第一話 優美な輝きを秘めた精霊達の舞
(あの夜の出来事から3日が経過していました。私達は自分達が出来る精一杯の事をやろうと決めました。今の私達がお父さんの元に行っても、きっと、帰れ!!と追い返されるのが目に見えていたからです。だからこそ私達は、お父さんの事を一度忘れて、自らが今すべき最善の道を歩む事にしました)
ねぇ、エメーリヤちゃん?あなた達の高さまで私は飛べるかしらね…
(スケートリンクの上で練習を行いながら、私の周りを数多くの精霊達が舞い踊り始めていました。その中の一人、お父さんのもう一人の娘、エメーリヤに私は視線を向けてジャンプを行います。空に舞う白鳥の様に、大きな翼を両手いっぱいに広げて、あの子達の傍に近寄りたかった。だからです。私達が知らないお父さんの事を知っている。その精霊達に私は近付きたくて、滅茶苦茶な演技を行ってしまいました。遠くで佐伯コーチの怒声が聞こえた気がしました)
東雲!!着地の姿勢に入れ!!…
(このままいつまでも飛んでいれば、あの子達の傍に近寄れると思っていました。その時に、精霊達の悲しい声が聞こえて気がしました)
≪麗華…怪我したら…澪…悲しむ…≫
(その言葉とエメーリヤの悲しい表情を見た私は、回転していました。軸足を氷上の方向に向け始める、その時に足首を捻って氷上の上に転んでしまいました。こんな失敗は久し振り、と、立ち上がろうとしましたが、私は転倒して上手く立てませんでした)
あれ…おかしいな…
(精霊達は心配した表情で、私の元に駆け寄って来ました。そんな精霊達の中でエメーリヤは私の胸元に飛び込んでくると、声を出して泣き始めます。そして私の傍には、鬼の形相の佐伯コーチが立っていました)
この馬鹿が!!お前、何考えて滑っていた…父親の幻影でも見ていたのか?…この3日間練習に熱心になっていたから感心はしていたのだがな……少し頭を冷やしてこい!!おい…誰かこいつを医務室に連れて行ってやれ!!
(大学生の友人に私は肩を抱かれて、スケートリンクから外に連れ出されました。そして医務室に連れて行ってもらい、診てもらった結果3週間の捻挫と診断されました。その間はスケートも禁止と、固く言われてしまいました)
気晴らしに旅行でも行ってきたら?最近、麗華ずっと思いつめた表情していたよ…
(そう言って来てくれるのは大学生になった最初の日に声をかけて来てくれた、辻井早香でした。彼女は元気で活気に溢れていました。私の良き理解者でもあります。父の事も彼女には相談していました)
うん、行きたい所があるの…少し気分転換しに行ってくるね…ごめんね…早香…
(謝罪すると、彼女は笑みを浮かべながら私の背中を大きく叩いて来ました。そして精霊達は、近くでお菓子を仲良く食べていました)
第一話を書き終えました