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ありきたりな物語に花束を  作者: 梅木しぐれ
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最後の戦い:魔術師-1



 ユーリたちはダンのおかげで、後続に追われることなく無事に城の中へと入ることができた。城の中は掃除が行き届いているのか、清潔で蜘蛛の巣一つない。

「中もちゃんと綺麗ね」

「そうだね、こんな状況じゃなかったら鑑賞したいぐらいだよ」

「……ねーちゃんが、ちゃんと綺麗な場所で生活していて安心した」

「アンタ……こんな時まで……はぁ」

 ロイの言葉にリリーは呆れたような顔をして、ユーリは苦笑いをしている。

 城の中を走り進めた三人は広い場所に出た。

 そこはまるでダンスホールのように広い場所で、天井から吊るされたシャンデリアは、ユーがいた世界にあった照明器具のような白い光ではなく、蠟燭の温かな火の色が天井から注がれて室内は淡いオレンジ色に染まっていた。貴族が夜な夜な集まって舞踏会をしているような雰囲気が漂っている。それと扉は合計で三つあり。入ってきた扉、左に一つ、奥にもう一つ。右側はバルコニーのようだ。

「みなさま、お待ちしておりましたわ」

 どこか馬鹿にしたような、軽蔑するような声を混ぜた女の声が広間に響いた。

「モールト!」

 ユーリがその名を叫べば女——モールトはどこからともなく姿を現した。夜を思わせる艶やかな髪の毛を、後ろ三つ編みでまとめ、真っ黒なスーツ。腰から太もも、そしてお尻のラインがくっきりとわかるタイトスカート。ストッキングも真っ黒であり、履いているパンプスも黒い。上から下まで黒で統一されている。その効果なのか女の肌は雪のように白く見える。そして一番目を引くのは女の紅い目は、相変わらずこちら見ているような、今ではないもっと先を見ているような目をしていた。

 ユーリとリリーは、モールトの姿を目でとらえ顔は険しさを覚えた。睨み合う両者の間には明確な敵意があり、先ほどまで敵地ではあるが和気あいあいとした空気は消えピリリと肌を突き刺すような緊張感に包まれた。

 そのような状態であるのにかかわらずロイは一歩前に出た。三人はロイに注意を払っている。彼の行動によっては戦いが始まるからだ。

「………ねーちゃんはどこ?」

 ロイの一言に三人は白けた視線を送ったが、ロイは気付いていないのか、気づいたうえで無視をしているのか真っ直ぐモールトを見つめた。

「ちょっと!!アンタこんなときに!………はぁ」

 リリーは途中で怒る気も失せ、ため息を一つ吐き出した。

「ミレイ様でしたら、あちらの扉の先でお待ちしております」

 モールトの言葉と同時に右側の扉がゆっくりと開いた。ロイはモールトに「……ありがとう」と言葉を送り駆け出した。

「あ!一人じゃ危ないよ!」

 ユーリの声も聞こえていないのか、ロイは扉の奥へと消えていく。そして扉はゆっくりと閉じた。

「あー……罠じゃないと信じたい……」

 ユーリの呟きにリリーは眉を寄せて同意した。


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