終結-2
二人は1秒でも、1センチでも早く隙間埋めるように走る。リリーが伸ばした腕をユーリが掴み、その小さな体を自身の腕の中に閉じ込めた。
モールトが現れたあの時、リリーが死んでしまったんじゃないか?という考えが一瞬頭をよぎった。怖かった。死んでしまったのではないかと、魔王を倒すのが遅かったのではないのかと、不安に押しつぶされて泣き出してしまいそうであった。しかし不安をすくい上げるように煌めいた赤色にユーリは涙を溢す。
「生きててよかった……!」
震えた声にリリーは笑いながら「アタシが死ぬわけないじゃない」と明るい声でユーリを励ました。リリーの言葉にユーリは笑って自分の腕の中から解放した。
二人はダン、ロイ、ミレイのもとへ歩き、生きていることを喜び合った。
「あ!」
ユーリが声を上げたのを、三人は不思議な顔をして見た。
「どうしたんだ?」
ダンの言葉にユーリは、首元から何かを取り出した。
「これ!」
ユーリが取り出したのはロケットであった。
「……アタシが渡したやつ」
「そう!リリーが俺にくれたやつ!」
ユーリは興奮気味にリリーの言葉を肯定した。リリーは突然テンションの上がったユーリに怪訝な顔を向ける。
「このロケットが俺を守ってくれたんだよ!!」
「そうなのですか」
ユーリの言葉にミレイは興味深さそうにロケットを見る。ダンはユーリの発言に黙ったままのリリーを見やる。それからちらりとユーリを見れば、ミレイと盛り上がっているではないか。ダンは肩をすくめ、少女の耳が赤く染まっているのを見て見ぬふりをした。
「だから、ありがとう!リリー!」
突然のお礼の言葉にリリーは驚いて「どういたしまして!!!」と叫ぶ。ミレイはリリーの反応に思うところがあったのは口元がにやけている。気づかぬは本人ばかりである。
「……うるさい」
ミレイに抱かれているロイが不愉快と言わんばかりに言葉を溢す。
「あ、アンタねぇ……!」
眉をぴくぴくと動かすリリーに、ダンは肩に手を置きながら「まぁ、落ち着け」と声をかけた。
——みんな、生きてる……
誰一人欠けることなく、もう一度集まれた現実に自然を笑顔があふれる。
それは突然起きた。
「ヴァイン!!!」
リリーの叫びとともに、耳を劈くような轟音。4人を隠すように、守るように緑色の蔓が生えていく。音の発生源に目を向ければ緑色に覆われる視界の隙間から赤く燃え、灰色の煙を勢いよく上げる城が見えた。それから凄まじい衝撃波が蔓を襲う。
少し経ち衝撃波が止んだ。シュルシュルと蔓は地中へと戻っていく。開けた視界では、あの美しい城は崩れ、跡形もない。五人は呆然と城がはったはずの空間をぼんやりと見つめる。
ミレイに抱かれたままのロイは「……もう帰ろう」と呟いた。四人はロイの言葉に頷き背を向けた。
「じゃあ、みんなで帰ろう!」
空気を変えるように明るく振る舞うユーリに合わせるように、みんな声を出してその一歩を踏み出した。
ミレイの瞳からぽろりとこぼれた涙は空気に溶けて消えた。




