表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありきたりな物語に花束を  作者: 梅木しぐれ
34/76

信奉者の宝物-9


 ユーリはロイの部屋の前に立っている。しかし、ノックをするか悩んでいた。昼間のように無視されるかもしれないからだ。姉のミレイに出会って、1年間部屋にいる必要はなくなったが、ユーリと話す、話さないはロイの自由だ。ユーリは緊張と僅かな恐怖を一緒に吐き出すように息を吐いた。そして覚悟を決めて、目の前のドアを叩いた。

「ロイ君はいますかー?」

 ユーリの問いかけに応えるように、扉がゆっくりと開いた。ユーリは出てきたことに驚きと、感動で胸がいっぱいになった。

「……昼間の」

「俺はユーリって言います!ちょっとお時間いいですか?」

「……間に合ってます」

 ロイがドアを閉めようと動いたが、ユーリは閉まらないように片足をドアの隙間に挟み込んだ。

「いってぇ!!!」

「!!?」

 ロイはユーリの叫びと、閉じないドアに驚いても何度も、何度も、何度も、何度も、何度、閉じようとドアに力を込める。

「痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!」

「と、と、とじない!……閉じない……!」

 どんどん閉じる力が強くなる扉に、ユーリは我慢して扉を掴みこじ開けた。

「い、痛かった……」

「……離して」

「離しませーん!お邪魔しまーす」

「ちょ…ちょっと……」

 ロイは苦虫を嚙み潰し、さらに青汁を一気飲みしたような顔をしたがユーリに力負けをして、部屋の中への侵入を許してしまう。無理やり押し入ったロイの部屋は、ベッドと机と椅子しか置いていなかった。綺麗というにはあまりにも寂しい部屋である。

「……出て行って」

「そんなこと言わずに、俺と話そうよ」

「……話すことはない」

「寂しいこと言うなよ、一緒に旅するんだからさ」

 置いてある椅子に座りながら「まぁ、座れよ」とユーリは我が家のように、ロイをベッドに座るように勧めた。ロイはユーリの態度にジットリとした視線を向けたが、諦めたように息を吐いてベッドに座った。

「……それで?」

「ん?」

「……話」

「あ~~、単刀直入に聞くけどいい?」

「……なに?」

「お姉さんを殺すのって本気?」

 その瞬間、部屋の温度が確かに下がった。先ほどまで感じていなかったのに、ユーリの喉は渇きを訴えていた。

 ——やっぱ、聞くのはまずかったかな

「……ねーちゃんが望むなら」

「え」

「……ねーちゃんがそれを望むなら……僕はそれを叶えるだけ」

「本当は殺したくないのに?」

「……そうだとしても」

 ロイはその顔を伏せた。ユーリからはその顔を見ることはできなかった。しかし、膝の上で組んでいた手は見てわかるほど力が入っている。

「殺したくないなら、お姉さんに直談判しよう!」

「……は?」

「殺したくないなら、一緒に生きていてほしいなら、その思いを伝えよう。会いに行くんだし」

「……………」

「言うのはタダだよ。それとも、弟の君の言うことを聞いてくれないようなお姉さんなの?」

 ユーリがロイに聞いた瞬間は、ロイは立ち上がりユーリの胸倉を乱暴に掴み上げた。怒りに震えているロイをユーリは、冷めて目で見上げていた。

「……ねーちゃんを侮辱するな……!」

「別に侮辱してないよ。俺は質問しているだけ」

「…………」

「それで、どうなのさ?」

 ユーリの声は先ほどの冷めた声とは一変して、とても温かい声であった。ロイはユーリの胸倉から手を離し、先ほどまで座っていたベッドへ腰を下ろした。

「……ねーちゃんは、」

「うん」

「……話は、聞いてくれる……と思う」

「そっか」

「………でも殺してほしい、と願うなら」

「殺すの?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ