EP32 ヒーラーを探せ!夢のドラッグ・ファイブスターズ戦力アップ構想
______「今日はRenoの言う通り、とても日が悪かった。最悪と言ってもいい仏滅だった。私はvery疲れたので帰って寝る事にするよ」
「下衆様、運勢がドンピシャ大当たりしたでしょ。では一緒に帰りましょうか」
「さ、さ、帰るべ」
「あ、ジョーの姐さんは採血をしてからだよっと言っても、この状況ではね」
姐さんが採血セットから注射器を取り出して、いつもの定位置で安酒を飲んでいただろう三馬鹿トリオに近づいていった。
「これじゃ歩きにくいのよさ」
今の爆発騒ぎで、フロアも瓦礫だらけ採血どころではないのだ。
しかも酒を飲んだ後の血液など、私は実験に使いたくはない。
「三馬鹿トリオも転がっている事だし、今日はしゃぁない。採血はまたこの次でいいから、ジョー姐さんも一緒に帰ろうか」
見慣れない注射器は、三馬鹿トリオのジャッカル達を振るえ上がらせるには威力があり過ぎた。
「おい、今の見たか? 見たよな」
「針だ、長い針で姐さんは何をする気だった?」
異世界で針が意味するものは、アサシンが持つ凶悪な武器しか思いつかない。
「透明なチューブの部分は毒を仕込んで......俺達にブスっと」
ゾゾォっ
「ジャッカル達が、年増にビビってるぞ」
「針にだな。俺はアデリア組合長の鋭利なヒールなら、チックっと刺されてぇ」
「そりゃ、グサッだろ。痛ぇってもんじゃねぇし死ぬぞ」
ブスっとまでは合っている。ジャッカル達がビビッている顔を見ながら、私達は冒険者組合を後にし、今日の出来事は一体何んだったのか、私は魘されながら眠りに......つける訳がなかった。
ただ眠りながらでも反省すべき問題点が沸いて来る。
ナイトメア亭の店主にも言われた「ヒーラーもいねぇのか」だ。
それが今日の爆発事故で、ルチアの魔法に助けられた事もだ。
本来なら007みたいに、私は二度死んでいてもおかしくはなかった。生きていられるのは偶然、魔法の使い手に助けられたからだ。冒険者チーム<ドラッグ・ファイブスターズ>に足りない物とは。
「それはヒーラーなのだ!」
私には、いや私達には新しい大きな課題が出来た。
ボンヤリと天上を眺めているうちに、いつの間にか私は深い眠りに落ちていった。
「三日も寝てないもんねぇ兄貴は。そっとしとこうよ」
あぁ
そだねぇ
「Renoが付いてますから。年増と桔梗、バニラは薬の製造を」
「ボクも疲労してるんだ。だから兄貴の隣で仮眠をっと......あはっ、やっぱりダメッスか? ダメッスよね」
グルグルキュァ~ン
キャァ~Renoの指先が!
◇◇
ケツ ケツ ハケッコォォ~
異世界版のニワトリは、ケツケツと煩く鳴く。
「なんとかならんのか、その鳴き方わ!」
______翌日のナイトメア亭は、私達が帰ってしまって、朝から客もいないのに、台風でも来たかのような騒ぎになっていた。
眠れない想いで一杯のアデリア組合長が、何かを告げたくてナイトメア亭に爆走して来たのだ。
アデリアがナイトメア亭に顔を出す事は、今迄殆ど無かった。その切羽詰まった表情に、バイソンとモーリンは余程の事だと
思うのだった。
「おめぇ、ここが襲われたって訊いたから、朝から心配してすっ飛んで来てくれたんだな。すまねぇ」
あらあら
「そんなに......アデリア、あなた目に隈なんか作っちゃって。でもご覧の通りナイトメア亭と、お客様の薬師さん達も無事だったわ。本当に間一髪、私も、別の意味でも死ぬかと思ったけれどね」
「あの時のお前は凄かった」
死ぬ?
誰が?
薬師が?
あたしの愛しいレイジー様が!
「モーリン、その薬師とは、あたいが紹介したFランク糞薬師の事か? その糞が死にかけたと今言ったのか? おい、どうなんだモーリン! バイソン!」
アデリアの顔には鬼気迫る焦りがあった。
「そうよ。私の極冷凍魔法で何とか間に合ったんだけどね。その時は無我夢中のスッポン......何でもないわ」
『AZD......あれを使う程の手練れだったのか......レイジー様はよくご無事で』
ゴゴゴゴゴォ メラメラ
「アデリア、おめぇそんなに俺達の事で怒ってくれるのか。俺達は解散したとは言え、元Sランク冒険者チーム<氷炎のザフォース>のメイトだからな、俺は嬉しいぜ。なぁモーリン」
「許せん! 許せん! ずえったいに許せんぞぉ!誰だ、誰が糞を襲った!?」
「あらあら? あれはね、エドランド王国宮廷魔導書にも記載されていない爆炎魔法だったわ。恐らく暗殺を生業にした腕利きのスペラーだったと思うの」
「スペラー! では元Sランク冒険者の我々に、恨みを持った輩の仕業と考えていいのだな」
あらあら
「それは......まだよく分からないのよ、ね、あなた」
「ここへ移住して六年、何も無かったからな、俺にも分からん」
『ならば、まさか狙いはレイジー様!!しかし何故?』
「おい、何か犯人の手がかりはないのか?あたしにとって超重大な事件なんだぞ」
『あらあら? これはもしかして春?』
ZZZ ZZZ
______眠っている筈なのに、頭は完全に眠る事がない。
私は課題となった<ドラッグ・ファイブスターズ>の戦闘力について考えていたのだろう。そんな夢を見ていた。
Fランク冒険者チーム<ドラッグ・ファイブスターズ>チームリーダーは私だ。これは冒険者組合の登録時に、魔道具<体重計>が吐き出したデータだ。あくまで参考だと私は思っている。
チームリーダー
Dr.レイジー・タチキ ♂28歳
LV1
HP=15 標準
MP=0
武器=ナイフ
攻撃力=1
特技=医薬品製造
装備=カンバッチ
コス=紺のスーツと白衣
バニラ・アイス 年齢不明
LV=測定不能
HP=0 測定不能
MP=0
武器=なし
装備=カンバッチ 金ダライ
コス=白衣 麦藁帽子 ハイヒール
ドミニク・ルフェーブル ♀26歳
LV=20 Cランク相当
HP=25 モンク?
MP=0
武器=なし
装備=黄色い帽子 カンバッチ
特技=?
コス=ミニスカ・ブーツと白衣
体重=65debura(58kg)
桔梗 年齢不明
LV=測定不能
HP=0 測定不能
MP=0
武器=長剣
装備=カンバッチ
コス=紅いフンドシドレスと白衣 お団子頭
Reno Sashihara 年齢不明
LV=測定不能
HP=0 測定不能
MP=0
武器=なし
装備=カンバッチ
コス=メイド服と白衣
______武器を持っているのは、私のナイフ一本と桔梗の<妖刀ムラムラ>だけだ。
バニラ・アイスなど、何の為に金ダライを持っているのか、周りの人間には理解が出来ないだろう。それでもアレは、アルマイト合金からチタン超合金製に変えているのだが。
「まぁ破壊力と言うより、バニラはド突き回って跳ねて楽しんでいるだけか? 本当にバニーガールだ」
AI-myuシリーズを搭載した娘達。
本来なら、疲れを知らないパワーと瞬発力、状況データ分析、対応力はAランク冒険者より優れていると思う。Aランクの力量を知っている訳では無いが、これは私の推測だ。
「あ、Sランクの実力は朝、冒険者組合で体で体験してた! しかし私とジョーは生身、この先どうしてもヒーラーが必要になる」
『モーリンさんは攻撃型の魔法使いなら、バイソンさんはあの体格からしてパワーファイター? ヒーラーが居ないじゃないか』
「私には、あんな事を言っておいて、なんだよ」
冒険者でもない安宿の戦力を考えても仕方がないのだ。仮にモーリンさんが加わったとしても、人妻ではやりにくい。
『ヒーラー、ヒーラー、ヒーラーねぇ』
待てよ、最初にアデリア組合長が、フロアで<クリーン魔法>を使えって言ってたのは......ルチア・アルデール! それに私とアデリア組合長を、ふんわり落下させたのもルチアの魔法だった。
「ひょっとしてだが、ルチアが感染しないのは、ヒール魔法を使えているから? でもそれならボランティアが出来る筈」
分からん!
取り合えず候補者が一人、ピックアップ出来たのだ。
『詳しい事は本人から訊いて、合格なら私のチームへと......しかしルチアは冒険者組合の超アイドルだしな、B案も探しておかなくては』
これは私の夢の中の事。
明日の朝、起きた時には夢は忘れている事が多い。
天才レイジー博士には、まだまだ解決しなければならない問題と課題が沢山あるのだ。




