一般人の感想-2
「名前?」
「この世界において木島侑利という名前はおかしな名前ですから。ただユーリと名乗ってくださいませ」
——なんだか、RPGのセーブデータ作ってるみたいだな
侑利いや、ユーリの頭の中でぼうけんのしょを思い描きながらフローリアの言葉に頷いた。
「次は一番重要なことになります」
「な、なんですか?」
フローリアの硬い声にユーリは、右足が無意識に下がった。
「わたくしを救う方法です」
「……どうしたら神様を救えますか?」
「やる気があるのは、いいことですわ」と爽やかに笑うフローリアの声には、先ほどの硬さはなくなっていた。
「この世界には魔王と呼ばれる存在がいます」
「魔王、ですか」
フローリアはユーリの言葉に無言で頷いた。
「魔王は突然現れて、各地に魔物を解き放ったのです。このまま争いが続けば、この星は、わたくしは耐えられずに死んでしまうのです」
「つまり、魔王を倒せばいいってこと?」
「そうです。魔王がいなくなれば、争いはなくなり平和が訪れます」
フローリアはユーリとの距離を詰めた。必然的に顔と顔が近くなり少し顔を動かすだけで、触れてしまいそうであった。
「魔王を倒してくださいますか?」
フローリアの息遣いが、触れていないのに確かに感じる体の温度にユーリは声が出せず、瞼をゆっくりと閉じて開くことで肯定した。
その姿を見たフローリアは「ありがとうございます」と、ユーリの目の前でニコリと笑い2、3歩後ろに下がった。
「魔王は最果ての城を根城にしています。そして、1年後にここジェレペトゥ王国で選定の儀式が行われます」
「せんてい?の儀式」
「あなたさまはその日、ただの剣を引き抜くだけですわ」
「わかりました」
——まぁ、ゲームでもよくある最初のシーンをやる感じかな。
選定の儀式なんて大袈裟に言っているが、ゲームでいうのであれば導入にすぎない。そこから主人公の物語が始まるように、ユーリの物語もそこから始まるのだ。
「って、ただの剣ですか?」
「えぇ、そうです。なにか能力が付与されているとか、選ばれた者にしか抜けないとかではありません。だれでも引く抜くことができるただの剣になります」
「でも儀式をするんですよね……?」
「そうでございます。きっと儀式の日に剣について説明があると思うので、この世界では変哲もないただの剣がそうやって信じられているって思っていただければ結構ですわ」
「はぁ……?わかりました」
「あなたさまが1年後に手にするのは剣になります。ですから持てるようになるまで、鍛えていただきます」
「鍛えるって……どうやってですか?」
ユーリの質問にきょとんとした顔をしたあとに、フローリアは笑顔で至極あたりまえのことを言った。
「もちろん、筋肉トレーニングですわ」
彼女の花が咲くような笑顔をユーリは、きっと一生忘れないだろう。




