第六話 愛する者達への言葉
(精霊の子達は父に会いに来たと言っていました。何でも昔、助けてもらったからとその理由をいくら聞いても、精霊の子達は詳細を教えてくれませんでした。そして月日は流れ、私は、大学生になってからよりいっそうフィギュアスケートに精一杯取り組んでいました。実は今回の大会に出場が決定した時に、何年ぶりかに精霊達から声をかけられていました)
…ねぇ、お母さんもお父さんみたく、霊の存在が見えるの?
(母の看病をしてもらっていた凛さんには、景さん達の元で女将さんの料理を食べてもらっていました。お父さんが帰って来てから正式に籍と式を上げたいと言う、二人の意向が強かった為です。そして私の問い掛けに、母は静かに首を横に振って答えてくれました)
…あの人は…極度の霊媒体質でね。見たくない者も、聞きたくない声まで拾ってしまう人なの…私は、お父さんみたく…霊の姿はハッキリとは見えないわ…でも、貴女の傍にいる可愛らしい子達が、ずっと貴女に寄り添っているのは分かっていたわよ…ふふっ…
(母の言葉に、私は精霊の子の事を話さずにいました。信じてもらえないと思っていたからです。昔、学校で話した時は、散々馬鹿にされました。でも、父が私の演技を見に来ていると教えてくれたのは、間違いなくあの子達の波長でした)
あの時、この子達にお父さんが見に来ているって教えてもらったの…
(母は優しい笑みを浮かべると、ゆっくり起き上がり毛布を膝にかけながら、私に語りかけます。その言葉は、私と精霊の子達に向けられていました)
…あの人は元気そうだった…?
(母の言葉の後に、ずっと沈黙を貫いていた精霊の子達は、静かに語り始めてくれました)
≪…澪は…元気だったよ…でも心の中は寂しそうだった。でも澪は諦めたり投げ出したりしない…私達…昔々、ずっと昔に今の澪が…澪になる前に…時に助けてもらったの…≫
(私と母は、静かに精霊達の言葉に耳を傾けていました。要約すると、お父さんの前世の時の事を言っているものだと思っていると、精霊達は首を横に振って、私の考えている事を否定して来ました)
≪前世?違う…菫ママは知っているもん…澪パパから霊界の家族の事を聞いているもん…その霊界で大昔に戦争があったの…その時に私達は澪パパに助けてもらったの。その後、霊界の家族の皆と一緒に暮らしていたんだけど、澪パパがいなくなったから会いに来たの…澪パパの娘の麗華に…。私もパパの娘だもん…≫
(母は優しく笑みを浮かべて、精霊の子を胸元に抱き寄せて、泣き始める子達をあやし始めてくれていました。その中の一人の子が、私に語りかけて来てくれました)
≪麗華、西野家に恨みを持ったら…麗華もあの欲塗れの人達みたくなっちゃうよ、澪が良く言っていたよ?復讐なんてつまらない事を考えるより、楽しい事に時間を有した方が世界も広く見えるから…って…≫
(私の膝の上に座っていた精霊の子の言葉を聞いた私は、父の考えと言葉を聞いて、天河村と東雲家のお屋敷を取り戻す事だけを考えていたけど、それらが父の言葉を聞いてから何故か小さく見えて来てしまいました。私は私の世界を持って広く歩めばいいんだと、父から言われている様な気がしました。母は精霊の子をあやしながら、私の表情を見て何故かほっとした様な表情をしていました)
第六話書き終えました。