第七話 力強き父親達の背中を目指して
申し訳ありません…
(母は女将さんに頭を深々と下げていました。夜も遅いと言う事で、今夜はお座敷で一夜を過ごさせてくれることになりました。女将さんとおじさまは笑みを浮かべて、快諾して下さいました)
澪ちゃんの娘さんと奥さんなら、家族も同然。ゆっくりして行きなさい…
(私も母同様にお二人にお礼を込めて、お辞儀をしました。景さん達も同じく残る事になりました。その途端に景さんはお酒を注文し始めていました。それを傍で注意する凛さんの姿は、すっかり景さんの奥様といった立ち振る舞いを見せていました。そして駿兄さんは、この二人のやり取りを呆れた感じで横目で見ながら箸を煮物料理に伸ばしていました)
あれ…
(急な眠気に襲われると、私は手で口を隠しながら欠伸をし始めていました。そして脳裏に見た事も経験もした事のない映像が見え始めて来ます。そして私は母達にお辞儀をしてから、お座敷で毛布にくるまって目を閉じ始めます)
≪……助けて……≫
(綺麗な森の中が火に包まれていました。黒い翼を持った人達が、精霊の子達を次々と…そんな中で二人の白い翼を持った天使二人組が、物凄い形相で集落に駆け込んで来ました。一人の天使さんは、生き残った精霊達の子達を保護し始めていました。そしてもう一人の天使さんは、黒い翼の人達を引き連れて森の奥地に消えて行きました)
…なに…これ…私こんなの知らない…
(私の呟きで映像は終わると、精霊達の子の一人が語りかけて来てくれました)
≪…たぶん、それ私達の記憶…遠い昔にあった、澪も思い出したくないっと言っていた記憶です。麗華の腕の中で眠る、エメーリヤは澪を父と慕っている子です。さっきの映像に見えていたのは、澪とその相棒のお方です…≫
(ようやく理解出来ました。この映像が、この子達が父に会いに来た理由という事を…、そして、エメーリヤと呼ばれるこの子が精霊達の中で一番父を慕っている、本当の親子の様な存在なのだと理解出来ました)
ありがとう……ねぇ、私ね?あなた達と一緒に踊りたいのだけど、いいかしら…亡くなった精霊さん達と新しい一歩を踏み出す、皆に思いを込めてね…一緒に踊ってくれる?
(私の問い掛けに、眠っていた精霊の子達は元気よく、お返事を返して来てくれました。それが嬉しくて、私は胸元にいるエメーリヤに視線を向け、笑顔を見せてから母と同じ様に力強く抱きしめました)
お父さん、私、前に進むよ…この子達にお父さんの事を聞いて、わかったもの…お父さんは決して立ち止まらない人なんだってね…だから必ず追い付いて見せるからね!!ねぇ、エメーリヤちゃん…
(父の事をパパと呼ぶ子は片手を天井に力強く向けて挨拶をして来てくれました)
第七話書き終えました。