一般人の感想-1
男の名前は木島侑利。
この男は死んだ。死因はよくある死に方をしたので割愛させていただく。死んだはずの男は不思議なことに目を覚まし、自らを神と名乗る女によって異世界転生をすることになった。
異世界転生と聞いた侑利は、今までの普遍的な生活からの脱却、新しい生活への旅立ち。少しの飽きと、自分が何者かに——世界の主人公になれるのではないかという期待に瞳を輝かせた。
そして見事に異世界転生を果たした侑利が最初に目を映したのは、電線はなく、建物が視界に入ることがない、どこまでも広がる終わりが見えない青空であった。ただの青い空を見ただけなのに、たったそれだけの景色が侑利の心を震わせた。
「ただの空を見て感動するなんて、人間は本当にわかりませんこと」
「あ、神様」
心底理解できないという感情を隠すことをしない神様——フローリアに侑利は苦笑いを溢した。
「契約内容の詳しい説明をしても?」
「あー、俺が神様を救う。それで神様は、俺に力を与える。でしたよね」
「えぇ、そうでございます」
「契約した後だけど、契約内容を教えてください」
「まず初めに、私があなたさまに与えた力は……」
「力は?」
侑利は高鳴る胸の鼓動を、抑えるように手を握りしめた。力が入りすぎているのか少し手が、震えている。
与えられる力は普通に考えれば、主人公にしか扱えないような強力な武器や、魔法だろう。しかし、あまりにも主人公チートが多いため、反対に雑魚能力を与えて、それを駆使して頑張る物語も溢れてきている。どちらにせよ、侑利はこの世界の主人公であることを信じて疑っていないで、どのような力が与えられても目の前の美しい神様を救うために頑張ろうと考えていた。
「それは丈夫な体。つまり、健康です」
「え?」
フローリアの言葉にユーリの頭の中は真っ白になった。今まで読んだり、見てきた物語に思い馳せていたせいか自身に与えられえた能力が「健康」だなんて、あまりダサい。ダサすぎである。
「えっと、健康、ですか?」
侑利の戸惑いの声に、フローリアは「えぇ、そうでございます」と無慈悲に肯定した。
「いいですか。あなたたち人類がいつもほしいものは時間です。力ではないのです」
「たしかに死ぬ前も1日48時間あればとか考えてたな……」
「理解していただけてなによりですわ。丈夫な体になったことで、あなたさまはこちらの世界では病気にはなりません。怪我をしても欠損しない限りは、骨が折れても休めば治ります」
「すごく長生きできそう」
「えぇ、すごく長生きできることでしょう。生きてさえいれば、なんでもできますから」
フローリアの言葉に侑利は納得した。力があったところで死んだら意味がないのだから、そう考えると健康で丈夫な体というのは実に素晴らしい力である。
「もちろん、注意点もございます」
フローリアの注意点という言葉に侑利はごくりと喉を上下に動かした。
「いくら健康で丈夫な体といっても、心臓や脳幹、致命傷を負えば死にますし、老いてもいきます。決して不老不死ではないことを忘れないでください」
「わかりました。無茶はしません」
いつかは死ぬという事実に侑利は、安堵と残念な気持ちをため息とともに吐き出した。




