EP102 無敵なのか? 大怪獣バ バルゴン! 御主人様ぁ~Helpぅ!
______レイジー達が騎乗する四頭のワイバーンは、一路 偽聖母マリア様村を目指して飛ぶ。その距離は直線にしておよそ100km。
ワイバーンの持久力なら、問題はないとレイランはそう言いながら、餌の心配までしているのだ。
事態の深刻さは、私達のようにガッジーラの経験がなければ、それは無理と言うものだろう。
「モンスターを倒したら、御褒美にその肉をやれば? きっと喜ぶわよレイジー」
「悪いけど、それは倒してから考えるよ」
「あらら、自信がないの?」
......。
私はそれには答えず、あと何分で着くかの方が気がかりなのだ。
『以前、私達は偽聖母マリア様村から山の麓までは、ハメリア合衆国のローバー二台に分乗し、後は徒歩で山越えをした為に、随分と時間がかかってしまった』
しかし時速にして80kmで飛行出来るワイバーンなら、山脈を無視して一直線で村まで到達出来る。
しかし風防のないワイバーンでは風圧が強く、華奢で非力なレイジーはガタガタと震え出す始末だ。
ひぇ~
女のジョーでさえ耐えているのに、ただ一人情けない声を上げているレイジーは、バニラアイスを風よけにして落ちないよう、がっしりとバニラアイスの縊れた腰にしがみ付いているのである。
ひぃ~
「あらら、レイジーさんて、私の保護欲を刺激するのねぇ~、かわいい~」
一方バニラアイスは。
「あ~ん、ご主人様ぁ、そんなに強く抱きしめたらぁ~もう♡ 好きです♡」
「「なにぃぃ!!!」」
ギラァ~TE !(タマキン・エスケイプ)
南友千葉拳!
嫉妬したアデリアとジョーが必殺技を繰り出そうとしていた。
勿論、桔梗もRenoも面白くはない。
ジョーは単に威嚇のつもりだったのだが、アデリアは違った。
いくら風が凄かろうと、エルフのアデリアには丸聞こえだ。アデリアは殺すような視線で、バニラアイスに恐怖の<タマキン・エスケイプ>を放った。
当然、男でも女でもないアンドロイドのバニラアイスに、そんなスキルが効く筈もない。
「糞、やはり効果なしか!レイジーめ、そんな情けない声を出しやがって! それは妻のあたしの役目だぞ、糞うさぎぃ! さっさと交代しろ!」
並行して飛行するレイランも、その様子を忌々しく想いながらも、今は一刻も早く聖母マリア様村に到着しなければならないと思っている。到着まではまだ時間があるのだから。
そこで事態を余り理解していないレイランは、詳しい事情をアエリアに訊かずにはいられなかった。
「おいアエリアとやら、そのモンスターとは、どんな奴なんだ?」
アエリアの記憶では二足歩行の恐竜なのだが、なんの目的で現れたのかは誰にも分かっていない。
「ふむ、現れた理由は兎も角、それで前回はどうやって撃退した?」
アエリアは、ギルドの受付嬢ルチアの風魔法<ソアラ>と、アデリアのMD、バニラアイスの見た事もなかった必殺技<スクリュースピン・バニラちゃんアタック>で倒した事を口にした。
「なんとウサギ少女は、そんなふざけた技を? なにがバニラちゃんアタックだ......しかし面白くて可愛いじゃないか。わたしの魔法にも名付けてみよう」
「<スクリュースピン・バニラちゃんアタック>だなんて、わたしも驚いたんだって えぇ?」
『アデリアは兎も角、あの奇妙な恰好をしたウサギ少女は......人間とは思えないスキルを持っていると言うのか? ならば実力はSランク......有り得ん話だが、お団子頭と黒服メイドも要注意する必要がありそうだ。あの年増の女には、不思議と脅威を感じないのだが』
バニラアイス達アンドロイドは、冒険者ランクで言えばSSランク以上なのだ。生身のジョーはBランク程度で、Sランクのレイランが、脅威に感じなかったのも無理もない。
しかし年増のレイランが、ジョーの事を年増と呼ぶのはどうかと思うが、当のジョーが訊いたなら、恐らくランクに関係なく血を見る戦いに事になっただろう。
美少女三人に警戒しながらも、レイランがそう問うのは、自分の魔法がレイジーの役に立つかどうかであり、ここで役に立てば、レイジーの好感度を稼ぐ事が出来る。それにどうもアデリアの結婚が、嘘臭いと感じているのもある。
『アデリアはgisouだなんて言ってたからな。ふ、そうなればこのレイランが正妻に......これはモンスター退治に一肌も二肌も脱いで、スッポンポンになるのも吝かではない。これは愉快、愉快、アッははは』
______エスタリカ王国第三将軍レイラン・ウイドゥは攻撃魔法、マス防御魔法、ヒーラー部隊を要する攻防一体の大魔法部隊の将軍なのだ。
「攻撃も防御も完璧なわたしなら、いかなるモンスターでも敵ではない。大魔法一発で仕留めれば、きっとレイジーはわたしに惚れるに違いない......その後、惚れたレイジーと一発......いや三発、やっと結婚できる あはん♡」
「ちょっとレイラン将軍、ワイバーンの背中でなにクネクネしてるの?」
アエリアは雰囲気がおかしくなったレイランに、ピンと来るものがあった。
『まさか、将軍までレイジー様を! だけどまだ確証はないけど、そうなったら私の<デス・ストリングス>や<マリオネット・ダンシング>で始末するしかない』
二つの必殺技は、元Aランクアサシン アエリアが操る<極砕鋼線>の事だ。
レイランは本当に焦っていた。何しろ今まで出会った男など、碌でもない脳筋男の武力自慢ばかりで、それが嫌で婚期を逃していたのだ。
そのレイラン・ウイドゥ29歳は、初見で東方出身らしいやさ男でイケメンのレイジーを夫と認定し、勝手にロックオンしていたのである。
だがアデリアが自慢するニッケルの結婚指輪が、目の肥えたレイランには、どう見ても安物にしか見えず、おかしいと思っていた。
______所変わってレイジーが建設中の偽聖母マリア様村では、住人の全てと聖母マリア様参拝客が、ハメリア合衆国隊員五人とナイト・メア亭の大将バイソン、モーリンさんが娘のルルも手伝って、避難誘導している所だ。
ルルはけなげに、得意の短距離瞬間移動で、足の悪いお年寄り達を移動させている。
バイソンの大将は、怪力で数人を抱えながら退避を助けていた。
「あなた、私はあのモンスターに魔法をブチ込んだ方が」
「止めろモーリン、お前のAZDをここで放ったら、村の被害が大きくなるだけだ。今は退避するんだ」
「レイジーさんが、早く戻ってくれないと私達のナイト・メア亭が」
「そんなもん、また建てればいい!」
______kanna、niko、farzは先頭に立ち、あのモンスター相手に攻撃を仕掛けようとモンスターと対峙していた。
「いよいよ私の奥の手を出す時が来たわ」
保毛坂48はそれぞれに個性があり、武器もそれぞれが違う。これはレイジーの父、やはり天才の立木陽介の趣味からそうなった。
夫婦そろって妙なコスプレプレーが好きなのは、この際言わない方がいいだろう。
______キュイィィィン
kannaがそう言うや、kannaの両目がオレンジ色に変わった。
kannaの固有武器<光子力かなビーム>だ。
<光子力かなビーム>は、ハメリア合衆国のハンドレーザーガンより、遥かに高熱なビームで、それを住民達に目撃されるのは不味い。
丁度離れた墓場に避難させたのは不幸中の幸いで、これも偽聖母マリア様の御加護かもしれない。(単に偶然で、そんな馬鹿な話である)
______「kanna、あのモンスターは体に大きな刺が一杯あって、尻尾の先が大きな棍棒みたいになっている。あんなのデータにあるモンスターと違うよ」
「そうね固そうな刺だこと。じゃ体より頭を狙ってみる」
「わかった。先鋒はkannaに任せるから」
nikoとfarzはkannaの攻撃を記録しながら、弱点を見つけようとしていた。
ピィィィ
ジュゥァ
ギャオォォォン
kannaのビームはモンスターの眉間に命中したのだが、穴が少し開いただけで即死には至らない。
「うう、頭も固いかぁ」
次の瞬間、nikoが叫んだ。
「kanna、穴が再生してる!」
「でもさkannaのビームは、一万度はあるんだよね?」
驚くべき事に、鉄だろうとドロドロに溶けるビームに、このモンスターは耐えたのである。
farzは今記録した映像をバニラアイスと桔梗、Renoに送信し、受信したバニラアイスが、映像を空間投影してレイジーに見せた。
パア~
「げぇぇ、これは!」
それを見たレイジーの驚きは尋常ではなかった。
前回のガッジーラもそうだったが、これは日本の初期の怪獣映画に登場し、ガメラと戦った<バルゴン>に瓜二つだったのだ。
「SFの怪獣が?」
どうしてと言う疑問は、前回同様、今考えても仕方がない。
映像はkannaが放った<光子力かなビーム>が効かず、驚くべき超速再生までが映っていた。
=いいかよく訊けkanna、niko、farz、待機組の保毛坂48を総動員して、村を死守するんだ。気をつけろ、そいつの武器は冷凍ブレスだ!=
=そんな事まで分かるんですか! 主様流石です!=
レイジーもまた、日本の怪獣映画が好きで、父陽介とよく見たものだ。
<バルゴン>の吐く冷凍ブレスは、辺りを凍結させる。それが意味する事は、モーリンさんのAZDが効かないだろうと考えられた。
『うー、対抗策として、高熱で相殺しても意味はなさそうだ』
ならばどう対抗したらいいのか、レイジーは大いに悩む事になってしまった。
以前、レイジーがエイプ子爵に雇われた刺客に襲われた時、オリジナルスペルにして刺客最強の熱量を誇った、ヘルファイアー・ボールの強化版<爆炎魔法天地爆裂励起 >があった。
その魔法でさえ、効果があるかどうかは疑わしい。
レイジーは知る由もないが、<バルゴン>はガッジィーラが撃退されて、その弱点を補う強化モンスターだったのである。
この強烈なモンスター<バルゴン>で襲わせたのは、言うまでもなく、あの女αの仕業としか考えられない。
kannaに呼び出された<保毛坂48>の残留組も飛び出し、それぞれが固有の武器で応戦を開始した。
負けてはいられないと、nikoが繰り出したのは<超硬ドリルミサイル>だ。
nikoの肘関節がパカッと折れると、鋭い螺旋刃の付いたミサイルが発射され、高速回転しながらバルゴンに命中。
これも父、立木陽介がファンだったアニメ<マジンガーX>をパクった武器である。
「やったかな?」
しかし案の定、固いバルゴンの装甲を打ち破る事は出来なかった。
「わたしの必殺<超硬ドリルミサイル>が効いてない!」
今度はfarzが拳を握るとジャンプ一番、拳にプラズマエネルギーを纏わせて、バルゴンの頭部に一撃を加えた。
のだが______
______ガスゥゥ
と鈍い音はしたが、物理攻撃は殆ど無効化するような固さだ。
しかも<保毛坂48>の残留組35体の攻撃は、ことごとくダメージを与える事が出来ず、なす術のない重い空気が戦場に漂った。
「これでは撃つ手がないじゃない! ご主人様ぁ~Helpぅ」
それは、主様から死守せよと命じられたのに、それに応える事が出来なかった kannaの悲痛な叫びだった。
それは残留組<保毛坂48>35体も同じで、中には特攻して自爆すると言い出す者まで出たが、レイジーがそれを黙らせた。
=誰一人失う事は、この私が許さない!=
と。




