第三話 真実の扉が垣間見える時
…ここにお父さんがいるんですか?…
(会場を後にした私達は、その日の夜のうちに駿兄さんのお父さん、星川景さんと合流してお父さんの住まいの前に訪れていました。部屋の中は明りが灯されていました。隣にいる母は、十数年振りに会う父との再会に緊張している様でした。そんな私達を代表して、景さんがアパートのチャイムを鳴らし始めます。このアパートは、路地の奥まった場所に建てられていた、古いアパートでした)
…どちらさん?…おたくら…
(部屋の中から現れたのは、父とは全く似ていない、別人が住んでいました。その住人に、景さんが事情を聴き始めると、前の住人の事は知らないとの事でした。でも、部屋の中から、確かに父が住んでいた痕跡の様な雰囲気を感じられました)
夜分に失礼致しました…帰ろう…
(景さんは住人の方に頭を下げると、表通りに停めた車の元に向かうと、車内からは母の親友の北条凛さんが出迎えてくれました)
どうだったの?澪さんは?…
(凛さんの問い掛けに景さんは首を横に振っていました。私はお母さんの背中を支えながら、車に乗り込もうとした時でした。私達の近くを一台の高級車が通り過ぎます。それに乗っていたのは、お父さんを天河村から追いやった張本人、西野貴とその両親、西野菜美と西野柾でした。その三人の乗る車が私達の前を通り過ぎたと思うと、前方で車が停まり、一人の男性が降りて来ました)
これは懐かしい…菫ではないか…あんな男とさっさと離婚して俺の元に来れば…東雲家の屋敷も元通りになると言うものを…
(貴は母の傍によって行くと顔に触れようとしました。その時に私は驚きました。母が西野貴の手を叩き落とすと、力強く貴に語りかけました)
ふざけないで!!私はあの人の、南雲澪の妻よ!!これからもね!!…
(母の言動に貴は後ずさりします。その隙に景さんと駿兄さんはお母さんを守る様に立ってくれました。そして凛さんは、母の身体を抱きしめてくれていました。すると、抑え込んでいた感情が溢れた様に、お母さんは膝から崩れ落ちて、凛さんの胸元で泣き叫び始めます)
帰って下さい!!私達の前から…
(景さんと凛さんが母の傍に寄り添ってくれます。その間に、私と駿兄さんは西野貴の目の前に立つと、睨み付けながら語りかけました。その男に語りかける時に、私も抑え込んでいた感情が溢れ、泣き始め心の中で父に語りかけます)
……どこにいるの…お父さん…
(そんな私達の姿をあざ笑うように、西野家の者達は車で立ち去って行きました。そんな私達を一人の老婆が店内から見守っていました)
第三話書き終えました。