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EP111 一件落着では済まなかった


  ユラリ

______見た目だけでは年齢も分からぬ監視者βが、陽炎のように現れる。音もなく突然現れるβは、この部屋の主αにとっていつも神経を逆なでする存在。

そのα自体も齢不詳なのだが、妖艶な美女だと言っておこう。


 決まって最初の言葉は、嫌味から始まるのは分かり切っているのだ。それがαが苛立つ理由だった。


「ようα、見てたぜ。御自慢のモンスターが。ふ、やられたな。これで2体目か」

 チッ

 αは内心で舌打ちをする。

 このβは、αが来て欲しくない時に必ず現れるのが常なのだ。

「あら、そう?」


 αの内心は苛立っているものの、なんでもないように冷静を装っての返事をした。せめて抵抗だけはしたいからで、言い争ってもなんの利益もない。

αの傍らには、前回左目をつぶされた巨体ガッジーラの、ミニモデルなのか、それが沈黙して立っていた。


 「ふ、怒った顔は隠せてはいないぞ。 まぁ言いたい事は分かる。こっちもエスタリカ王国とルルシア帝国を絡ませて、いよいよってとこまで来ていたんだ。お前が日本のSF怪獣バルゴンだったか、突然、暴れさせたのは、こっちの計画にも支障が出ているんだぜ。まぁ文句を言いに来た訳じゃないが、ちょっと挨拶をな」


『なにがちょっとよ! そっちだってレイジーのアンドロイドに見つかる寸前だったのに、よく言うわね』

どうしても怒りが顔に出てしまったようだ。

「プランはAとB、複数立てておくものだ。お前は考えていなかったと?」


 むぐぅ

 図星を指摘されて、αは返す言葉がなく、ただ歯ぎしりをするしかない。


 αとβは、ある目的の為に動いているが、互いの計画には協調と言うものがない。従って、時として計画を邪魔をしあう事になるのだが、それに関してはお互いに文句を言わないというルールがあった。


「ま、結果がよければそれでいいさ。こっちはプランBで、エスタリカ王国にルルシア帝国をけしかける。ま、せいぜい頑張ってくれたまえ」

αに言葉を与える間もなく、βは高笑いを残して、また空間に溶け込んでいくのだった。


「本当に嫌な奴!」

αは呪詛を吐きながらも、傍らに戻って来た穴の開いたミニ・バルゴンを見つめると、またレイジー達の観測を続けるのだった。

「これでレイジーの正体がバレる......それはそれでいいけれど、計画の修正が必要になった事は間違いない」




_______ハメリア合衆国オルガ隊長に追及され、レイジーはいよいよ核心に迫る答えを出す時が来た。

『きたか』

レイジーは生つばを飲み込んで、小さく息を吸い込んだ。額には薄っすらと汗が滲んでいる。


「それは______」

突然、鈴の音のような声で、レイジーの声を遮った者がいた。



「その子達はね、さる東方の王族の娘達とメイド達なの。反国王派貴族達の反乱で、迫害されて逃げて来たのを、レイジー様が助けたのよ!」

 え?

レイジーはきょとんとして、出かけた声を飲み込んだ。

その声の主は気絶から回復し、kannaに連れて来られたルチア・アルデールだった。

 魔力の使い過ぎで、同じように昏倒したレイランは無視されている。


「あぁ、ルチアの言う通りさ。この俺もそう聞いているぜ、なぁアデリア」

 ナイトメア停の主、バイソンも以前、その話を訊いていたのだ。


「うむ、あたしもそう聞いている。なにしろ東方の王国ヤポンの事だ。大勢のメイドを引き連れて逃げて来たんだろう。きっと今までここに隠れていたに違いない。それがこのでかい家なのだ。なぁレイジー、妻の私にも隠して来たんだろう?」


 な?

 レイジーにとって、ルチアのこの馬鹿げた話は都合がよかった。それにAi-myuシリーズが、アンドロイド達の頭に入っている事など、ハメリア合衆国隊員には想像がつかないのだ。


 Aiは電子部品であって、ICのような物だと言う固定観念があったのだ。それは全くの間違いではないのだが、Ai-myuはその形状は独特で、見た目は半生物のように柔らかかった。

 


「ほら~隊長、バニラアイスちゃんは人間で、あの技も強力な魔法だったんですよ。東方のヤポン王国が、それほどの魔法大国だったって事です」

ポッターが妙な事を言い出したが、レイジーはそれに乗っかる事にした。

『これでAi-myuの秘密は守れる』

 と。


「オルガ隊長、実はルチアの言う通りです。このメイド達には、追っ手に見つからないよう、この宇宙船内で密かに暮らしてもらっていたのです。もちろん、見つからないよう、夜の外出は許可していました」

「なるほど。大勢だとヤポンの追っ手が、ここを嗅ぎつける事もあるか」


______ここは魔法やモンスターが存在する異世界。

オルガ隊長やトーラス副長も、納得出来ない顔をしながらも、ポッターの言葉を飲み込むしかなかった。


「そう言う事か......わかった。しかしレイジー博士、こんなに沢山の美少女に囲まれて、あんたも大変だな。まぁ兎に角、今まで通りよろしく頼む......だが、これだけの美少女がいれば......嫁探しも簡単......」

 なっ!

  ギラァ


 周りの女性陣からの殺気が、まずい事を言ったと悟り、全てを言う前に咳払いをして胡麻化すオルガ隊長だった。

 ゴホ

  ゴホ


 レティキュラム号の存在はバレはしたが、ここに一応の決着がつき、大いに安堵したレイジーである。


 ゴホン

「ところでレイジー博士、我々のシャトルが行方不明なんだが、何か心当たりはないか?」

 ギク


 隣を見るとスーリアが、ヒュ~ ヒュ~と鳴らない口笛を吹く真似をしてとぼけていた。

『かっぱらいやがったな!』


 いずれにしても、エスタリカ王国に飛ばしたハメリア合衆国のシャトルは、燃料を使い切っていて元に戻すのは不可能であるのだが。

 『ルルシア帝国内を調査する拠点として、これからも利用させて貰うのだが、その事は黙っておこうと思う』


 しかしここは、ポッターの機転?に感謝するレイジーとアンドロイド達だった。

それから保毛坂48のポッターに対する態度が、少し良くなったらしく、ポッターが何故かもてていると評判になったとか。



 この東方の王国の美少女達の話は、偽聖母マリア様村の住人達も、知れ渡る事になった。

だが今重要なのは、ルルシア帝国がエスタリカ王国を乗っ取る為に、王国の将軍達を抹殺しようと計画している事なのだ。


______翌日。

 レティキュラム号の会議室で、ハメリア合衆国隊員とレイラン将軍、選抜12体のリーダー、スーリアが呼ばれた。


 レイジーは今が緊急事態である事を、回復したレイラン将軍に説明させ、ルルシア帝国の計画を阻止する為に活動していた事を話した。

「ルルシア帝国の狙いは、エスタリカ王国の乗っ取り。その為、邪魔な王国ロイヤル4将軍を抹殺する計画を実行しようとしている。私がこれを阻止したいのは......ルルシアに核を使わせない為だ」


 核!

 レイジーは核を憎んでいる。

地球人は大量破壊兵器を作り続ける愚かな生物であり、それは両親も同様だった。

それ故に、博士達が発明したAi-myuとGフィールドエンジンが、兵器転用される前に米軍の研究所を離れ、南国の孤島に移り住んだのだ。


______ハメリア合衆国のシャトルにも、核ミサイルが一発搭載されている事を聞いた時、レイジーの顔はそら恐ろしかった事を、オルガ隊長は覚えていた。


「立場が違えば......ハメリア合衆国もレイジー博士の敵になった訳だ」

「そう! その通りなのよさ! だからボクは、あんた達に正体を隠す必要があったワケ」


 今日のジョーは、レイジーの言いたい事を代弁してくれていた。


「理解した」

オルガ隊長は決意した。

「我々5人が異世界の住人となった以上、もはや軍人と切り離して考えるべきだ。平和共存こそがあるべき姿だろう。この世界で戦争のない世界を作るのも、我々がここに来た理由かもしれない」


「わかってくれましたか」

「レイジー博士の信念______それは本来地球のあるべき姿を、この異世界で実現する、我々ハメリア合衆国も同感だ。違うか皆!」

「「「勿論です!!!」」」


 軍人は人殺しの集団ではない。自国民の平和の為に存在する。

レイジー達とハメリア合衆国隊員達の意思統一が出来た瞬間だった。

 それは小さな一歩、レイジーの理想の姿の一歩となった。


 偽聖母マリア様村が最前線となったのだが、同時にそれは茨の道の始まりでもあるのだ。


『ん? メイド達は空から降って来た......どうしてだ?』

オルガ隊長には、まだどうしても解決出来ない謎があり、レイジーはまた大いに悩む事になるのだが。




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