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ありきたりな物語に花束を  作者: 梅木しぐれ
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近衛兵の後悔-4

アンポス村 宿屋


 あの後、食事処でのやり取りが夢だったかのようにダンは普段通りの態度でユーリに剣の指導をしていた。むしろ、ユーリの方が気になって普段通りに振舞えていなかった。それからほどなく夜になったので鍛錬を止め、宿屋で晩御飯を食べ、おやすみの挨拶をし、それぞれ借りた部屋に入っていた。が、しかしユーリの頭の中には昼間のできことが、ずっと居座っていた。

 ——気になる。ものすごく気になる。

 気になって仕方がないが、旅を始めて数日の間柄に話すとは思えない。自分だったら絶対に話さない、むしろ話したくないから聞くに聞けないでいた。隣の部屋にいるダンのことを考えると眠たくなるどころか、目が覚めるばかりだ。

 ——やっぱり、聞こう!気になって夜も眠れない!

 決意を決めたユーリは、勢いが大事だ!と言わんばかりに扉を開けた。その瞬間≪ゴンッ!≫という鈍い音が廊下に響いた。

「~~~~~~~~っ」

「あ……」

 扉の前には、おでこを抑えてしゃがみこむダンがいた。

「ごめん!!!!」

 この日、一番大きな声が宿屋に響いた。



 ダンを部屋に招き、備え付けの椅子に座らせ、ユーリはベッドに座った。小目に座るダンのおでこは赤くなっていて痛々しかった。どれだけの勢いで扉を開けたのかが一目でわかるそれに、ユーリは目を逸らした。

「えっと、こんな夜遅くにどうしたの?」

「その、なんだ……昼間のことを随分と気にしていたようだからな」

 はは……とユーリは気まずそうに頬をかいた。

「昼間も思ったが、お前は正直なやつだな」

 いいと思うぞとダンはユーリに微笑んだ。

 ユーリはその顔を見て無意識に緊張していたのか、肩の力が抜けたのがわかった。そして先ほど決意したように口を開いた。

「それで、さっきの人は誰なの?ダンの知り合いなんだよね?」

「あぁ、あいつはクリスといって、俺の古くからの友人だ」

「喧嘩でもしたの?」

「喧嘩か……そんないいものじゃないさ、私が勝手に八つ当たりをして意地を張って謝れないでいるだけだ」

 ダンは自嘲するかのように言葉を零した。

「……二人の間に何があったの?」

 ダンは短く息を吐いて、ゆっくりと懺悔をするように言葉を紡ぎ始めた。



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