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ありきたりな物語に花束を  作者: 梅木しぐれ
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魔術師の初恋-9

雪山 外


 ほどなくして、三人は深い深い穴をリリーの魔法で登り外に出ていた。

 三人の心のように澄み渡る青い空が広がっており、心地よい風が三人の間を走り抜ける。

「それじゃあ改めて!リリー、これからよろしくね」

 差し出された手を握り返し「こちらこそ」とリリーは返した。

「私の名前はダン・ブラウンだ。気軽にダンと呼んでくれ。よろしく頼む」

「アタシはリリーよ。よろしく」

 ユーリは、ダンとリリーが握手を交わしているところを見て、満足気に笑っている。

 ——リリーが正式に仲間になったぞ!

「それで、次の目的は決まっているのかしら?」

「あぁ。決まっている」

 リリーの疑問に、ダンは間を入れずに返した。

 ——え、そうなの?

 ユーリの戸惑いをよそに、ダンは続けた。

「王都を出発する際に、王より港町にある教会に顔を出すようにと言われている」

「それじゃあ、次の目的は港町の教会だね!」

「じゃ、目的地も決まったしことだし、さっさと降りるわよ」

 先頭を歩きだしたリリーの後ろを、ユーリとダンがついていく。


 冷たくも美しい世界は、歩き出す三人を祝福するようにきらきらと輝いていた。


        △△△


 少女は世界を嫌った。


 少女は生きているものを嫌った。


 少女は自身さえも嫌った。


 でも、全てを嫌った少女を好きだと言った少年がいた。


 少女のことをなにも知らない青年は「一緒に生きてよ」と手を差し出した。


 青年はきっと少女をいつか置いていくだろう。


 それでも、少女は青年と生きることを選んだ。


 あの時高鳴った胸の音は、どれだけの時が経とうとも色褪せることはなかった。


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