終結-1
魔王の言葉を信じて黒い穴をくぐったユーリが最初に目に映したのは———
「ダンっ!!!!!」
ダンはユーリの叫びに応えるようにニカッと笑いながら右手を大きく振った。ユーリはダンの胸に飛び込んだ。感じるダンの温度に鼻がツンと痛くなり、背中に回した腕の震えを隠すように力を入れた。
「はっはっはっ!どうしたユーリ?俺が死んだと思っていたのか?」
豪快な笑い声にユーリは首を横に動かす。ダンはそんなユーリの姿に優しく笑い右手で頭をポンポンと撫ぜ、右手でユーリを抱きしめ返した。
「俺は生きてる——ユーリ、よく生きて帰ってきてくれた」
「ダンも、生きてて、くれてありがとう!」
二人はもう一度腕に力を入れてから体を離した。そこでユーリは気付いてしまった。ダンの左腕が肘から下が無くなっていることに。目を見開いて驚くユーリにダンは笑いながら「肉を切らせて骨を断つってな」となんてことないように言った。
ユーリは口を開いた時に黒い穴が出現した。その穴からは女性が男性を横抱きにしながらゆっくりと歩いて出てきた。
「ロ、ロイくん!!!??」
横抱きにされて眠っているのがロイで、ロイを横抱きにしながら優雅に歩いているのが教会で見たロイの姉——ミレイ・ターナーであった。
「ロイくんは眠っているだけです。安心してください」
にこやかに笑うミレイに、ユーリは安堵の溜息を吐く。
——ロイくん、お姉さんのこと殺さなかったんだ。
姉の願いであれば殺すと言っていた少年は、穏やかな寝息を立てて姉の腕の中で眠っている。この結果はロイの幸せの形なのだろう。ユーリはロイの11年という長い月日がこれらか先の人生で報われることをささやかながらも祈った。
あと一人。あの赤髪の少女が姿を現さない。
ユーリは不安な気持ちを打ち払うように空を見上げた。この場所に来たときは宝石箱の中の宝石のように光り輝いていた星は眠りについていた。そして空は薄紫色に染まり、月は白く薄く消えてしまいそうであった。
——夜が明ける
薄紫色の空が赤、橙の色が混じりだした。そして白い光が世界を照らす。あまりの眩しさにユーリは目を細める。世界はキラリと光を反射し輝いている。
ユーリの指先がピクリと動いた。
白い光の中で煌めく赤色を見つけた。
ユーリの足が一歩、また一歩と進んでいく。
ダンとミレイの戸惑いの声なんて聞こえず、その赤色から目が離せない。
気づけば駆け出していた。
傷づいた体はずきずきと悲鳴を上げ、視界が歪む。そして大きく息を吸って——
「リリーっ!!!!」
ユーリの叫びに赤色はさらりと揺れた。顔を上げた少女は——
「ユーリっ!!!!」




