魔術師の初恋-7
リリーはこの雪山にもう30年住んでいる。
ずっと考えていた、自分の姿が変わらない理由を、死ねない理由を。モールトのあの言葉は転移魔法に気づいたことではなく、リリーがバジリスクと同じく『魔王に作られた』ことに気づいたことを褒めていたのだ。
廃棄。その二つの文字がリリーの頭の中を踊る。死ぬことがないこの体を、石化してしまえば確かにそれは死んだも同然だろう。
——この長い人生が終わるなら、それもいいのかもしれないわね
リリーは疲れたように笑う。自分を生んだのが、この世界の神ではなく魔王なのは少なからず驚いたが、進化もない今日という経験を積み上げるだけの人生に、終わりを迎えられる目の前の甘美なものにリリーは死ねる期待を隠すように立ち上がった。
「あなたたちは逃げなさい」
リリーの発言に、ユーリとダンは驚きのあまりに動きを止めてしまった。バジリスクは二人の隙を見逃すことなく、その体を鞭のようにして二人を壁まで吹き飛ばした。
「ぐッ!」
「がはっ!」
壁に叩きつけられた二人をよそに、リリーはゆっくりとバジリスクに近づいていく。一歩近づくたびに期待は膨らんで、二人の必死の静止の声も彼女の耳には届かない。バジリスクの目の前でその歩みを止めた彼女に、バジリスクは瞳を近づける。
「あぁ、これで終われるのね」
喜びに満ちた声であった。




