第1話 王命
~アヴァロン城~
アヴァロン城は湖に囲まれた壮麗堅固で美しく、また城下町も高い城壁で囲まれており他国からの侵略にも強く、王も剣王で知られ誰からも尊敬と畏怖の念で見られていた。
見張り『おっ!ダイン!オーズ!おつかれさん』
ダイン『おう!』
見張り『んー?どうしたんだそのかわいこちゃんは?』
ダイン『世界樹の森で倒れているところを見つけたんだ。』
見張り『ははーん?』
ダイン『な、何だよ?』
見張り『ダインもやるときはやるなぁと思ってな』
ダイン『バ、バカ!報告があるから行くぞ。』
見張り『はっはっはっ。また後でな』
ダイン『ああ。』
ダインとオーズは城門をくぐって中に入った。
そこには夕食をつくる材料を買う人や、酒場で一杯やろうとしてる人などたくさんの人がいた。町の中心部にたつ巨大な塔の前まで二人は来ていた。
ダイン『先にこの子を置いてくる』
オーズ『ああ。変な真似するなよ?』
ダイン『す、するかバカ!』
オーズ『わはは。先にいってるぞ』
~ダインの部屋~
???『う~ん…ここは?』
ダイン『気がついたのか!』
???『私はいったい…』
ダイン『ここは騎士の国アヴァロン王国。君は世界樹の森で倒れていたんだ。』
???『世界樹…』
ダイン『君の名前は?』
???『私はフローラ。』
ダイン『何故あそこにいたんだ?』
フローラ『分からない。なにも思い出せない。』
ダイン『記憶がないのか。』
フローラ『・・・。』
ダイン『いずれ記憶ももとに戻るさ。とりあえず体を休めるといい。』
フローラ『あ、ありがとう。』
ダイン『まだ俺には仕事があるから。またあとで。』
フローラ『ええ。』
ダインはフローラの肩をポンッと叩いてその部屋を出た。
~騎士団詰所~
なかに入ると騎士団員達が慌ただしく動いていた。そのなかに一人部下の報告を待つ男がいた。アヴァロン王国騎士団長アインである。
アイン『何!アルゲニア連邦に不穏な動きがあるだと!』
部下『部隊は少数なのですが、何度か小競り合いがあっているようでして。』
アイン『威力偵察だとは思うが…。念のため警戒を怠らないよう使いを出せ。』
部下『はっ!』
ダイン『団長!』
アイン『戻ったか。まあそこに座れ。少し長くなる。』
ダイン『はい。今の報告は?』
アイン『ああ。最近アルゲニア連邦が不穏な動きをしていてな。油断できんのだ。まあ座れ。』
ダイン『はい。』
ダインとオーズは促され、椅子に座った。
アイン『それで報告を聞こう。』
オーズ『世界樹の森で目視されていた光のたまでしたが、正体は少女でした。』
アイン『少女だと?』
オーズ『はい。そして、その少女をおっていると思われる、追跡者なるものと戦いました。』
アイン『何!』
ダイン『何とか撃退したもののやつは不思議な力を使っていました。』
アイン『不思議な力か…。』
ダイン『なにもない空間から炎の玉が現れ、俺たちに向かってきました。』
アイン『炎の玉だと?ふーむ…。もしや魔法か?いや、まさかな』
ダイン『魔法?お伽噺の?』
アイン『古の神話の時代に存在したと言われる。究極の力…。それが魔法だ。だが魔王と神が倒れた際、共に消えたと言うが…。』
ダイン『それよりも団長!俺たちもアルゲニア連邦との国境に行かせてください!』
アイン『お前にはまだ早い!』
パアンッとアインがダインの頭を叩く。
アイン『お前たちにはまだやってもらうことがある。』
ダイン『…。』
アイン『不服そうだな?この任務が成功したなら騎士団員として正式に認められるぞ?何しろ王命だからな。』
ダイン・オーズ『王命!!』
アイン『ああ。ここから西に二日ほど行った砂漠に、大地の精霊竜を祭っていた神殿跡がある。そこに巣くうサンドワームを倒してきてほしいのだ。』
オーズ『サンドワーム…。砂漠の暴君。ですか…。』
アイン『難しいだろうが他には任せられんのだ。他の諸国が最近不穏な動きを見せていてな。それに、学者達が調査が出来ん!と、がっつかれてな…。』
ダイン・オーズ『分かりました!やらせてください!』
アイン『二人とも頼んだぞ。成功したら正式に騎士団員だからな!』
ダイン・オーズ『はいっ!』
ダインとオーズはアインに一礼すると、詰所を出た。
~中央塔の前~
オーズ『これからどうする?一杯やるか!』
ダイン『ああ。だが一旦部屋に戻るよ。』
オーズ『あの娘が気になるのか?』
ダイン『バ、バカ言え!先行ってろ。』
オーズ『わはは。分かりやすいやつだな。先にいってるぞ。』
ダイン『ああ。後からいく。』
ダインとオーズは一度別れた。
~ダインの部屋~
フローラ『お帰りなさい。』
ダイン『ただいま。しばらくここを離れないといけなくなった。』
フローラ『え?』
ダイン『いない間はここを自由にしてもらっても構わない。』
フローラ『…。どこに行くのですか?』
ダイン『ここから西にある大地の精霊竜の神殿跡だ。そこに巣くうサンドワームを倒しにいってくる。』
フローラ『大地の精霊竜の神殿…。』
ダイン『何か気になるのか?』
フローラ『気になるほどではないのですが…。』
ダイン『なら、一緒に来るか?君一人なら守ってやれるさ。』
フローラ『いいのですか?』
ダイン『ああ。』
フローラ『私もいきます。』
ダイン『明日は早いからゆっくり休みな。』
フローラ『ありがとう。えっと…。』
ダイン『あっそうだった。俺の名はダインだ。宜しくな。』
フローラ『よろしくお願いします。ダインさん。』
ダイン『そんなにかしこまらなくていいさ。ダインでいいよ。』
フローラ『じゃあ、ダイン。おやすみなさい。』
ダイン『ああ。お休み。』
~酒場~
オーズ『ダイン遅いぞ~!まさか彼女とよろしくやってたのか?』
ダイン『バ、バカ言え!』
と言うとダインはジョッキに注がれた酒を一気に飲み干す。
オーズ『で、どうなんだ?』
ダイン『どうって別に…。』
オーズ『そんなこと言って、一目惚れなんだろ?』
ダイン『そ、そんなわけ無いだろ…。』
オーズ『ほんと分かりやすいやつだな。』
ダイン『うるさいわ!あ、明日も早いし俺は帰るからな。お前も程ほどにしろよ。』
オーズ『分かってるよ。』
ダインはお金を払い酒場を後にした。