魔術師の初恋-5
「————」
ユーリはとっさに剣を抜くが、あまりの大きさに剣を握る手が震えていた。
モールトはその姿を見て、嬉しそうに、愉快そうに、憎らしそうに、愛しそうに笑った。
「こちら魔王様が作成された、幻想種のバジリスクでございます」
まるで、大きな蛇であった。全長はおそらく25メートルはあるだろうか。色の鮮やかな鱗。
——バジリスクって、目が合うと石になるって有名な奴じゃん!?
こちら見下げる美しくも、恐ろしい黄色の瞳。ユーリは恐怖に震える手を叱責するように、握る手に力を込めた。そして、一歩踏み出そうとしたときそれはバジリスクとユーリの間に降ってきた。
「なんだか、おもしろいことになっているじゃないか!」
ああ、この声、この後ろ姿は、
「ダン!!!」
こちらに顔を向けニカリと笑う彼に、ユーリの恐怖はもう無くなっていた。
「いつのまに、こんなにモテるようになったんだ、ユーリ?」
「さっきかな!」
ユーリは、自分の返答に豪快に笑うダンの横に並んだ。
「それで、本命はどっちなんだ?」
「後ろの綺麗な赤い髪の毛の子!」
「そうか、わかった」
二人はお互いの顔を横目にニヤリと笑った。
「人間が増えたところで変わりませんわ。それでは、わたくしは次の仕事がありますので失礼いたします。」
モールトは律儀にもユーリ達に頭を下げて黒い穴に入っていく。
「待て!!!」
ユーリの静止の声も聞こえなかったのか、モールトの姿は見えなくなった。黒い穴も小さくなって消えてしまった。この場に残っているのは、バジリスク、ユーリ、ダン、リリーの一体と3人である。
「ダン、この蛇は目が合うと体が石になるんだ」
「石化だと?!」
「だから、絶対に目を合わせたらダメだよ」
「そいつは、やっかいなモンスターだ」
二人は短く会話し、自分たちが生きるために走り出した。呼応するようにバジリスクは大きく口を開け「————!」叫んだ。




