここで村づくりの作業をしている。D+ランクだけれど、いざとなればアレでも役に立つだろうと思うのだ。
「馬鹿と三馬鹿トリオは使いようと言うことさ」
<伏兵>
______留守番でも優秀な村を守る戦力、そう言われれば悪い気はしない。しかし話が纏まったかに見えて、また別の狼煙が上がったのだ。
それは。
「私もダンジョンに行くのですぅ! 絶対にぃ」
名前すら出なかったデリーシャは、既にオカンムリだったのだ。
「私だけ蚊帳の外って、酷くないですかぁレイジー様ぁ」
そのデリーシャは、怒ったついでに私に抱き付いて、胸をポンポコポンポコ叩くのだ。
酷い 酷い ムフ
「デリーシャ、おめぇは非戦闘員だろうが」
その言葉はアデリアだ。
「大人しくルルの面倒や土産を作っていろ。それとレイジーから離れるんだ! 今すぐに。さもないと......一度食らってみるか? あたしのスキル(タマキン・エスケイプ)を」
はひぃい~でもぉ~
アデリア組合長は、相手が美少女でも容赦がないのだ。
<ある一つの疑問>
『私には疑問があった。美少女があのアデリア組合長のスキルを食らったら、いったい何が起こるかだ。これは科学者として純粋な疑問であって、決して卑猥な事を考えてはいないのだ。しかし女性にはアレがないのだから、何も起こらナイ......お後がよろしいようで』
まぁ一度ダンジョンを経験させて、ちょっと強そうなモンスターと対峙させれば、もう行くとは言わなくなるだろうと、私はアデリアと示し合わせたが、ここでアデリアと息が合うとは思わなかった。
「分かった。マップも無しでは、どうせ一日で3階層までしか攻略できないだろうし、デリーシャはルチアにくっ付いていればいいさ」
オッホォ~ よっしゃぁ~
「私の生涯に、一片の悔いを残さない為にも!」
デリーシャが、どこかで訊いたようなセリフを吐き、拳を天井に突き上げガッツポーズ。モンスターが徘徊するダンジョンが、そんなに嬉しいものなのだろうか。
「あの、私は10階層までなら潜った事があるわ。それならデリーシャが付いて来ても大丈夫だと思うけど。でも結構強いモンスターが居てね、私には<意味の無い攻略>なので、それ以上の攻略は諦めたの」
アエリアの援護射撃もあってか、ダンジョン攻略は明後日に総勢8人で決行と決まったのだった。
『意味が無かっただと? それでダンジョンが何階層あるのか50か100か? 10階層までアエリアは、極砕鋼線でモンスターを狩った。万一にも、レイジー様に危害を加える事は無いと思うが』
アデリアは既に見抜いていた。Reno、桔梗、バニラ・アイスもアエリアの手の内は知っている。ダンジョンの中は逃げ場がない為、まだ信用の出来ないアエリアを警戒しているのだ。
「わ~い ダンジョンンン、お菓子買わなきゃ」
遠足気分の者もいた。
◇緑の5人アゲイン◇
______巨大モンスター<ガッジィーラ>の存在はまだ分からないが、湖の近くにこのまま、燃料の切れたシャトルに留まるのは危険だと5人の意見は既に一致していた。
「この場から離れる。各員、準備」
隊長の命令一つで、慌ただしく満充電を終えたローバー2台に、太陽光発電パネルや必要機材を積み込むと、5人は北の<魔の森>の脱出を開始した。
目的地はレイジー薬師と美女エルフのいるあの墓地だ。
<ガッジィーラ>がまた出現しても戦力は多い方がいい。それにあのナイトメア亭の飯と、独身三人組垂涎の金髪エルフ、アデリア組合長がいるのだ。
宿代は何かで稼ぐとして、その辺りは行き当たりバッタリでしかない。
翌日、ダンジョン攻略に明日向かうと言う日に、朝から緑の5人が大径タイヤを鳴らしてやって来た。
「ジョーは二階で待機」
「ハメリアだもんね、了解」
来た理由をタブレット翻訳機で通し、緑の5人が言っている事は大体理解出来た。
要するにここでモンスターから身を守る事と、ナイトメア亭で生活しながら、宿代を払う何か仕事はないかと言うこの2点だ。
彼等は、この異世界には魔法とモンスターが存在している事は知っている。それに情報部の軍人だと言う事は、彼らの会話で私は分かっていて、軍人として身に付けた知識と技術は、村の整備計画に役立つだろうと思うのだ。
彼らに敵意はない。ガタイも立派なので労働力としても利用出来るだろう。
=とうちゃんさへ良ければ、バニラちゃんは構わないよ=
=桔梗は、女ならダメ出しした所だ=
=下衆様、Renoもハメリアを仲間にしても問題はないと思う=
と言う事で、私の一存で彼等5人をKannaの部下として、都市計画担当のイーノと共に、村の整備に協力させる事にした。
「Kannaちゃん、頼むよ」
「社長は面倒事ばかり押し付けて! プンスコ」
一応、私の店員になるので、ナイトメア亭の宿代が私の負担となってしまうのが痛い。なのでそこはデブーラ男爵に後日相談しようと思っている。
kannaには異世界全般の話や、墓地の観光村化などを丸投げで説明させればいいのだ。
居合わせたアデリアは察しがいいのか、新築する冒険者組合で、緑の5人に冒険者ルーキーの指導が出来ないかを考えたようだ。その理由は。
「見た所ナイフの扱いや体術には、それなりの心得があるのだろう。5人には初心者の指導員になって貰えば、その分の手当は組合で出せるがな」
アデリア組合長は、なんと私の理解者になっていた。
「その案、是非に!」
私はアデリアの手を握ってお願いしていた。
はひぃ~
勿論、緑の5人に異論がある筈はない。
「ボス、アデリアさんの下でも働けるんですよ! 今、はひぃ~(yes)って言いましたし」
「ふッ、鼻の下が伸びてるぞポッター、ジョニー、ビーノ」
「何とか生活の目途が立ちそうですなぁ、オルガ隊長」
トーラス副長も、この提案に賛成なのだ。
台座の<聖母マリア様>は、3Dホログラムから陶器人形に急遽変更、ジョーのアテレコだけは秘密に継続と言う寸法だ。
神秘度が大幅にレベルダウンした<聖母マリア様>に、参拝客がどう反応するのか、それはそれで心配で、何か言い訳を考えなければならない。
もちろん薬の製造機械や、アテレコ管制室だけは絶対に見られないようにしなければならない。
肝心のジョーは、認識疎外魔法で指定した緑の5人だけにはエルフ顔に見えるようにした。
この辺は冒険者組合登録者の魔法に精通している者に、アデリアを通して頼んだのだけれど、特に怪しいとは思わなかったようだ。
「ん? 心配するなレイジー。冒険者の素性などいろいろある。貴様も訳ありで、あの美少女達を連れて東方から逃げて来たのだからな」
「そ、そうなんだ。話が早くて助かるよ、はは」
面倒なので私の名前は変えず、ジョーは<かぶら>で統一。
娘達がそう呼んでいるので諦めて貰って、三馬鹿トリオは姐さんと呼ぶし、ジョーと呼ぶ人間がまず居ないので、これは幸いしたのだ。
もう一つ、トレードマークの黄色いヘルメットは止めさせた。
「ボクなんか寂しいのよねぇ、もう慣れちゃたからさぁ」
え~そう?
「バニラちゃんも、この麦藁帽子は欠かせないもんねぇ」
そうだった。バニラ・アイスのうさ耳も拙いとは思ったけれど、どうにかなるだろうと先送りしていたのだった。
Kannaには、くれぐれもアンドロイドだと気づかれないようにと強く念を押したが、それはRenoも桔梗もバニラ・アイスも同じなのだ。
私は娘達が実はスーパーアンドロイドで、ジョーがハメリア合衆国情報部員だと明かす時が、遠からず来るだろうと思うのだった。
何故か、それが最善だと私の中の何かが告げているのだ。




