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ありきたりな物語に花束を  作者: 梅木しぐれ
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近衛兵の後悔-8

アンポス村 診療所


「本当に、この馬鹿!」

 ダンの怒鳴り声とともに《ゴンッ!》と鈍い音が室内に響いた。

「いった!!!」

 頭を殴られたユーリは目をチカチカとさせた。

「自分の武器を投げるやつがあるか!!」

「けど、みんな助かったから結果オーライ!」

「結果論だろうが!!」

 ダンは呆れたようにため息を吐いた。

「もし、もしだぞ、投げた剣が頭に刺さってなかったらどうしたんだ?」

 ユーリはその質問に目を丸くしてからカラリと笑った。

「その時は、王国一番の兵士がトドメをさしてたから大丈夫!」

 その答えにダンは、息を飲んだ。

「だから、結果も同じ!」

 目の前の子どもは本当に信じているのだ。結果は同じだったと。そのことに気づいたダンは呆れたような、むずがゆいような何ともいえない表情をした。

 コンコンとノックの音がしたら、ガチャリとクリスが部屋に入ってきた。

「調子はどうだ?」

「あ、クリスさん!絶好調です!」

「クリス、ノックの意味がないだろう」

 それぞれの反応にクリスは苦笑いをした。

「すまん、すまん。でも二人とも元気そうで安心した」

「それだけが、取柄ですから」

「そうみたいだな」

「え、酷くないですか?」

 本当にショックなのか、ダンを凝視するユーリ。そんな二人を見てクリスは安心したように口を開いた。

「とりあえず医者からの言伝だが、明日には退院してもいいそうだ」

「やったー!」

「それで、二人はいつから旅に出るんだ?」

「明日ですね」

「明日だな」

 二人の返答にクリスは想像していたのか驚くことはなかった。

「あ、クリスさん」

「どうした?」

「すっごく優秀な魔術師が、北の方にいるって聞いたんですけど知ってますか?」

 クリスは自分の記憶の中を検索しているのか目をきょろきょろと動かした。

「もしかして、魔術師リリーのことじゃないか?」

「リリー?」

 そうだと、頷いたクリスは言葉つなぐ。

「この先に雪山がある。そこに昔から住んでいるらしい。でもいい噂は聞かないぞ」

「どんな噂を聞くんだ?」

「魔王の手下って噂だよ、関わらない方がいいと思うが……」

「いや、魔王の手下なら、なおさら行きます」

 ユーリのまっすぐな眼差しに、もう君のことはよくわかったよと、クリスは笑った。

 そうして、さっきまで黙っているダンにユーリは顔を向けた。

「どうした?」

「いーやー、クリスさんに何かないのかなって思っただけ」

「え」

 ユーリの言葉に反応したのはダンではなく、クリスであった。

 ダンは息を一つ吐き出してクリスに顔を向けた。

「ちょっと、いいか」

「あ、あぁ」

 一人、困惑しながらクリスは部屋を先に出ていったダンの後をついていった。ユーリはそんな二人に聞こえていないことは承知の上で「いってらっしゃーい」と声と投げた。



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