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EP36 レイジー印・ドラッグストア新築。闇ギルドも動く


______紅いヘアピンの件は、私の命が狙われている事とは無関係だと思う。

 その疑問は一端保留、緊急の問題としてFランク冒険者<ドラッグ・ファイブスターズ>に、ヒーラーは是非欲しいところなのだ。


 それでもルチアとデリーシャの突然の申し出に、すぐに私は決断する訳にはいかない。

私の命が狙われているとしても、強いアンドロイドの娘が三体と、徒手空拳<南友千葉拳>の使い手が一人、嫌だと言っても私には付いているのだ。

 私の娘達に敵う相手など、Sランク以上しか居ないと思うのだ。


『検証として、Sランク冒険者アデリア組合長と一度、娘の誰かと模擬戦で手合わせをし、戦闘力のデータを取ってみたいものだ』


 私達は基本的に夜は活動しないし、夜間は安全なレティキュラム号の中、日中に狙われるとしたら冒険者組合までの行き帰りか、ナイトメア亭までの道中しかない。

一番いい方法はナイトメア亭の隣に、<レイジー印・ドラッグストア>を早く開店する事である。

これだと私が御隠居様みたいになるけれど、外に出る必要がないし最悪、モーリンさんが隣に居る。


 問題となるのは、デブーラ男爵家の土地の借用代や建築費用だ。一階が店舗で二階が薬の調合製造室と住居、店舗兼住宅の店を出すには、いくらかかるのか全く相場が分からない。



______ ところが運が私に味方したのかあの事件以来、オイスター・ケチャップ執事と、デブーラ男爵がナイトメア亭にやって来たのだ。

 デブーラ男爵様は、久々直々のお出ましとなる。


「これは男爵様、随分と久しいですな」

 あらあら

「その節は大変お世話になりまして、感謝しておりますわ男爵様」

「なに、礼には及ばん。堅い挨拶などは不要じゃ。儂なんぞデルモンド王国の末端の男爵でしかないのでな」


 それでも男爵は貴族様。血筋や家柄が物を言う世界で、一般庶民が成れるものでは無いのだ。


「それで、今日のお運びは一体?」

「ふむ、それはだな」

 その理由は私の作った<レイジー・マイシン>で、多くの使用人とその家族が助けられた事、桔梗殿に家宝の<パラライズ・サンダーエッジ>が守られた事に、改めて礼を言う為だった。


 もう一つの理由として腰が悪いにも関わらず、早朝一番でルチアの窓口に並ぶオイスター執事に、私が便宜を図って一般の人よりも、カプセルを余計に渡すよう、ルチアに頼んでいた事もあった。


 使用人の家族に渡るなら、それも一般と同じだと私は思うし、ルチアも贔屓にならないよう他の客に配慮していたようだった。

そのルチア・アルデール17歳は出来る美少女で、流石に冒険者組合人気ナンバーワンのゴールドプレート受付嬢なのだ。



______「レイジー殿、あなたには二度も助けられた。話はオイスターや、そこのデリーシャからも訊いていてな、何でもここに薬屋を出したいと?」

 『来たぁ~』

 これはいい話が訊けそうだと、私は内心わくわくしていた。


「ここらの土地は儂の領地、無償でレイジー殿に貸したいと思っておる」

『やったぞ!』

「但しそれには条件がある。デブーラ男爵家の使用人、家族を含めての健康診断、その他、薬に関して便宜を図って貰いたいと思っておる。それを飲んでくれれば、儂が薬店建築の費用も出そうではないか。但し儂は貧乏貴族、豪華ではないが、そこそこだ」


 そこそこであろうと、一国一城の主になる私に異論がある訳がない。

私は医者ではないけれど、現代知識で健康診断をして適した薬の処方をする。診断はAIを使ったスキャンを活用するので、そこは問題がないだろう。

何から何まで予定が前倒しになって転がり過ぎている程だ。


「で、おめぇさん、どうする気だ? 若いの」

 バイソンが怖い顔で、私を睨んでいた。


 あらあら

「レイジーさんはラッキーボーイなのかしら?」

『いえチェリーです。でも事が上手く運んで......へっへっ』

 ままぁ、おじちゃんが またわるい かおしてるぅ~


 子供とは思った事をズバリ言ってくれる生き物だ。私はルルの言葉に内心焦りを感じてしまった。

「おい、男爵様がここまで言ってくれてんだ。返事は一つしかねぇだろうが」

 そう、その通りなのだ。私は二度目の腹をくくった。


「お、お願ぇしやす、男爵様ぁ!」

私は以前にも、バイソンにもこんな言い方をしたと思うが、どうしてこんな言い方になるのか、私にも全く謎である。


 ほッほッ

「どうやら承諾して貰えたようで、何より何よりじゃ」

 オイスター・ケチャップも好々爺の如く満足そうだ。

「うむ、快諾の即決、悪い青年では無いようだ、オイスター」

 でも にやにやしてるよぉ~


「これルル、お客様には思ってても、言わないお約束なの!」

 はぁ~い

「良かったわね、レイジー様♡。父は役に立ったでしょ?」

「ありがとうごぜぇやす、デリーシャさん!」


「兄貴ぃ、その言葉はいつまでやってんのさ! 媚びすぎでキモなのよさ」

 善は急げと言う。気を良くした男爵様は、早速建築に取り掛かるようオイスターに命じたのである。


 ◇祝着工◇

______急遽、ナイトメア亭の隣には木造ながらも、デブーラ男爵家お抱え職人達の手で、<レイジー印・ドラッグストア>の建築工事が始まった。

新装<レイジー印・ドラッグストア>が開店するのは、これから約一か月先の事。


 これでバイソン大将やモーリンさんに、アンドロイド娘達の食事について、疑問の目で詮索されずに済むのは、私にとっても非常に有難い事になったのは言うまでもない。


 まず整地して基礎工事が終わり、<レイジー印・ドラッグストア>が、日に日に出来上がっていくのを見ているのは、とても心が躍るものだ。しかも木造でレンガも使っているので、私が見慣れたコンクリートや鉄骨よりも味わいがあるのも嬉しい。


 エネルギーはプラズマ重核子炉が作る電気でIHなんかも装備し、井戸水を沸かして毎日風呂にも入れる豪華仕様となる。

<魔の森>の奥、北の湖近くにある温泉は、今後保養地として別荘を建てるのも面白い。



 私はもう一つの課題、<偽女神様>でっち上げ作戦へ移行する決意を新にした。

これは薬の販売促進を期待していない科学的検証であって、その結果、副産物としてこの辺り一帯が<女神様の聖地>となって、ナイトメア亭の集客と土産販売に貢献する計画なのだ。

これが私の<一粒で二度、三度美味しい>計画、<濡れ手で粟>プロジェクトである。


 ◇新たな刺客◇

______秘宝<パラライズ・サンダーエッジ>の奪略、薬師レイジーとナイトメア亭の爆殺と、あろう事か度重なる失敗にエイプ子爵は激怒していた。


「何故だ!B+ランクの誰も知る筈のないオリジナル・スペルの使い手だぞ。何故失敗するんだ、この無能が!」

 はっ......。


 側近の男は、怒鳴られても言い返す言葉がなかった。

「もう失敗は許さんぞ。Aランクだ、高額な出費になるが、これでは儂のプライドが許さんのだ」


______冒険者の中には、裏の世界の仕事を請け負う者がいる。

 俗に<闇ギルド>と噂される組織である。

表の顔と裏の顔を使い分けながら、平然と生きる彼等の素性を知る者は少ない。

 彼等は、金の為なら何でもする非道な者達であって、多くは闇ギルドへ指名で依頼が来る。


 ◇不穏な者達◇

 デルモンド王国の南、日本で言うなら忍者の伊賀と甲賀のような武装集団の里がある。

普段は漁民や木こり、農民を隠れ蓑にして、日々鍛錬を続ける暗殺を生業にする者達だ。


 一人の漁民から、ある怪奇な空飛ぶ船を見たと言う話を訊きつけた。しかし、それは浜辺に降りた筈だが、翌日には消えていたと言うのだ。

「天から船が降りたと?」

この噂話は、武装集団の隠れ里に伝わる事になった。



 ◇デルモンドから南の海岸近くの森◇

 うぅ......。俺は......どうしたんだ?

「気づかれましたか? アレクサイ・ケツノアナコフ隊長、ここなら住民の目から見られる事がないと思われます」


「ロマノフ、お前か。それと俺の事は隊長でいい」

緊急事態に遭遇し、自動制御で海岸に着陸したルルシア帝国のシャトルは、いち早く気づいた隊員ロマノフの機転で、すぐに森の中へと移動していた。


 ここがどこなのかは誰にも分からない。見渡す限りの木々は、地球のそれと違和感がない程だった。

「ウラワジミーナ副長、核弾頭ミサイルは無事か?」

 да!損傷なし

  うむ

「しかし隊長、我々は一体どこに来たんだ?」





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