最後の戦い:一般人-3
「私を殺さないと外の兵士が死にますよ」
その言葉にあの大きな背中を思いだす。
「私を殺さないと赤髪の女性が死にますよ」
その言葉に死なせてほしいと泣いた少女を思いだす。
「私を殺さないと教会の子どもが死にますよ」
その言葉に己の幸せについて考える少年を思いだす。
——ああ、ダメだ。死んでほしくない、
自分が生まれた世界で死んで、神様の手引きにより物語でよくある異世界転生をした。王様、ミーヤ様、ダン、クリスさん、リリー、神父さん、ロッタさん、ロイ、ミレイさん、そしてフローリア様。
数多の出会い、数多の別れ。
——死なせるわけにはいかない……!
「私を殺さないとあなたも死にますよ」
——あぁ、俺もまた死にたくなんかない!
ただの青空に目の奥が熱く、痛くなった。
ここに来る前にいた世界では空なんて視界に入らなかった。
人との関わりが鼓動を早くした。
ここに来る前にいた世界では人との関りが呼吸を止めた。
死の手前で膝が笑っている。
ここに来る前にいた世界では死ぬことに何も感じなかった。
この世界で体験した全てを思いだす。
ユーリは叫ぶ。
腹の底から叫ぶ。
喉が張り裂けてしまうことなど、
傷口から血がとめどなく溢れることを厭わず叫ぶ。
真っ直ぐ魔王のもとへ走る。
策なんてない。
「甘いですよ」
魔王はユーリの左胸——肋骨の隙間を通すために刀身を横に突き刺した。
「なっ!?」
その切っ先がユーリの左胸に触れたとき、ピシリッと音を立て刀身が砕けた。魔王が目を見開き驚いたのも瞬きのような一瞬で、距離を取ろうと後ろへジャンプをしたが——
一歩
たった一歩だけユーリが速かった。




