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数奇な人生

 舌舐めずりをし、異常な興奮を見せるゴブリンキング。その圧倒的な絶望感は全てを諦めるのに十分な威力を誇っていた。


 自身はこの後、間も無く犯される。


 泣こうが叫ぼうが、自我を失おうが。その命尽きる日まで只管(ひたすら)に子を産まされる。口に食べ物を詰められ無理やり延命される。死にたくても死なせてもらえない、ただ子を産まされ続ける人生。ゴブリンに敗北すると言う事は、そう言う事なのだ。


 ゴブリンキングは、ゆっくりと、ゆっくりと、立ち尽くすラヴェルネの方へと歩み寄る。


 絶望が、恐怖が、痛みが、一歩、一歩と近付いてくる。


「嫌……こんなの嫌よ……」


 どれだけ目を逸らそうと、仲間は既に地に臥せている。

 衣服を剥がれ、泣き叫んでいる。


「イヤァァァァァァァァァァァ!!!!」

「ヤダよヤダよやめてよやめてよぉぉぉぉ!!!!」

「ミィ……セシリー……ルーリス……」


 か細い声で、信頼する仲間の名を呼ぶラヴェルネ。

 だが彼女らは既に、ゴブリンの手に堕ちているのだ。

 懺悔する様にその名を溢せども、助ける事叶わず。

 ただ立ち尽くした。


 もしも僅かでも助かる可能性があるとしたら、それはきっと彼女のギルドメイトでは無く、


 このダンジョンで偶然出会った、【彼】の存在の他には居らず、


「ら、ライル……」


 そんな【彼】の名を縋る様に口にした、まさにその瞬間ーー


「そこで僕の名前が出てくるのは実に感慨深い」


 そこには居る筈の無い、先刻別れた【ライル】の姿が。


「嘘……でしょ……」

「僕が君たちを守る事がそんなに不思議かい? 余り侮らないで貰いたいね。未熟な身の上ではあるけど、僅かばかりの恩返しに馳せ参じた次第さ」



 そう、これは彼が近く訪れる未来で突破しなければならない困難の一つであり、その数奇な人生の一部に他ならない。

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