信奉者の宝物-6
11年前 ミレイ・ターナーは「運命に出会ったから、私行きます」と言い残し、ロイ・ターナーの前から消えた。それはロイの人生で一番の事件であった。
彼女の言う「運命」とはなんなのか、それを知るものは本人以外にいない。
ロイは消えた姉を探し続けた。当時6歳だったロイにとって探せる範囲などたかが知れていた。それでも姉の影を探し続けた。だって彼には姉しかいないのだ。
ロイ・ターナーにとって、姉のミレイ・ターナーは姉であり、母であり、友人であり、他人であり、宝物である。どんなにお金を積まれても、どんなに宝石を用意されても、世界の半分をやると言われても、譲ることのできない宝物である。彼の世界は姉で構成されていると言っていいだろう。
そして探し続けて10年が気づいたら経っていた。彼女はひょっこりと彼の目の前に現れた。
「……ねーちゃん」
「はぁい、おねぇちゃんのミレイちゃんですよぉ」
少し大人びた表情で、すこし目線が上で、伸びた髪の毛を揺らして、変わらない声の温度にロイは自分の視界が歪んでいくのがわかる。
ロイ・ターナーにとって何故、ミレイ・ターナーがいなくなったか。という原因に興味はない。最終的に自分の許に戻ってきてくれたのなら、それが全てであり答えであるからだ。しかし、いなくなったことに対して探さないことはイコールではない。だって1分1秒でも一緒にいたいからだ。
「ロイくん、おねぇちゃんの言うこと聞ける?」
「……うん、聞ける」
ミレイのお願いは、何をおいても優先される世界の常識である。
「おねぇちゃんは、今日から1年間またいなくなります。悩み事があるからです」
「……悩み……ごと……」
「そうです。1年後にまた会いに来ます。その時に私が選んだ答えを伝えに来ます」
「だから、1年間教会から出ないでくださいね」と笑ったミレイに、ロイはただ静かに頷いた。




