最後の戦い:魔術師-8
リリーはゆっくりと手を後ろにまわし、忘れていた物を握りしめた。
「わ……たの……だ……よ」
何かを呟いたリリーに対して、モールトはリリーの近くにしゃがみこんだ。
「これで、最後ですわ。彼らに遺していく言葉は、」
ありますか?と続くはずだったモールトの言葉は「ごふっ……」という意味を持たない言葉と、血が代わりに出た。
リリーから視線を外し、そのまま自身の身体を見れば胸にナイフが刺さっていた。
「……………………はい?」
困惑するモールトを置いていくように、血は止まることなく溢れていく。
「渡されてたのを思い出したのよ」
モールトに胸に刺さっているナイフは、いつかロイが護身用としてリリーに渡していたナイフだ。当時はロイに対して怒りがあったが、まさか本当に使う日が来るとは思いもしなかった。リリーはこの戦いが終わったら感謝をロイに必ず伝えようと思った。
こんな時でも死にたくない、死ねない、生きていたい理由が積み重なっていくことに、リリーは思わず苦笑した。
「何を笑っているのですか?」
モールトの低い声が、リリーの鼓膜を揺らす。
「別になんでもないわ」
リリーの返答にモールトは、不愉快さを隠すことなく眉を顰めた。リリーは気にすることはなく、モールトの腕を掴んだ。
「……なんです、この腕は」
「魔法が使えるのは魔力がある人間。使える魔法は本人の生きてきた経験と願いによるもの」
「それが、」
「……アタシにだってあるのよ」
「! 離しなさい!!」
モールトの叫びと同時に、リリーは囁いた。
「ステーク」




