信奉者の宝物-9
ユーリはロイの部屋の前に立っている。しかし、ノックをするか悩んでいた。昼間のように無視されるかもしれないからだ。姉のミレイに出会って、1年間部屋にいる必要はなくなったが、ユーリと話す、話さないはロイの自由だ。ユーリは緊張と僅かな恐怖を一緒に吐き出すように息を吐いた。そして覚悟を決めて、目の前のドアを叩いた。
「ロイ君はいますかー?」
ユーリの問いかけに応えるように、扉がゆっくりと開いた。ユーリは出てきたことに驚きと、感動で胸がいっぱいになった。
「……昼間の」
「俺はユーリって言います!ちょっとお時間いいですか?」
「……間に合ってます」
ロイがドアを閉めようと動いたが、ユーリは閉まらないように片足をドアの隙間に挟み込んだ。
「いってぇ!!!」
「!!?」
ロイはユーリの叫びと、閉じないドアに驚いても何度も、何度も、何度も、何度も、何度、閉じようとドアに力を込める。
「痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!」
「と、と、とじない!……閉じない……!」
どんどん閉じる力が強くなる扉に、ユーリは我慢して扉を掴みこじ開けた。
「い、痛かった……」
「……離して」
「離しませーん!お邪魔しまーす」
「ちょ…ちょっと……」
ロイは苦虫を嚙み潰し、さらに青汁を一気飲みしたような顔をしたがユーリに力負けをして、部屋の中への侵入を許してしまう。無理やり押し入ったロイの部屋は、ベッドと机と椅子しか置いていなかった。綺麗というにはあまりにも寂しい部屋である。
「……出て行って」
「そんなこと言わずに、俺と話そうよ」
「……話すことはない」
「寂しいこと言うなよ、一緒に旅するんだからさ」
置いてある椅子に座りながら「まぁ、座れよ」とユーリは我が家のように、ロイをベッドに座るように勧めた。ロイはユーリの態度にジットリとした視線を向けたが、諦めたように息を吐いてベッドに座った。
「……それで?」
「ん?」
「……話」
「あ~~、単刀直入に聞くけどいい?」
「……なに?」
「お姉さんを殺すのって本気?」
その瞬間、部屋の温度が確かに下がった。先ほどまで感じていなかったのに、ユーリの喉は渇きを訴えていた。
——やっぱ、聞くのはまずかったかな
「……ねーちゃんが望むなら」
「え」
「……ねーちゃんがそれを望むなら……僕はそれを叶えるだけ」
「本当は殺したくないのに?」
「……そうだとしても」
ロイはその顔を伏せた。ユーリからはその顔を見ることはできなかった。しかし、膝の上で組んでいた手は見てわかるほど力が入っている。
「殺したくないなら、お姉さんに直談判しよう!」
「……は?」
「殺したくないなら、一緒に生きていてほしいなら、その思いを伝えよう。会いに行くんだし」
「……………」
「言うのはタダだよ。それとも、弟の君の言うことを聞いてくれないようなお姉さんなの?」
ユーリがロイに聞いた瞬間は、ロイは立ち上がりユーリの胸倉を乱暴に掴み上げた。怒りに震えているロイをユーリは、冷めて目で見上げていた。
「……ねーちゃんを侮辱するな……!」
「別に侮辱してないよ。俺は質問しているだけ」
「…………」
「それで、どうなのさ?」
ユーリの声は先ほどの冷めた声とは一変して、とても温かい声であった。ロイはユーリの胸倉から手を離し、先ほどまで座っていたベッドへ腰を下ろした。
「……ねーちゃんは、」
「うん」
「……話は、聞いてくれる……と思う」
「そっか」
「………でも殺してほしい、と願うなら」
「殺すの?」




