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EP22 2054年2月 信仰の力で金儲け? レイジー屋、お前も相当ワルだのう


______私は幾度か<レイジー・マイシン>を卸した時、親近感があって何故か感染しないルチア・アルデールに、信仰について訊いた事があった。

このデルモンド王国ではどんな神を崇拝、信仰しているのかを。


「あの、信仰って?」

ルチアはどの国でも存在する筈の神、宗教などは知らないと言った。

「困った時に祈ったりしないのか? 今だって謎の高熱病で苦しんでいる人達は、神様に祈らないの?」

「魔法とポーションでなんとかするので、そのような事はしませんよ」


 遥か訊いた事のない東方の国出身だとか、薬師の白装束で魔法を知らないとか、妙な年増と美少女ばかりを連れたパーティメンバーとかで、ルチアの疑問形は増すばかりだった。


『美少女三人は冒険者登録の時に、内密だけれど体重計で鼓動を感じなかった。まさかあの三人はゾンビ人間かも!じゃレイジーさんの正体は......げぇぇ恐ろしいネクロマンサー?』


 一つ納得出来るのは、レイジーがイケメンである点とルチア自身、薬で重病を治す事に懐かしさを感じたりもしていた。


『でもこの前なんか、アデリア組合長をお姫様ダッコなんかしちゃってさ、あぁ私何だかイライラするのよねぇ。でも本当にネクロマンサーだったら怖いしぃ』

 プンスコ


 この異世界には魔素が存在していて、術者が言葉に出して念じると、相応した魔法が発動する。それが詠唱だ。

私はその発動のトリガーが、信仰する神に向かって念じる事だと推測している。


 魔法によく詠唱が必要なのは、神の力にアクセスするキーワードではないかと仮説を立てたのである。

その根拠は、誰でも出来る簡単な生活魔法は詠唱が短く、長いほど複雑で難解な詠唱を必要とする点である。


______我々地球の人間は、祈っても特別な現象は起きない。それでも信仰する神は誰にもある。

地球人と異世界人の違いは信仰があるかないかで、地球人は信仰する神があっても魔素にアクセスが出来ない。そもそも地球に魔素が存在しているかどうかなど、アインシュタインでも知らなかった。


 反面、人間と言うのは祈る事で力が沸いたり、言霊で気持ちが救われたり体が楽になったりする。それが自己暗示だとしても、自己の細胞を活性化させる為に、病気に対する抵抗力や免疫機能を高めたのではと思えるのだ。

勿論、これは仮説であって検証しなければ分からない。


 難病を祈って治せるものでもないが、体が免疫力を高めたとしても、ウィルスの行動を抑え込めなければ病魔の勝ちだ。

科学者でありながら、<病(やまい)は気から>という諺は、私はある程度当たっていると思っている。


 では異世界人はと言うと、何かあればルチアが言った通り、何でも魔法で対処しようとする。謎の高熱病も、高位ヒールや高額なポーションで治す事しか考えていないのだ。


「もし、異世界人が信仰を持ったとしら......魔素にアクセス出来る念の力は持っているのだから、信仰の力で自己免疫力を高め、<レイジー・マイシン>を必要としなくなるかもしれない」

「あの、レイジーさん、さっきから独り言ばかりですが?」


 追及し出すと周りが見えなくなるのは、私の悪い癖だ。

「あ~悪い悪い。今日の薬は卸した事だし、じゃ私はこれで帰るとしますか。じゃまたね、可愛いルチアちゃん」

『か、可愛い ちゃん♡』

 はひぃ!

「お、お気を..お、お控え お控えなすってえぃ!」

 はぁ?

「あぅ、お気を付けてでした」


「ちょっと先輩、何を言っているんですかぁ、おかしいですよ今の」

 でへへのでれれ


『おかしいと言えばレイジーさんって、唇の動きが遅れているし、形が違うのよねぇ......いつも。この違和感はレイジーさんと、変な黄色い帽子を被った年増ブスだけなんだけど』

実は残りの三体は普通に喋れていた。


 娘達アンドロイド三体のAIは超高性能で、もう異世界言語を完全にマスターして、缶バッチ型翻訳装置はもう使っていなかったのだ。


 青年レイジー薬師を見送った後、今の醜態を誤魔化すようにルチアは隣のレイに話を振った。

「あのさレイ、北の湖にさ、化け物が住んでるって噂、知ってた?」

「え~化け物ですかぁ? 怖ぁ~い。でも、そんなの訊いた事ないですよ先輩ぃ。<ナイトメア亭>の噂なら訊いた事はあるんですけどぉ」


「レイ、考えてみたらこの町っていろいろあるよねぇ、噂が。まさか<ナイトメア亭>もなの?」

 あれぇ先輩、それ知らなかったのぉ?


 

◇◇

 検証A 祈りで異世界人の免疫力は上がるのか?

______私の興味は、魔法では治せないコローナ高熱病を、<異世界人は祈りで治せる>のではないかにある。


 科学者である私が、宗教を論じるのはいささか疑問かもしれないが、飲まなくても病が治るのなら、私が徹夜で薬を作らなくても良くなるし、異世界人にとっても認識を新にすると思うからだ。


 「あッ、私達の儲けが無くなるんだ! いや、そこは医は仁術と肝に刻むべし! だろうけど」


「レイジー兄貴ぃ、また妙な事に首を突っ込んで!ボク達のする事は、魔物討伐や薬を売ってお金儲けする事でしょ? それで<レイジー印・ドラッグストア>を開店するのが目標だったはずよね」

「理屈は合っているよジョー、私はG(ゲローナ)より、人の笑顔を見るのが嬉しいんだ」

 ほぉ~言うじゃんか兄貴ぃ。


 別にジョーの前で恰好をつけた訳ではない。

「私は両親を暗殺された事も心の傷にはなっているけれど、この世に人の笑顔ほど尊くて幸せを感じるものはないんだよ」

 ......うん、それはボクにも分るよ。


 「そこでだ」

 ゲッ、何か企んでるよ、その目が。

 溜めを大きく作って、私はその重大発表のタイミングを計った。

 バニラ、ドラムロールを頼む!!

 はいな父ちゃん!Darararaa Baaan!


 「私は神様をでっち上げる!」

 !!!

「ついに狂ったよレイジー兄貴が!ボク、こればかりは兄貴を見損なったのよさ!」

「違うぞかぶら、そこは、うぬは既に狂うておったのか!と言うのがお約束だ」

.......「いえいえレイジー屋、お主も相当ワルだのう ってのも似合ってますよ」

 Renoなど褒めているんだか、微妙な匙加減がうまかった。


____でっち上げ神様の構想___

①見た目からやはり女神様がいいだろう

「そりゃそうね」

②紫外線で対象者をまず殺菌消毒、鎮静芳香剤をまいてリラックスさせながら、同時に金色の光線で神秘さを演出する

③女神様は喋る3Dホログラムで、会話はバニラ、桔梗、Reno、ジョーの誰かが交代で行う

「「「おおぅ」」」

④願いの祠みたいなものを作って、拝むと御利益があったと噂を広める。これにはサクラが必要になるが問題はないと思う

「「「せこいよ」」」

⑤拝んでくれた人には、特製女神様グッズが抽選で当たる

 「それ安っぽくない? なんか怪しそうなのよさ」

 「例えばだよ、信仰の証<女神様ネックレス><指輪>なんて、欲しくないか?拝めばいつか当たるって面白いだろ? しかも無料だし」

  指輪は欲しい!!

「Renoをモデルにすれば、それこそ人気最高のスポットに!」

「「「却下ぁ!!!」」」


 思いつくのは、ざっとこんな所である。

「そりゃぁ、レイジー兄貴がやりたいって言うのなら、ボクは反対しないけどさぁ。もし効果が無かったらC/Pは最低だよ」


 全ての事柄をコスト・パフォーマンスで語っては、世の中のボランティアの方々、NPOの方々に申し訳がない。


「C/P? 検証しなければ、分ることがいつまでも分からないままになる。それは進歩を諦めることだよ」

実にそれらしい事が口から出てしまった。若干気恥ずかしいけれど、これが科学者のあるべき姿勢だと思う。


「むッ、幻影燈を投影するのか。それは面白い」

「ではRenoが女神様の......却下でしたね」

「バニラちゃんは、これ以上人気者になりたくないからグッズでも」

「じゃ、ボクは美声でアテレコ担当」


 どうも娘達アンドロイド三体とジョーは、暇つぶしのお遊びと勘違いしているのかもしれない。

「いいかい、異世界人が持っていない信仰で、病を治せないかを検証するんだから。そこんとこ間違えないよう念を押しておくよ」

などと言いながらも私自身も、悪だくみを楽しんでおるのだよ。

 げへへ


「でもさぁ、以前兄貴に頼まれてたアレは、まだ必要なの?」

 ニヤリ

「アレも検証するんだぜ。そのつもりでいてくんな姐御」

 なに? その悪党みたいな話し方は!


 科学の進歩とは検証の積み重ねであって、レイジー博士が行う異世界で進める検証一つ一つが、魔法と科学の違いを教えてくれようとしていた。




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