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EP101 悪夢再び急襲のガッジーラ? 聖母マリア様村 は大混乱


______「ケ、ケツクサイ殿、た、大変だぁ! ケ ケ ケッ クサァ」

血相を変えた男が駆け込む先は、見掛けは粗末なボロ小家の地下に掘られた空間だった。

男は地下へと続く階段の腐りかけた木板が抜けそうな事も気にせず、駆け降りていった。

 ダダ

  ダダ

 余りの興奮と焦りで、階段を踏み外しそうになるが、構ってはいられない。


 その先の地下空間には、旧ナチスドイツが開発したV1ロケットを真似た翼が付いたミサイルの製造ラインがあるが、ラインと言ってもとてもシンプルなものだ。


 ミサイルは、ルルシア帝国のシャトルの残りの燃料を流用する為、量産は出来ず、その結果未完成の20発が簡易なラインに並んでいる。その男は指示された通りに組み立てをする作業員である。


 未完成と言うのは、先端に爆裂魔石を仕込む事で完成する。その危険な魔石はブルーアが用意してくれる手筈となっていた。


 ライン脇の粗末な木製テーブルでは、ルルシア帝国の隊員達が温いエールを飲みながら、これからの作戦結果を妄想して、下品な笑い声と共に盛り上がっている。


「チィ、今日も冷えたエールは無いのかよ」

 ドミトリーがそう愚痴るが、誰もがそう思っている事だ。

「文句を言うなドミトリー」

「そうは言うがセルゲイ、それにここは飯がまずい。干し肉ばかりじゃ飽きるぜ」


 異世界では魔法で冷却すれば簡単に冷やす事が出来るが、生憎とここにはそんな魔法使いと料理人がいない。ナイトメア亭のモーリンなら、エールを冷やす事など児戯にも入らない初級魔法だ。


 さて彼等は作戦と言うより、もっぱらルルシア帝国を蹂躙した後、いかに己の欲望を満たすかで盛り上がっていた。

彼等の頭にあるのは、金と女と酒しかない。


「この前いいエルフを見たぞ。涎が出そうなボッキュン ボンだった」

酔ったドミトリーが嫌らしい話を口にし出した。

それを憂鬱そうに訊いているのは、ロマノフ=紅一点のナタリー・ダニーキだ。


「おいロマノフ、エスタリカ王国を乗っ取たら、おめぇは何をしたい?」

ひとり無言でいるロマノフに、酔った勢いで今度はセルゲイが絡んで来る。

「別に......ない」

「ふ、つまらん奴だぜ。なんでもやり放題なのによ」


 そんな質問をされようが、女のナタリーの願いは祖国ルルシアに戻りたいだけなのだ。

この特殊任務を終えて祖国に帰り、褒賞で家族に楽をさせたい。そんな願いも異世界から帰還するなど、もう不可能に違いない。


 その地下空間に大慌てで駆け込んだのは、ブルーアの手下でも下っ端で作業員のゾルだ。そんな光景を見て、ゾルは面白くもなく内心舌打ちをするのだった。


『チッ、畜生がまたかよ。毎日酒ばかり飲みやがっていい御身分なこった! だけど俺っちでは敵う相手じゃない。糞、ブルーアの奴、なんでこんな野郎共と』

そんな呪詛を吐くよりも、今は緊急事態なのだ。


______「うるさいぞゾル、いったい何事だ!」

副長ウラワジミーナが、機嫌悪そうに一喝する。

「騒々しい! せっかく盛り上がっているんだ」


 この頃になると、ルルシア帝国のタブレット型翻訳器も、Ai学習のお陰で割とスムーズな翻訳が出来るようになっている。アレクサイ達もカタコトで話せるようにはなったのだが、Aiに学習させる為にまだタブレットに喋らせているのだ。


『いつもあの妙な板から声がする。本当に気持ちが悪い奴等だぜ』


 一方、レイジーと言えば、缶バッチ型翻訳装置に頼る事が少なくなり、流暢に話せるまでになっていた。これはレイジーが希代の天才だと言う証拠でもある。



 あわわ アデ

  あわわ アデ


 と口をパクパクさせながら、ゾルの口からやっと言葉が出た。

「アデリア あのアデリアが来たんだ! それにバーモン・カットラー将軍まで一緒なんだぞ!」

 バーモンと言えばあのカレーではない。最初に潰す計画のルルシア帝国第四将軍である。そのワイバーン部隊にアジトを発見されたと言う事だ。


「バーモンが!? どうしてここが? それにアデリアとは誰だ?」

「へ? アデリアを知らないんですかい?」


 アレクサイ達には、アデリアがSランク冒険者などと言う素性も知らないが、バーモン将軍にアジトを発見された理由が分からなかった。

しかしそれが、バニラアイスが投げた金ダライの偶然の産物だったと知ったら、きっとそんな馬鹿なと大いに憤慨した事だろう。



______やがてバーモン将軍が騎乗するワイバーンと、助けられたアデリアが砂塵を巻き上げながら悠然と着地した。

金ダライを投げてアデリアを撃墜した責任上、バニラアイスと桔梗も仕方なく降りて来たのだが、本当のところはアデリアの生存確認なのだろう。


「おやおや? しぶとい。まだ生きてるじゃん」

バニラアイスが残念そうにそう言うと、桔梗もふんと鼻を鳴らす。

「詰めが甘かったな、バニラアイス」

アデリアのエルフ耳は、そんなバニラアイスと桔梗の声をしっかりと捉えていた。


「糞、あのうさ耳バニラめ! タライでこのあたしをど突くとは、レイジーの妻で美女であるあたしに嫉妬したか。あたしが超美女なのは理解するが残念だったな、例え落下しようがあたしのMD(マグナム・ドライヴ)を地上に放てば、衝撃波で楽に着地出来たのだ。馬鹿め」


 アデリアのそんな独り言を訊いたバーモン将軍は、はて?と思案する。


「......アデリアを落としたのは......あれは故意だったのか? うさ耳はあのボロ小屋が既に怪しいと分かっていた? まさかな」


 バーモン将軍は、あの妙な恰好をしたバニラアイスや、お団子頭、黒いメイドを、只者ではないと感じていた。

『となると、あのレイジーと言う男も........只者ではない事になる』


 バーモン将軍一人が、このボロ小屋が怪しいと思った訳ではないが、意外にもAi-myuシリーズは、それより重大な局面を感知していて、それどころではなくなっていたのだ。


「桔梗!」

「Reno!」

バニラアイスが叫んだ。

 それは______




______いよいよルルシア帝国のアジトを急襲かと思われたその時。

偽聖母マリア様村から、緊急レイジー通信が入ったのだ。


=主様!=

通信の相手は留守番でぶー垂れていたkannaだ。

=kannaか 何事だい?=

=ガッジーラ? です。奴がまた現れて絶賛村を、村を襲っています!=

=なに! なんで? なんでだよ=


 ガッジーラとは、異世界転移して間もない私が、偽聖母マリア様で金儲けを企んでいた頃の話で、バニラアイスとルチア、アデリアのお陰で撃退出来たあの謎モンスターである。


 ______こちらは大混乱中の偽聖母マリア様村。


 「オルガ隊長! やはりハンドレーザーガンは効きません!」

 ハメリア部隊副長トーラスが隊長オルガに向かって叫ぶ。


「また来たのか、いったいどうして?! トーラス副長、我々に出来る事は住民を避難させる事だけだ」

 ハッ

「ジョニー、ビーノ、ハリー、訊いたな! 急げ!」

「「「ラジャー」」」

ハメリア合衆国の5人は、聖母マリア様の墓地へと避難誘導を開始した。


______何故墓地だったのか? それはきっと聖母マリア様の起こす奇跡を信じたのかもしれない。実際、ガッジーラ?  の目的が何なのか、前回同様に分かっていない。



 =で、今は誰が戦っている?=

=ハメリア合衆国が、ハンドレーザーガンで応戦していますが、まるで効いていません。これから我々<居残り組!>が応戦します!=

kannaは<居残り組>を強調した。きっとレイジーに留守番をさせられた恨みからだろう。


=よし分かった。私達もこれからワイバーンで向かうから、それまで村を死守する事!=

=了=


 通信が終わるや、レイジーが地上に降りたバーモン将軍とアデリアに向かって叫んだ。

「バーモン将軍、私達はこれから急遽、私の村に戻ります。悪いけどこのワイバーンを借ります」


「おいおい、いきなりなんだ? あのボロ小屋が怪しいと言うのに調べんのか?」


 バーモン将軍やレイラン将軍も、ここまで来てどうした事かと訝るのは当然だろう。


「私の村がモンスターに襲われていて、超緊急事態で危険が危ないのです。では」

「待てレイジー! それなら妻のあたしを置いて行くとは、あまりにも酷いではないか!」

「......あ、そうでした」


「なにが あ そうでしただ! 貴様ぁ!」

ふんと鼻を鳴らした桔梗が、仕方なく激高したアデリアを拾いワイバーンに乗せようとした時。

「......この偽装結婚野郎が」

 グッ

 ワイバーンに乗ろうとするアデリアが、言い返せずに桔梗を睨みつけている。


 バサ

  バサァ

   クエー

    ギャー


 レイジーとバニラアイス組、桔梗とアデリア組、Renoとジョー組のワイバーンが、聖母マリア様村に向かって回頭させる。

ワイバーンのスピードなら、ここから恐らく一時間で到着出来るだろう。

レイジー達は急ぎ飛び去ろうと、ワイバーンの首をカツンと蹴った。


「ちょ、あたしは?」

慌てた声を出したのはアエリアだ。

アエリアはレイラン将軍の後ろに乗っていて、ここに取り残されると思ったのだろう。


「ふう仕方がない。安心しろ。ならばこの第三軍団将軍レイラン・ウイドゥも参るとしよう」

レイランはこれ幸いと、レイジーの聖母マリア様村まで同行し、レイジーに恩を売るつもりなのだ。

「モンスターなら、私の攻撃魔法が役に立つからな」


 現在、ルルシア帝国を捜索中の<保毛坂48>選抜12体は、エスタリカ王国将軍達に何かあってはと想定して、私が現場待機としたのだが......。

スーリア、フォーリン、十蔵(女性型 桔梗配下)郁恵(Renoの補佐)ニャーゴ(Renoの補佐)、唐十郎(女性型 桔梗配下)、ロミー、トゥーレ、イータ、シオン、ローサ、イアの12体は揃って愕然と肩を落とし呪怨を吐き出す。しかし今は主が大切にしている聖母マリア様村の危機なのだ。


「御褒美のチューが......お預けなの」

当のレイジーは、そんな約束をしていないのだが、<保毛坂48>選抜12体のやる気が、一気にまたHP1となったのは言うまでもなかった。


______さて残されたのはバーモン将軍のみになってしまった。

「レイランまで行きやがって。なんだあいつは! まぁ場所は分かった。流石に俺一人で探索するのは危険すぎるだろう。ここは一端仕切り直して、部下と合流するしかないな」


 そう言うと、バーモン将軍が騎乗するワイバーンは、怪しい筈のボロ小屋を後にして飛び立ったのだった。


 ボロ小屋の隙間から覗いていたルルシア帝国の隊員達は、なにが起きたかを知る由もない。

「奴等、なぜ撤退した?」

 アレクサイ隊長の疑問に、副長ウラワジミーナが答えた。

「兎に角、未完成のミサイルをローバーに積み込んで、アジトを変更するしかないですな」

「賢明な判断だ。ウラワジミーナ副長」


 レイジー達の急な撤退により、ルルシア帝国が暫く時間が稼げた事だけは確かで、本当ならばルルシア帝国の野望は、ここで詰んでいた筈なのだ。

それはある意味、ルルシア帝国に味方する何者かの介入があったからだろうか?





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