EP3 2054年1月10日 火星に向けて<は・ひ・ふ・へ・ほ~>☆
ピぃ~ぴょろ~
ぴょろ~
_______壁に激突したミニ姿のJoeが、頭にヒヨコを飛ばして120度大股開きで気を失っている姿は、実にラッキースケベで眼福であった。
『軽い脳震盪だろう、大丈夫、大丈夫』
しかし至福の時は短く、実に残念な横やりが入ってしまうのは、人生とはそう言うものなのだと、この場は諦めるしかない。
その横やりの正体は、美少女アンドロイド バニラ・アイスである。
「あ、ご主人様、生ゴミがゾンビ復活してしまいました!もう捨てるのがベストな選択ではないで せうか?」
『せうか? ちぃ惜しかった!もう少し見ていたかったのに、バニラの奴め!』
例え完成してからたった1年の付き合いでも、バニラの高性能AIは、青年博士の心を読む事が出来るまでになっていたのだ。
「ご主人様ぁ! 私はゲキオコプンです!」
「何を膨らんでいるんだ? 復活......それでジョーは大丈夫なのか?バニラ」
『このあほスケベ! ゾンビは死なないのです!』
「まぁ丁度いい具合に腐りかけてますけど、もう一息といった所でしょうか」
腐るとかもう一息と言うワードは、バニラの言語バンクにバグでもあるのだろう。一度、点検精査した方が良さそうだけど、私はこのままでも面白いかもしれないと思い直した。
「実に面白い。それは大丈夫だという裏ワードなのか? バニラの<AI-myu96>は、比喩論理回路が非常に良く出来ていると思う。しかし私の両親は、何故AIに<myu96>と名前を付けたんだろう?」
そしてもう一つの謎。<AI-myu96>には、IQ280の私をもってしても分からない<ブラック・チップ>の存在がある。
「5mm角のチップ、あれはいったい何に使われているのだろう?」
______そんな会話を耳にしながら、ジョーがヨロヨロと120度大股開きから立ち上がろうと股を閉じてしまった。
チッ
「痛ったたぁ。博士、誰が腐ってるのよさ?」
「訊いていた? それはバニラの比喩だよ......ちょっと聞くんだけどさバニラ。お前ってさ、ジョーをその恰好のままで介護してたのかい? 大股開きのままで?」
「......まぁ生ゴミですので」
キッパリ
?
「ほほう、120度大股開きのまま放置したのはきっと、動かしてはまずい理由があっての事だろう。120度に医学的な深い処置があったとは流石だよバニラ」
「あはっ、恐縮でしでし」
おい!
そこでジョーは、ライバル国ルルシア帝国の侵入をやっと思い出した。
「はっ!博士、絶対に見たわね あれを!」
「な、嫌だなぁジョー、いったい何の事だか私にはさっぱりだよ」
「プン、惚けても無駄ですよ、ご主人様」
「ルルシア帝国の追っ手はどうなったんです? ボクに状況を教えてくださいよ」
「あっ そ、そっちでっか? そうだな。ジョーの怪我は、黄色いヘルメットのお陰で大した事も無さそうだしバニラ、ジョーをリビングに案内してあげなさい。詳しい経緯はそこで話そうか」
◆◇◆◇
体のあちこちをぶつけてまだ痛むのか、ジョーの歩き方が少々痛々しいが、それもなかなか見応えがあると思う私だ。
サス サス
形のいいお尻を摩るジョーの時折チラリと見える純白が、ずっと世間と交流の無い私には超眼福であり、思わず凝視してしまうのは、健全な男子たるもの当然の本能だと言えよう。
しかし、どういう訳か青年は、<女心を理解出来ないただのスケベオヤジ病>であった。
『洗剤は<マルミエール>かな? それはあり得~る! しかし丸見えよりも、チラリと見えるのがエロスの極意なのだよ』
「ご、ご主人様! ぷん!」
『ゲ、バニラは本当にAIなのか? 確かに私が完成させたアンドロイドだよな』
案内された小部屋は、どちらかと言えばキッチンとテーブルだけの簡素なダイニングルームで、どうやらここで博士から詳しい話が聞けそうだと、痛む形の良いお尻を摩りながらジョーはそう思った。
「ジョロジョロ、オヨヨ軟膏と打身に良く効く、バニラちゃん特製シップ薬ならありますよ」
「ふん、そんなもの結構だ!」
「ハバネロなんて両方共絶対、ずえったいに入ってませんから」
「絶対に要らないわ!」
『......バレてる!チィ やるわね生ゴミ。これを見抜かれるなんて』
バニラの物言いからすると、二つ共にハバネロが仕込んであったのは間違いない。
☆
____余談だが作者山路は、過去に何を思ったのか、切れ痔に正露丸を塗ると言う暴挙に出た経験がある。それがどうなったのか......作者は死兆星を見た男なのだ。
バチバチィ
一人と一体の会話を聞いて、私は二人の仲の良さを確信していた。
『あいつ等、目から火花を飛ばす程いいコンビなんだな。これなら長旅になってもうまくやっていけるだろう』
私がバニラ・アイスの代わりにコーヒーを淹れていると、その間にジョーが藤の椅子にソロリと座り、またバニラと楽しく話しているのを見ると、大事な秘密も話しやすくなるものだ。
何しろ信頼関係なくして我々の秘密は語れないのだから。
「うん、実に結構」
______バニラに代わって、私が淹れた安全なコーヒーを、ジョーが美味しそうに飲んでいる。それを見ているバニラも、顔をピクピクさせて喜んでいるのが分かるぞ。
『チッ、飲み物はダメだわ警戒されてる。開発した<ジョーコロリ>が無駄に』
「さてジョー、君の聞きたい事は何かな? 全ての疑問に答えると約束するよ」
「そう」
するとコトリとコーヒーカップをテーブルに置いたジョーの顔がマジに変わった。
______「ここはどこ? 博士、リビングルームなんて答えは却下なのよさ」
「なら地球の大気圏外」
は??
確かにあの時、発進とか言っていたのは記憶にあるジョーだ。
______「じゃ、あのコックピットみたいなのは?」
「本物のコックピット」
ひ?
「博士、IQの無い生ゴミには到底理解できません。もう投棄するのがよろしいかと愚考しています」
「糞ウサアンドロイド、ボクにだってIQあるわぁ!こう見えてもIQ150で、ハメリア合衆国情報局最高のチョー美人エリートとは、ボクの事さね!」
「年増でIQがカス」
バチバチィ
ううっ
『ジョーと私が作ったアンドロイド、バニラ・アイスが......こんなに仲良くして......次世代AIの域を超えた最高の出来だ』
私は感動して、思わず涙ぐんでしまった。
______「それならジョー、一門一答では面倒だから纏めて話すよ。まずここは亡き両親が建造した宇宙船を、私が更に改造を加えた亜光速宇宙船の中だよ」
ふ?
______「ルルシア帝国の追っ手から、この宇宙船で大気圏外まで離脱して、いまは火星に向かおうとしているんだ」
へ?
「当時奴らが狙っていた次世代AI-myu-96は、このラボを兼ねた宇宙船の中にあった。そして私の為に作りかけてくれた多目的アンドロイドに、次世代AI-myu-96を組み込んで一年前に私が苦労してやっと完成させたんだよ」
ほ~?
「しかし私がバニラ・アイスと名付けたアンドロイドが、これほどとはIQ300の僕でも予想出来なかった。ジョーが見ても人間の女性と全く変わらない、とても素直で世界最高のアンドロイドだろ?」
『ぽぽっ』
ジト
「博士、駄作の間違いでは? それに何でバニーガールなのよさ」
「はは、ジョーは褒め方が上手いな。私には真似出来ない才能だよ。バニーガールは父の大好きな趣味だったし、母はいつもバニーガールのコスチュームを、嬉しそうに着ていたんだよ」
『ボクは褒めてないし、父親の趣味にもいささか問題がある。それに母親が着ていたなんて、コスプレプレイマニア夫婦だったのかい!』
______「私達が火星に向かおうとしているのは、すぐに地球に戻らない方がいいからだよ。二か月くらい火星で暮らしてから、南国の無人島にまた戻ろうと考えているんだ」
ちょっと!
ジョーは太陽系の惑星に関する国際条約の事を思い出した。
「それなら博士、火星に着陸したら、その国の領有権が認められるわ!これはハメリア合衆国にとって歴史に残る一大事件になるのよさ」
確かに国連決議で月の領有権争いを禁止され、その代替え処置として太陽系の惑星の領有権が早い物勝ちとなったのだった。
「火星の領有権? ふん私には関心がないし、それに私は日本国籍なんだ。公表したらハメリア合衆国まで敵に回るし、この宇宙船のエンジンの秘密は絶対に公表出来ない。何故なら世界がこのエンジンの秘密を知った時、人類は益々強欲になり戦争を起こすだろう?」
「博士はGフィールドエンジンの秘密が、世界平和の仇になると?」
「その通り」
◆◇◆◇
<亜光速宇宙船レテイキュラム号>
天才青年の亡き両親が建造したラボを兼ねた宇宙船で、光速の70%で航行出来、10人までなら二か月位は余裕で生活が可能である。
搭載した画期的な重力エンジン、Gフィールドエンジンは、これまでのロケットエンジンの概念を変えてしまう大発明で、これが宇宙戦艦などに転用されてしまえば、宇宙が戦場になってしまうのは間違い無いのだ。私とバニラは、それだけは何としても阻止しなければならない。
重要なのは、この宇宙船レテイキュラム号には、ライバル国達が狙う次世代<AI-myu-96>が一つがほぼ完成して残されていた。
その能力は惑星間航行に必要不可欠なAIで、今はバニラ・アイスの中に私が収めたのだ。
つまりバニラが乗っている宇宙船レテイキュラム号は、太陽系外縁までも航行可能な、世界で唯一の惑星間航行宇宙船と言える。
「じゃ博士、真実を隠さないと、ハメリア合衆国と日本も巻き込んでしまうのね」
「______いや、嵐を呼んで世界が敵に回るだろうね」
「博士、やはり全てを知ってしまった生ゴミは、闇に......」
この時、私はバニラアイスの瞳に闇を見たような気がした。
しかし、いくら何でもAIにそのような感情がある筈はない。人間が自我を持つアンドロイドを作る事など......遠い未来なら可能だろうけど、2054年の現代ではまだ有り得ない。
______「ジョーも私も、この漆黒の宇宙を見るのは初めてだからね、宇宙を闇と比喩するとは、それにジョーも闇に感動しているだろう? 兎に角、レテイキュラム号なら78,338,770kmある火星まで、最速で20分もあれば到達出来る。その間、火星までは揺れないから、ジョーは寛いでていいよ」
「本当に行くの?博士、火星だよ?」
博士の理由には納得出来るのだが、火星で暮らすと聞いてジョ―は不安を隠せなかったのだ。
『遊ぶ所は無いし、コンビニもある訳がない......宇宙船内で二か月も暮らすのかぁ~それってとってもデンジャラスぅ』
「ジョー、私達に選択肢は無いんだよ。バニラ、レテイキュラム号の初航海だ。折角だから一時間かけてのんびり行こう。ナビゲーション スタンバイして」
「了解ですぅ ご主人様!」
____Gフィールドエンジンが、亜光速航行モードに切り替わった。
しかしレテイキュラム号は僅かなハミング音がするだけで、ジョーにはとても宇宙空間を航行しているとは思えなかった。
「なかなかいい感じだ。ゆっくりと60分のスペースクルーズだからこのまま行くよ」
二人と一体が、いよいよ火星に向けて航行を開始したのである。
人類がロケットエンジン以外で火星に着陸する。本来なら歴史に残る偉業となるのに、人間の強欲がそれを拒み、私から奪ってしまったのだ。
「私はね、科学者は人類の役に立つべき仕事を担っていると思う。それを兵器転用になどに絶対にさせるもんか!」
「ご主人様!!」
力強い博士の強い言霊に、エージェント・ジョーの股間が震えた。そして股間から脳に伝わった股間発情信号が、ジョーの決意を固めさせたのだ。
『ボクは、ボクは博士にどこまでもぉ ついて行きますぅ!』
ブルブル
『くっまずい!生ゴミの股間に次元振動の発情を確認! 絶対にデリートするの!』
天才青年科学者と、次世代AI<myu-96>を搭載したアンドロイドのバニラ・アイス、ハメリア合衆国情報局の美人エリート、エージェントJoe達のイチャプン冒険譚?が、今ここから始まったのだ。
否、始まってしまったのだが、それが世界平和に繋がっていくのだろうか? それは誰にも分からない。
合掌
作者も、バニーガールが大好きでして。




