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EP37 POINT・クロスロード H&R (ハメリア&ルルシア)


◇デルモンド王国から遥か南西◇

 もし地図があったなら、殆ど海に囲まれた丁度ドラゴンの顎の先端に、ルルシア帝国に先立だち、ハメリア合衆国のシャトルは着陸していた。


 遅れてルルシア帝国が着陸した場所、ドラゴンの顎の付け根までは、およそ100kmしか離れていない位置であった。

どちらも海に面していたのは緊急脱出シャトルのAIが、陸地と海の境を生存に最適解と計算した結果からだ。


 ◇原住民の第三種接近遭遇◇

______船から出て来た見た事もない四輪荷車(ローバー)は、馬も居ないのに走って、船の周りには妙な光る板(太陽光電池パネル)が、何枚も立てられていた。

シャトルは、隠す事なく浜辺にそのままの状態で着陸しているのだけれど、そこはルルシア帝国とは違っていた。


 漁民達の見た未知なる者達は、最初は恐怖の目で見られたのだけれど、時間と共にそれは薄らいでいった。

 その理由は簡単で、ハメリア合衆国は国民性もあって、自由を尊重する国家であり、敵対しないと分かれば原住民との接触は、次第にフレンドリーになっていく。


 漁民が捕った魚介類と、ビスケットや菓子の物々交換は非常に有効で、その立役者は陽気なポッター隊員、彼のお陰だろう。

銃器もナイフも持つ事なく身振り手振りの会話は、彼らの得意とするところ。おどけた調子が原住民の心に安心感を与えていったのだ。


 半面ルルシア帝国は、階級や身分のみで人間を図る。外に出る時には銃器やナイフを所持して、出会った漁民を威圧し時には発砲していたのだ。

更に漁民の捕った海産物を奪い、家の中の家財を物色し略奪していく盗賊のような行為もした。

彼等はコミュニケーションをとる事もなく、浜の支配さえしようとしていたのである。


 方法は違えど両国の軍は、見知らぬ世界の情報を集めていた。

 ルルシア帝国が着陸した浜から、北へ向かうには山を越える必要がある。ローバーで山の入り口までは調査が出来たけれど、今現在はシャトルを置き去りには出来ない。暫くはシャトルの整備をする為、浜で暮らす選択をアレクサイ隊長は下したのだった。


 それはハメリア合衆国の軍も同じで、本来の火星軌道帰還用燃料の残はあるけれど、シャトルの点検整備を行い準備万端としてから、北へと飛ぶ事に全員一致で決めていた。

実行に移せばその場合、シャトルの燃料は使い果たし、彼等もまたレイジー博士と同じくデルモンド王国>の住人となる事だろう。


 ハメリア合衆国もルルシア帝国のローバーも、その性能から調査範囲には限界がある。車重2㌧もあるローバーでは、動力源が共に高性能なプログレス・リチウムバッテリーを搭載しても、片道50kmが帰還限界だ。これが幸いと言うべきなのか、お互いに発見される事なく調査が続けられていた。


 まさかハメリア合衆国とルルシア帝国が、同じように異世界に飛び込んで、すぐ近くにまで来ていようとは、私は思いもしなかったのだが、それは情報部のジョーも同じだ。


 ◇偽女神様捏造計画◇

______私達悲願のレイジー印・ドラッグストア開店までには、まだ一か月は時間があるけれど、それでも早いほうだろう。


 私達はナイトメア亭の二階で、各種の薬を作っていても、毎日は慣れた単純作業となって、ジョーは居眠りばかり。

私はその合間に、<偽女神様>をどう作るのかを模索しながら、その女神様は実態のない3Dホログラムのモデルを、誰にするのかで悩んでいたのだ。


______アンドロイドの娘達に訊いたのは愚かだった。三人が諸手を上げて立候補をして来たけれど、それは即断で却下してやった。


「だったら博士ぇ、そんなのCGで作ればいいじゃん」

 ジョーの言い分は、確かに的を得ている。

しかし神々しさ、思わず拝みたくなるような女神様とは、どんなイメージ像なのか、私には分からないからだ。


 私自身が余り信仰心がなくて、せいぜい正月に除夜の鐘を有難く訊いた位だったのだから。

『そうだ。聖母マリア様なら......』


 慈愛に満ちた表情は、あれこれ考えた事が馬鹿らしくなる程ピッタリだった。

『やはり本物は違うよね......でも顔には薄いベールをかけて、マリア様の尊厳を傷つけないように配慮してと。こっちは偽者だからバチが当たらないようにと』


 頭の中では偽女神様の全貌が、段々と形になっていくが、どうもまだインパクトが足りていない。

異世界であろうと地球であろうと、赤子と言うのは愛と未来、希望の象徴だろう。

「偽聖母様に赤子を抱いてもらうのは、誰が見ても心を和ませてくれる。決めた!」 


決断すれば後は作るだけ。私は設計製作が取り柄の天才である。構想の青写真は次第に形となっていった。


 場所は例の墓地の一番奥。そこに丸い台座を作るだけのシンプル設計。しかし異世界人にとって、見た事もない神々しさに驚愕する事は間違いないのである。


 ◇シュミレーション◇

______台座の前に信者候補(カモ)が来る。

すると何も無かった台座に、3Dホログラムの聖母様が現れる。聖女様よりも聖母様の方が効果があると、私は計画を変更したのだ。

まずこれだけで、異世界人は腰を抜かす事だろう。


 金銀、虹色の光を纏って聖母様が出現、その時は紫外線も照射してカモの殺菌消毒もしておくオマケ付きだ。これで身を清める為と、衣服を滅菌するのだ。


 そして娘達の誰かのアテレコで、優しく語り掛ける_____

_____それをシミュレーションしてみた。


=フン貴様は何を望むか=

桔梗は威圧があって、向いていない。

=いいじゃん、いいじゃんぷっぷくぷぅ=

バニラ・アイスもダメだろうな。威厳と慈愛の欠片もないしバカっぽい。

=愛とは、それは主様の為にこそ相応しい=

 Renoも無理だ。


 消去法でジョーしか残らず、私は偽聖母様の試運転をジョーに任せる事にした。

「ボ、ボクぅ? やったぁ」


そして拝む事をさりげなく促し、褒美としてくじを引かせる。ここが大事だ。ここをしくじると商売にならないのだ。


 そのくじとは全てがお告げで、ナイトメア亭の売店で有難い聖母様グッズを買っていただく。ついでにナイトメア亭の土産もと、二段構えの悪徳商売を計画しているのだ。

「これも生きる為。やむを得ない事だよReno」

 うエック エック

「何で泣くんだReno」

主様の余りにも下品な行為が情けなく。これが泣かずにいられましょうか。

「たわけかReno。世を生きるとは厳しいものなのだ」

「そうだそうだピーピー」


 バニラ・アイスは兎も角、Renoに誤解がないように説明すると、これは異世界人の免疫機能の実験と検証である事だ。

異世界の特に貧困層が、祈る事で病を治療出来るかにある。薬草や下位ポーションが買えない人達の、一つの救済方法なのであると。


 それと、この寂れたナイトメア亭付近が、観光地となって活気を促す為でもある。

そうなれば露店も沢山並ぶだろうし、わざわざ遠方から来るお客も呼び込めるって寸法なのだ。

 うエック エック

「主様は、非道な極悪人だったのですね」

 なんでそうなる!?

「あぁRenoの気持ち、ボクにも少し分かるのよさ」



______物事は最初は反対される事が多い。しかし結果が良好なら考え方も変わるのが人間なのである。要は良い結果を出せばいいだけの話なのだ。


 偽聖女様プロジェクトは二階を借りる以上、バイソン大将達には当然秘密にしなければならない。

 その方法としては、3Dプロジェクターなど一式をレティキュラム号で作成して、夜中に墓場の奥に設置してミッションは完了となる。


 アテレコは、二階の管制室からリモートでジョーが担当と、結構ハードなスケジュールだけれど、私は少年に戻ったかのように計画を楽しんでいた。

「ふふ、少年に戻って悪戯をしているみたいで、久々に愉快な気持ちになるんだ」

 ふぅ~ん

「でもさ兄貴ぃ、あんたって相当ワルよね」

世に、悪戯少年ほど大人になって活躍する偉人は多いのである。



______その頃、ハメリア合衆国とルルシア帝国のローバーによる半径50km探索がほぼ終わり、より遠距離を調査する段階に入っていた。

調査がより北を目指す理由は、彼らがデルモンド王国の存在を、住民から得ているからだ。


 しかもルルシア帝国は、そのまま真っすぐに北上すれば、レティキュラム号を沈める予定の<魔の森>に到達してしまう位置にあった。

 例えレイジー博士がRenoに泣かれようが、<偽聖母様>で一攫千金を企んでいる時、災難は接近していた。






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