EP106 問い詰められたレイジーの正体が今明かされるのか? バニラアイスはどこに!? そして<じゃんけんバトルロワイヤル>勃発!
______バニラアイスの必殺<スクリュースピン・バニラちゃん>アタック。
それはレベル下位の<激痛のハイヒール>とは比べようがない技だ。
それでもハイヒールで踏まれた経験があるならば、その激痛に納得出来るだろう。
異世界での使い道として、悪党をヒールで踏んづけて懲らしめる事が出来るけれど、<スクリュースピン・バニラちゃん>アタックは、超合金製ヒールを銛のように超高速で回転させ、ミサイルのように加速して対象を貫通する一撃必殺の超大技である。
そしてアデリアのMDにより、更にブーストを加える事によって、ハメリア合衆国のハイパー・バンカーバスター以上の威力を発揮する。
ズアァァ
ギュル ギュル
ズバァァ~ン
バニラアイスがバルゴンの喉を貫通したのか、ダイヤモンド・ダストのような濃い霧が大量に発生している。
すると撒き散らされた袋の中の極冷凍液が空気に触れ、瞬く間に周囲の原子運動を停止させた。悪い事に気絶したルチア・アルデール渾身の<ソアラ>も威力を失って、バルゴンの巨体が地に落ちた。
「レイラン将軍!」
レイジーは、すかさずレイランのマス防御結界がまだ維持出来ているかを確かめた。
ぜい
ぜい
「おのれやっと私の心配かレイジー! 安心しろ。結界はまだ維持出来ている」
「まだ いけそうですか?」
はぁ
はぁ
「アホウ! 無茶を通り過ぎて、気絶寸前だ! このバカ男!」
何故か罵倒されてしまったが、まだ元気そうだ。
バルゴンの状態を分析すれば、意識して極冷凍波を放った訳ではなく、これは貫通飛沫なのだ。そして行き場を失った極冷凍液は、バルゴンの体内へと逆流していった。
ゴフゥ
ゴボボ
バルゴンは怒涛の三連撃により沈黙、kannaの生体スキャンでも、やっと生命反応が停止した事を告げたのである。
『あらら、バルゴンがやられた。成長______やるわねレイジー』
それは監視者αの言葉だった。
_______「 っつ、御主人様、バルゴンを倒しましたあああ!」
しかしレイジーは、バニラアイスがどうなったのか、不安に襲われている。
極冷凍液の袋を貫通したのだ。<保毛坂48>のミサイルでさえ、ボロボロになった事を思えば、如何に生体アダマンタイト超合金でも......と最大の不安がよぎるのだ。
「バニラアイスぅ! どこだ、返事をしろ!」
レイジーもkanna達も、バニラアイスを探した。
「た、隊長、バニラアイスちゃんが特攻で_____死んじゃったじゃないですかぁ!」
部下のポッターの訴えに、オルガ・スミス隊長もこれは同意せざるを得ない。
「普通の人間の少女が、あの回転で突っ込む事自体、有り得ん事だ。それを承知で、あの男レイジーは激突させた......モンスターはかろうじて倒せたが、レイジーの責任は重すぎる!」
しかしバルゴンを倒せたのは、アデリアが繰り出した咄嗟の連携プレーだ。
そしてアデリアは、バニラアイスにMDを、背後から食らわせたのだ。
この余りの暴挙に、ハメリア合衆国オルガの怒りは治まらない。
「何故だ! あんな大砲のような大技を生身に! 肉体が粉々になると言うのに、あのアデリアと言う女は正気か!」
勿論、アデリアもハメリア合衆国も、バニラアイスがアンドロイドだとは知る由もない。それを知っているのは、ジョーだけなのだから。
「......まぁまぁオルガ隊長、以前にガッジーラを倒した時も、糞うさ......バニラの技を見ていた訳だし、ボクだって南友千葉拳の大技があるんだから_____さっき見たでしょ? だからあまり深く考えなくても......」
むぅ
「君はどうして、そんなに冷静でいられるんだ?」
ハメリア合衆国の情報部所属のジョーが、なぜ正体がばれていないのには秘密があった。
それは今、気を失っているルチアの常時発動型認識疎外魔法のお陰なのである。
無論ルチアには、それなりの理由をつけて納得させていて、ハメリア合衆国の5人には、ジョーの顔がエルフ種に見えているのだ。
そのジョーが何とか、その場を誤魔化そうと頑張ったのだが、これは更に事態を悪化させる事になってしまった。
「それでは理由にならん! あの可憐なバニラアイスちゃんはどこだ? それに30人はいるだろうあの美少女達は、どう説明するんだ?」
「あちゃー」
これに対して、レイジーが返答をしないと、話が長くなるのは明白だった。
「オルガ隊長、ちょっと待ってください。今はバニラアイスの行方を探します。話は後にしてください」
「......ふむ、その通りだ。しかし後でちゃんと説明して貰うからな!」
今まで、レイジー達とは和やかに過ごして来たが、ハメリア合衆国隊員達の瞳が険しくなっていく。
ところでレイジーがバニラアイスに組み込んだAi-myu96は、父である立木陽介の最高傑作で、レイジーはさらに改良を加えた愛着のあるアンドロイドだ。
そのバニラアイスを失う......レイジーの心は激しく動揺していた。
______レイジーは辺りを探した。kanna、farz、nikoもセンサーを駆使して探索したのだが、まるで反応が無い。
これが意味するのは、即ち物質の存在がないという事になる。
「まさか、バニラアイスが、バニラが......」
レイジーはそれに続く言葉を遮った。
「あの陽気なバニラアイスが______うぐっ 死ぬはずがない」
「御屋形様......」
いつもバニラアイスと争っていた桔梗も、今はかける言葉がなかった」
それはkanna、farz、niko、残留組も皆がそうだった。
「えっ? 糞ウサギが死んだの? アンドロイドなのに?」
ジョーが思わず口にしたアンドロイド。気絶しているルチアを除いて、それを聞き逃した者は居なかった。
ピク
初めて訊く<アンドロイド>と言う言葉に、アデリア、レイラン将軍、アエリア、バイソン達は首を傾げるばかりだ。
アンドロイドと言う言葉を理解出来るのは、この場ではハメリア合衆国隊員の5人だけだ。
「お前今、確かにアンドロイドと言ったな」
オルガ隊長の眉毛が跳ね上った。
「隊長、確かに我々は全員、訊きました」
「でも間違いなく人間だったよ、バニラアイスちゃんは」
ポッター達は、絶対に違うと言い切るのは、バニラアイスがとてもキュートで愛想が良く、好感を持っていたからだ。もっとも、バニースーツを来た美少女なんて、若いポッター達にはアイドル的存在なのだから。
「絶対に見つかるって!」
ポッターの叫びも空しく、バニラアイスは発見出来なかった。
...... ...... ......
「あちゃぁ~、星がたくさん見える!」
行方不明か、はたまた最悪の事態かとレイジーを心配させた当人は。
アデリアの最大パワーのMDを食らって、あっという間に惑星衛星軌道近くまで跳んでいた。
それほどMDの威力が凄まじかったのだ。
「アンドロイドだから、呼吸の心配はないんだけど、後は引力に引かれて......バニラちゃんは地上に真っ逆さまって、それ超まずいじゃん!」
この高度から落下すれば、大気の摩擦で鋼鉄だろうが赤熱して分解し燃え尽きる。
幸い、バニラアイスの生体アダマンタイト超合金は、ギリギリ融解しない。
しかし落下による加速度で、地上に激突すれば流石の超合金でも耐えられないだろう。
______視線を変えて、ここはエスタリカ王国の森の中。
ルルシア帝国の動向を監視中のアンドロイド達は、イライラが極限に達しようとしていた。
<保毛坂48>選抜12体の仮リーダー、スーリアは決意した。
それは御主人様の命令を無視する事である。
そんな事を単独で行えば、他の11体も黙ってはいられない。
だが、御主人様に命じられた以上、全員が無視するわけにもいかない。
「みんな、公平にじゃんけんで決めよう。ここからジェット・パックで聖母マリア様村まで跳ぶのよ。10体が残れば十分!」
それは確かにそうだ。エスタリカに残るのは、何も12体全員である必要はないのだ。
スーリアの提案に誰も反対する筈はなかった。むしろ爆発的な感情が炸裂、周りの空気が靄のように変化した。
「「「2体選出決定戦でいいのね」」」
「そう、恨みっこなしだからね!」
おおおぉぉぉ!
瞬時にじゃんけん戦闘モードに移行、ここに<じゃんけんバトルロワイヤル>が発動してしまった。
ジェット・パックを最高速度で飛ばせば、聖母マリア様村までなら10分とかからないだろう。しかしその場合、燃料をほぼ使い切る事になる。そしてその後は......。
奇しくもこのタイミングは、バラゴン攻撃の為にバニラアイスが準備運動をしている時と重なっていた。
「1.2と3とせ」
「さぁ、みんないくよぉ~」
「「「いざ、主様の元へ!」」」
「「「最初はグー じゃんけんポン!」」」
果たしてこのじゃんけんの結末は? そして勝利を掴んだラッキーな2体はいったい誰なのか!




