最後の戦い:一般人-4
フローリアライトは魔王の腹部を貫いた。
「がはっ……!」
魔王は口から血を吐き出した。カランコロンと魔王が握っていた柄が床へと転がった。
「魔王様!!!」
女の声が響いた。
聞いたことがない声だ。どこか馬鹿にしたような、軽蔑するような声を混ぜた声ではなく、迷子の子どもが親を探して泣き叫んでいるような悲痛な声だ。聞いているこちらの心が重く辛く切り裂かれるようである。
ユーリはずるり、とフローリアライトを魔王から引き抜き後ろへ下がった。それは突然現れた女への遠慮もあったが、手が震え目の前の現実から——人を殺した——目を背いてしまいたかったからである。
女——モールトの服は燃えたのか焼け焦げ、胸部は血で染まっている。しかし雪のような肌の美しさに変わりはなかった。モールトは膝から崩れた魔王を抱き留め、魔王の頭を腕に抱きながらペタリと床に座った。魔王の腹部から血がどくどくと溢れモールトの服を、肌を赤く染めていく。
魔王は震える腕を上げくるりと手首を一度だけ回す。するとユーリの横に黒い穴が出現した。
「そこから外に、出ることができます」
魔王の言葉がユーリの耳を揺らす。ユーリは間抜けな声を出したが、構っている暇なく魔王は言葉を続ける。
「あなたのお仲間のそばでも発動しています……きっと外で会えると思います」
言い終わると同時に魔王は口から血を吐いた。その姿にユーリは手を伸ばすが、モールトが「早く行ってくださいませ」とぴしゃりと近づくことを拒否したため、ぎこちなく手は身体の横に戻った。
「……ありがとう」
言いたいこと、聞きたいことがたくさんあったがすべてを飲み込んで、ユーリは魔王にお礼の言葉だけ置いて黒い穴に入って消えた。




