【IF】やり直し悪役令嬢ルツーラ と 引きこもらなかった箱入令嬢
モカが引きこもらなかった世界線をルツーラ視点で。
ちょっと思いついた勢いのまま書き殴ってしまいました。
らくがき のようなモノなので中途半端になってしまってますが、せっかくですので書いたところまで公開です٩( 'ω' )و
需要有りそうなら、がんばってちゃんと書くかも?
何はともあれ、難しいコトは気にせずに読者の皆様にはお楽しみ頂けたらと思います
大きな犯罪を犯した貴族を幽閉する邸宅。
刑罰が執行されるまで、私たち家族はここへ幽閉され続ける。
後悔したところでどうにもならない。
唆されたとはいえ、私のやったことは許されるものではないのでしょう。
「お父様、お母様……本当にごめんなさい……」
寝る前に、いつも口にしてしまう。
部屋は隣同士だけれど、私は両親の顔は見れない。
この部屋からは出ることも出来ない。
それも仕方がないことと言えばそうだ。
一応、大きめの声を出せば話は出来るのが、幸いか。
「ルツーラはいつもそれを口にするのね」
「……お母様」
隣の部屋からお母様の声がする。
どうやら私の呟くような声は、隣の部屋にも届いていたらしい。
「ここへ幽閉された当初は貴女を怨んだわ。でもね……私も旦那様も、貴女を甘やかし過ぎてしまっていたな……と、そう思っているの」
――ああ。もし順序を入れ替えることができたなら。
――魔封じを付けられた状態で使えなくなっている『順』魔法に願う。
――こんな結果を先に知った状態で、過去に戻れるのなら。
――私はこんな愚かなことはしないだろうに。
「だから謝らないでルツーラ。これは連座ではないわ。なるべくしてなってしまった家族の罪そのものよ」
お母様のそんな優しい言葉に、涙が止まらなくなった私は、何の言葉も返せないまま――泣き疲れて眠りに落ちた。
「おやすみルツーラ。この結末を気にするなというのはムリかも知れないけれど、私も旦那様も貴女を愛しているわ。可愛い娘だもの」
――そう。幽閉邸の一室で私は眠りに落ちたのだ。
――目が覚めれば、また幽閉邸で何もすることのない一日がはじまる。
――それが今の私の日常だ。
…
……
………
…………
――だとしたら。
――これはなんだろうか。
………………
…………………
……………………
――気がつけば、私はなぜか自宅の自室にいる。
「ルツーラ、そろそろ出かけるわ。準備は出来ているかしら?」
部屋の外から聞こえるお母様の声。
それに返事するべきなのだろうけれど。
「……この姿……魔性式の日?」
鏡に映る自分の姿は幼いものだ。
着ているドレスにも見覚えがある。
「本当に、歴史の順序が入れ替わった……?」
――あるいは夢か。
「だとしても」
この夢が覚めるまでは……。
・
・
・
私は、着替えて両親と共に馬車に乗る。
そうして馬車に揺られて、恐らくは運命の始まりとも言える教会へ。
「ルツーラ様!」
私が教会へと入ると、見知った――けれど最後の記憶よりもだいぶ幼い――顔が集まってくる。
ダーリィ、マディア、ビアンザ。
そういえば……マディアには悪いことをしてしまったわね。
モカ様に負かされ、プライドだけを守る為ヤケになって、酷い命令をしてしまった。
人の意志を無視して操れてしまう魔法。本当に、私には過ぎたモノでしたわね。
「皆さんごきげんよう」
私の周りには人が多かった。
けれど、特にこの三人はよく一緒に居ましたし、よく私は持ち上げられてましたからね。
気がつけば、女神よりの光を浴び続けている気になっていました。それが私の過ちの一つでしょう。そのようなもの女神の光でも何でもないというのに。
以前の自分について考えながら歩いていると、無意識にマディアの手を撫でていたようで。
「……えーっと、ルツーラ様?」
「お気になさらず。何となく触りたくなってしまっただけです」
「そうなんですか?」
ああ――マディアへ謝罪する機会を失してしまったのは、なんとも悲しいですわね。
ともあれ、今日の魔性式は大人しくすることにしましょう。
そう思っていたのですが、ダーリィがとある少女に気がつき、私に声を掛けてきました。
「ルツーラ様。あちら、貴族の多くが集まる場所なのに平民向けの本を呼んでいる者が」
彼女が示す少女を見て、私は胸中で青ざめます。
「アレには関わってはいけません!」
この夢の中においては、絶対に関わらないと決めました!
・
・
・
そうして、魔性式の後はあまり前回と変わらない日々を過ごします。
しかし、十年先を一度経験しているからか、集まってくる者たちの不出来がどうにも気になってしまいますね。
特にダーリィは妙に私を神聖視しているというか、私の権力を自分の権力と勘違いしている節があるといいますか。
前回はこれを見抜けなかった私にも落ち度はあったのでしょうね。
彼女の無自覚な思惑に乗っかりすぎて、自分の抱く女神の威光の大きさを勘違いしてしまった……。
それはともかくとして――
前回にしでかしたことに関して、改めて振り返り考えてみることは多いです。
その都度、反省すべき点や、やめておくべきだったことなどで、まだ間に合いそうな出来事に関しては、控えたりフォローしたりする方向で立ち回っているのですけれど……。
何故か、取り巻きが前回の倍ぐらいに増えてるのですけど?
厄介事を避けようとしているのに、派閥が大きくなっていくのは、あまり良いとは言えない気がしますが……。
集まってしまったものは仕方がありませんものね。
可能な限り気に掛けて、私の破滅に付き合わせないように守っていかなければ。
・
・
・
そんなこんなで日々を過ごしているのですが、そろそろ過去へ戻ってきて七年ほど。
現在15歳。まったく夢から覚める気配がありません。
もしかしなくても、本当に時間を逆行しているのではないかという疑惑が湧いてきます。
……疑惑どころか、わりとそうだろうなぁ……とは思っていたのですが、そろそろ腹を括って認めてるべきな気がしてきました。
それならそれで、破滅しないようにやりなおすだけです。はい。
そんなワケで、今後の方針というかなんというか……ですけれど――
おおむね、モカ様に関わらなければ、きっと問題ないでしょう。
もちろん立場上、完全に関わり合いを避けるのは難しいでしょうが。
とはいえ、関わることになるにしても、それは成人会以降のはず。
前回の経験を踏まえた歴史的な順序を思えばそれが正しい。きっと。
そう思っていたのですが――
「ルツーラ様。近々、騎士団が公開訓練というのをされるそうです」
「将来のお相手を探す意味でも、見学しにいきませんか?」
取り巻きたちからのこの誘い、前回もありましたね。
騎士の訓練というのにあまり興味はなく、前回はお断りしました。
興味がないのは今回もそうなのですが……せっかくなので、前回とは違うことを選んでみるのも悪くはありませんね。
「そうですね。せっかくですので、見学に参加してみましょうか」
――私は、まったくの想定外のところで、あの『箱』と遭遇することになるのです。
・
・
・
騎士団公開訓練当日。
訓練場の片隅とも言えない場所にそれがありました。
真ん中ではないものの、片隅とも言えない場所。
明らかに訓練をする騎士たちにとって邪魔な場所です。
素人目から見ても、あそこにあっては邪魔ではないだろうかと思うほどに邪魔な場所。
それにも関わらず、訓練を続けている騎士たちは全く気にした様子もない。
……なんとも、既知感を覚える光景です……。
(箱……?)
(箱だよな……)
(何なのかしらあの箱……?)
(一体なんの箱なのでしょう……?)
(しかし、騎士たちは気にしておらぬようだしな……)
(もしかして、気にしたら負けなのか……?)
ヒソヒソと聞こえてくる見学者たちの声。
私の取りまきたちですら不思議そうに見ている中、私だけは気が気じゃありません。
なんで……なんでッ、あんなところにッ、あの『箱』がありますのーッ!?
胸中で叫んでから……ふと、気づきました。
そういえば、魔性式からこっちモカ様の噂をほとんど聞きませんでしたわね?
前回の今頃には、宰相の娘が引きこもりの箱入りだと、それなりに耳にしたのに。
つまり、この夢の中でのモカ様は引きこもっていない?
え? なんで? どうしてですの??
いやそもそも引きこもらないのはともかくとしても、どうして引きこもらなかった結果、彼女は騎士の訓練場にいるのでしょう?
そう思っていると、一人の女性騎士が箱に近づいていきます。
(あれは……コナ様だったかな)
(確かフラスコ殿下の婚約者の)
(ああ、騎士団長ウェイビック侯爵のとこの令嬢だったか)
コナ様は、『箱』をノックするようにコツコツと叩く。
「モカ、そろそろ本格的に訓練始まるから出てきなさい」
「……コナ姉様。訓練は嫌いではないですけど、多くの人の前に立つの、目立つから嫌なんですけど……」
「すでに目立ってる自覚ある?」
「箱が見られる分には気にしません」
「お願いだから気にして」
「公開訓練……サボりたかったです……。
今回は任意参加だったじゃないですか。なのに、どうして私とコナ姉様は強制参加なんですか?」
「それに関しては、あの人たちに文句を言って欲しいかな」
「……まぁそうですよね」
意外にも、この夢の中では、コナ様がモカ様のお目付役のようになっているようです。
ところで訓練は嫌いじゃないってまるでモカ様が騎士であるかのような言葉なんですが……。
あ、いや違いますね。
ような――ではなく、間違いなく騎士なのでしょう。
だから訓練場に『箱』があるし、あっても騎士の皆さんは気にしていない。
恐らくは、ああやって『箱』の姿でいるのも、当たり前の光景になっているのではないでしょうか。
あれが当たり前というのも、騎士の皆さんは正気を疑いそうになりますけど。
(誰か来た?)
(殿下兄弟だ……)
(訓練に参加されるのか?)
(入ってくるなり真っ直ぐ箱に?)
(いや本当にあの箱は一体なんなんだ?)
知らないとそうなりますよね!
でも、殿下たちお二人がためらいなく近づいていく感じから、すでに顔見知りになっているということでしょうか?
「コナ。モカはどうだ?」
「お二人に強制されたせいで完全にへそを曲げてしまってます」
「あっはっはっは。さすがはモカだ。こうなると団長でも厳しいな!」
「笑い事ではないぞサイフォン。参加しないなら参加しないで構わないがここに鎮座されてても邪魔だ」
「フラスコ殿下、迂闊なコト言っちゃいましたね」
「ん?」
頭を抱えているコナ様に、首を傾げるフラスコ殿下。
そして、ズリズリと音を立てながらゆっくりと訓練場の出口へ向かう『箱』。
「お許しが出たので退場します」
「おお! すごいなモカ! ついに『箱』のまま動けるようになったのか!」
何やら楽しそうにしているサイフォン殿下の姿は、この夢の中でもあまり変わらないようです。
「いま出来るようになりました。このまま退場しますね」
「ナメクジのようなにスローペースだ。移動したいならとっとと箱から出てくればいいだろう」
不思議そうなフラスコ殿下に、けれどもモカ様は言い返しました。
「……目立ちたくありませんので」
「だからモカは一度、目立つって言葉の意味を辞書で引き直すべきよ」
はぁ――と、コナ様が嘆息すると、改めて箱をノックしました。
中に呼びかけるというよりも、音を立てて誰かに合図するような叩き方に見えます。
「カチーナいる?」
「お呼びでしょうか、コナ様」
そして誰かへと呼びかけると、侍女服を来た女性が突然姿を見せます。
箱の中から出てきた様子はないので、どこかで控えていたのでしょう。
あの方は、前回の成人会の時に見たことがありますね。
モカ様の侍女なのでしょう。
(どこにいた?)
(誰だ彼女?)
(どこから来たんだ?)
戸惑うギャラリーを無視して、コナ様は告げました。
「最終手段を使いたいの。ラテ様呼んできてもらえる?」
「かしこまりました」
「かしこまらないでカチーナ!?」
箱の中から悲鳴のような声が聞こえてきたかと思うと、中から騎士服に身を包んだモカ様が出てきました。
騎士としての訓練を積んでいるからでしょうか。
私の記憶の中にあるモカ様と比べると、華奢な雰囲気が薄れ、少し体付きと肉付きも良いようです。
引きこもらずに運動した結果、発育が良くなっている――ともいうのでしょうか?
……いえ、十五歳時点で今の私はあのお茶会の時よりも体付きは気持ち小さめです。まだ成長しきってないという感じになっています。
なのにモカ様は私の知っている姿に近い――まあ二年くらいは誤差かもしれませんけど、もしかしたら前回のモカ様よりも色々大きくなる可能性がありますね。
やはり運動しているかどうかは大きいかもしれません。
「お嬢様。悲鳴を上げるくらいなら、最初から皆様の言うコトを聞いて、外に出て来られれば良かったのですよ」
「……ううっ、カチーナまでいじわるを言う……」
「モカ。あたしたちもカチーナも意地悪でもなんでもないわ。諦めて仕事しなさい」
「はい……」
しょんぼりへにょんとした顔で、モカ様は箱に手を翳すと、箱はその手に吸い込まれるように消えていきます。
(魔法だったのか)
(箱の中に閉じこもる魔法なのか?)
(どういう魔法と属性なんだあれ?)
ギャラリーの疑問はさておき、私は別の疑問が生じています。
私の記憶では、サイフォン殿下とモカ様が知り合ったのは、17歳の時に行われた成人会だったはず。
今回はどういう経緯で知り合われたのでしょう?
随分と気安い関係のようですけど……。
首を傾げていると、マディアは何かを知っている様子。
「あれが、騎士団の箱姫様……サイフォン殿下の婚約者の最有力候補ですか」
「マディア。箱姫様と一体どのような方なのですか?」
私が訊ねると、マディアは自分も聞きかじった程度しか知らない――と前置きした上で教えてくれました。
「モカ・フィルタ・ドリップス様。宰相であるドリップス公爵のご息女です」
それは既知なので、私は小さくうなずいて先を促します。
「本人は望まれていなかったのに祖父君によって入団させられてしまった方だと伺ってはいます。元々、魔法の練習を兼ねて騎士団の訓練場を借りていたそうですが……」
ふむ。
もしかしたら前回も似たような出来事はあったのかもしれませんが……。
前回のモカ様はこちらのモカ様と違って生粋の引きこもりのようですからね。
どれだけ、強要されようとも頑なに動かなかった可能性はあります。
ですがどういうワケかこちらのモカ様はその頑なさが薄いのか、状況に流されてしまった……といったところでしょうか?
「ただ武人の家サテンキーツの血なのか、魔法の練習を兼ねて武術を嗜んでいたところ、大変優秀だったそうです。騎士団としてはなんとしても入団して欲しいとなったようですよ」
「殿下たちと親しげなのはどうしてかしら?」
「殿下と、ウェイビック侯爵令嬢も、ドリップス公爵令嬢と同じく騎士団の訓練場に出入りしていたそうですから、交流があったのだと思います」
マディアの説明になるほど――と、うなずいているとビアンザが補足してくれました。
「それと、ウェイビック侯爵家の先代当主様は、サテンキーツ家の先代当主様とご兄弟であり、ウェイビック家への入り婿だそうですから、モカ様とコナ様は血が近いというのもあるのかもしれません」
「ああ、なるほど」
前回の時点で、コナ様はフラスコ殿下の婚約者である前に、幼馴染みの友人であったと聞き及んでいますからね。
そこにサイフォン殿下を含めた三人の幼馴染みという前回同様の構図に、引きこもらなかったことでモカ様も加わわり四人組となったのでしょう。
モカ様が引きこもらない場合、騎士にならずとも、コナ様との繋がりがある時点で、殿下二人と仲を深めるのは必然と言えるかもしれません。
そしてその結果がサイフォン殿下との婚約者候補なのですから、運命というのはなんのかんのと収斂していくのかもしれませんね。
ならば、この時間を遡った夢の果ても、私の破滅で終わりを迎えるのでしょう。
……まぁとはいえ、とはいえです。
例え夢であり、終わりが破滅なのだとしても、その時が来るまでは好きにやっていくのも悪くはないでしょう。抗うくらいの自由は、女神様だって認めてくれるはず。
モカ様が引きこもらなかったことで、だいぶ情勢が変わってきているようですし。
ごちゃごちゃと頭を悩ませていると、周囲がにわかに騒がしくなっているのに気づき、顔を上げます。
「モカッ! 今日こそ勝たせて貰うぞ!」
どうやら、フラスコ殿下とモカ様が模擬戦を始めるようです。
「フラスコ様……負けたからって、昔みたいに文句言わないでくださいね?」
「いつの話をしている! いつのッ!」
木剣を突きつけるフラスコ殿下に対して、モカ様はどこか気怠げな様子でいます。
箱魔法の拳を飛ばしてきた時の雰囲気とはだいぶ異なりますね。
あの時のモカ様はまさに騎士然としていた気がしますけど。
あそこで立っているモカ様はなんとも気怠げというか、やる気がないというか……。
まぁ無理矢理に入団させられて、才能があるからという理由で辞めさせて貰えない状況というのが、彼女の在り方を変えてしまっている可能性もありますが。
「ともあれいくぞッ!」
「どうぞ」
見た目通り力強く踏み込み、力強く木剣を振るうフラスコ殿下。
それに対して、モカ様はだらりとした自然体で、木剣を握る手にもあまりチカラが入って居ない様子。
それでもフラスコ殿下の剣に柔らかくぶつけると、フラスコ殿下の剣の軌道がずれて、殿下自らもバランスを崩しました。
当然、そこを狙ってモカ様も攻撃しますが、慣れているのかフラスコ殿下はすぐに立て直しつつ、それを回避。
「相変わらずやりにくい剣を使う!」
「それが持ち味ですので」
暑苦しい調子のフラスコ殿下に対して、モカ様は……なんというかアンニュイです。
まぁやる気もないのに訓練に付き合わされているそうなので、そういう気分なのかもしれませんが。
「続けていくぞ!」
「どうぞ」
再びフラスコ殿下が力強く踏み込んでいき、今度は連撃しかけていきました。
正直、すごいな――くらいにしか分かりません。
そんなフラスコ殿下の猛攻を、モカ様はのらりくらりとした動きで躱していました。
「さすがフラスコ殿下ですな。あちらの女騎士を圧倒しています」
「やはり女性となると、腕力と体力の差はいかんともしがたいですからなぁ」
見学している男性たちはそんな話をしていますが、私はそうは思えません。
そもそも、モカ様はあのお茶会のやりとりの最中に、私の魔法を完全に看破していました。
それも、私自身も気づいてなかった部分に至るまで。
そこから考えるに、彼女は学者的な頭の回転と知恵を持ち、それを戦闘に活かせるタイプの人なのだと思います。
だとしたら、フラスコ殿下の技量を正確に読み取った上で、必要最小限の動きで避けているのではないでしょうか?
しばらくの攻撃と回避の応酬のあと、モカ様が力なく剣を持ち上げると、ふわりと動かしました。
すると、フラスコ殿下の腕が大きく弾かれ、バランスを崩します。
即座にモカ様はそこへ攻撃を仕掛けようとして、後ろへと大きく飛び退きます。
「フラスコ様、わざと弾かれました?」
「まぁな。何年お前と打ち合っていると思っている。今のような攻撃をすれば、上に弾くような動きをするだろうと思ってな。隙を作るコトでお前の隙を突こうかと思ったのだ。
だが、それも躱されてしまうとは……オレもまだまだか」
やれやれ――と素直にモカ様を賞賛する姿は、私の知るフラスコ殿下とは少々違います。
前回の今頃は、粗野で乱暴者という印象がだいぶ強まっていたはず。
ですが、この夢の中のフラスコ殿下は、その部分がだいぶ薄い気がします。
そんなフラスコ殿下にモカ様は少しだけ笑みを浮かべると、剣を軽く掲げました。
すると、彼女の周囲に、羽根の生えた手の平サイズの箱が六個出現します。
「フラスコ様。ここからは魔法アリでやりましょう」
「ハココは六個でいいのか?」
「はい。フラスコ様ならこの数で充分です」
「……他人の力量を短時間に正確にはかれるお前が言うならそうなのだろうが……腹は立つな。お前、最大何個召喚できる?」
「最近、二十五個になりました」
「サイフォン相手の時は何個必要だ?」
「四個ですね」
キッパリとモカ様が口にすると、サイフォン殿下がちょっとだけムッとした顔をしました。
常に飄々とした感じの人だと思っていただけに、あの年相応にほっぺたを膨らませるのは新鮮に見えますね」
「コナは?」
「八個……でしょうか」
殿下たちより、コナさんの方が強いんですね。
「まぁ個人相手にハココを全部召喚するコトは少ないですよ?」
「ちなみに、完全召喚しないと勝てない相手はいるのか?」
「それをやっても勝てるか分からないのがお爺様兄弟です」
「…………そうか。あの兄弟は同じ人類なのか怪しいな」
「はい。同感です」
お互いに嘆息し合ってから、模擬戦が再開されました。
正直、見て解説できるような戦いではないのは確かです。
途中でフラスコ殿下が、風の魔法でモカ様の剣を奪い取るシーンがありました。
勝負ありかと思いきや、近くに飛んでいた箱の中から、いきなり木製の短槍が出てきたかと思うとモカ様はそれを手に取るや殿下に向かって投げつけました。
殿下がその短槍を避ける間に、モカ様は別の箱から木剣の予備を取り出して、構え直すという動きを見せました。
見学していた人たちの中には、元騎士の方もいたのでしょう。
一連の動きに感心と興味が湧いたようです。
「あれは反則では?」
「あの魔法の箱一つ一つに予備の武器や換えの武器が入ってるのだと思うと厄介ですな」
「武器を奪うコトに意味がないのはかなり強いですぞ」
そんなやりとりが聞こえてきます。
私の目にはただ武器を変えただけにしか見えませんでしたが、騎士としての視点ではすごいことのようですわね
「フラスコ殿下。次はこちらから行きます」
「……ああ」
すると、一つだけ残してモカ様の箱たちがフラスコ殿下へ向かって体当たりをしはじめました。
曲線的な動きが出来ないのか、曲がる時はいったん止まって身体の向きを変えてから直線を進む――という動きではありますが、五個の箱に同時に襲われるのです。
フラスコ殿下も躱したり弾いたりと忙しそうですね。
前回の箱魔法は防御に特化した感じでしたが、今回は歩んできた道が違うので攻撃用のものもしっかり用意されているのです。
ふと、マディアに視線を向けます。
「どうしました?」
「いえ」
人の手が壊れるほどのチカラで殴っても傷一つ付かない箱。
それが体当たりをしてくるというのは、もしかしなくてもとんでもなく凶悪なのでは?
模擬戦は結果としてモカ様の勝利。
そのあとも、様々な組み合わせの模擬戦が披露されました。
そうして公開訓練もそろそろ終わりが近づいてきた頃、モカ様が多くの騎士たちに囲まれ始めます。
「あれは何なのでしょうか?」
「皆さん、ドリップス公爵令嬢に話しかけられてますけど?」
「公爵令嬢とはいえあのように殿方を侍らすなんて……!」
ダーリィだけが何やらズレたことを口にしている気がしますね。
「口には気をつけた方が良くてよダーリィ」
「ですがルツーラ様……」
「よく見なさい。女性騎士の方も一緒に混ざっております。
それに、話し終えて輪から離れた騎士の方は見ておりますか?
魔法の使い方や、武器の振り方などを試しているでしょう?」
「それがどうかされましたか?」
察しが悪いですわね……と言いたいところですが、それはかつての私も同じこと。
私自身がモカ様について多少知っているからこそ理解しているだけの話です。
「恐らくはアドバイスをされているのでしょう。
ドリップス公爵令嬢の模擬戦や、その時の会話などを思うに、物事を見極めるチカラが大変高いようですから。
模擬戦や訓練の時に彼女の気づいた修正点やアドバイスなどを貰っているのでしょう」
しかしまぁ、なんというか――公開訓練を見に来たことで、夢の中の流れが妙なことになってきてませんか?
「さて。ドリップス公爵令嬢のアドバイス会のようなモノを終わったようですし、そろそろ見学会も終了でしょう。騎士の皆様に声を掛けるにしても帰るにしても、まずは邪魔にならないよう移動しましょうか」
そんなこんなで、訓練見学は終了していくのでした。
ちなみに、騎士の皆様に声を掛ける女性は少なかった様子。
まぁ私も人のことをあまり言えませんけど、激しい剣の打ち合いや、身体を動かす訓練を初めて見た女性たちからすると、だいぶ刺激的だったようですしね。
私も少々刺激的に感じてはいましたが、マディアの手をあのようにしてしまった手前、鮮血が舞い、痛々しい打撲痕が作られていく様子程度に、目を逸らすわけにはいきませんもの。
・
・
・
騎士の訓練見学から二年が経ちました。
十七歳の夏。つまりは成人会です。
そして、パーティ会場の片隅には――なんかもう驚かなくなってきたアレがありました。前回と合わせて通算三度目ともなると、さすがに馴れてきます。
(箱……?)
(箱だよな……)
(何なのかしらあの箱……?)
(一体なんの箱なのでしょう……?)
(しかし、みなは気にしておらぬようだしな……)
(もしかして、気にしたら負けなのか……?)
(騎士団でたまに見かける箱だな……)
(騎士団の箱姫も今年が成人なのか……)
このざわめきも聞き慣れてきた気がしますね。
まあ騎士関係者や、あの騎士の訓練見学に参加された方は、何となく分かってはいるようですが。
そしてサイフォン殿下が入場してくると、真っ直ぐに箱の元へと歩いていきます。
「箱の姿で構わないから出席するようにとは言ったがな……本当にその姿で出席するとは思わなかった」
とても良い笑顔のサイフォン殿下に、みなさん大分驚かれているようで。
「父も、箱のままで構わないと言ってくれましたので」
「とはいえ、さすがにそのままというのもな……」
しばらく思案し、サイフォン殿下は箱の側に控えている侍女へと声を掛けます。
「カチーナ。このコト……ラテ殿は?」
「恐らく旦那様が隠されているかと」
「なるほど」
うなずくサイフォン殿下の表情はとても楽しそうです。なんというかいじめっ子の笑みというか、いたずら小僧の笑みに近い楽しげな顔ですが。
ただそれだけで、モカ様に通じるものがあったのでしょう。
「……わかりました。わかりましたから……」
騎士の公開訓練の時と同様に、箱の中からモカ様は出てきました。
そして、同じように箱を回収します。
もちろん、訓練ではなくパーティの場ですので、ドレス姿です。
(ドリップス宰相の娘は箱入り娘だと聞いていたが……)
(本当に箱に入っているのか)
(騎士団の箱姫という噂は彼女のコトか?)
(え? あれで騎士なの?)
信じられない気持ちは分かりますけど、あれで下手な騎士よりも強いのですから、恐ろしいものです。
前回以上に、モカ様は敵対したら危険な存在になってますので、私は少し離れた場所で食事を楽しむことにします。
そういえば、前回――少し変わったラベルの方のワインが美味しいと話題になってましたね。
とはいえ、飲み比べてみないと分からないこともあるでしょう。
「そちらのワインの味を試したいので、少量ずつ頂いても?」
「はい」
ワインテーブルのところの給仕に声を掛けて、味見をしてみます。
なるほど、確かに少し変わったラベルのモノの方が美味しいですわね。
「ではこちらのワインを頂けますか」
「かしこまりました」
そうしてワインを注いで貰うことにしました。
手持ち無沙汰に給仕の方を見ていると、ふと何か思い出しそうになり首を傾げます。
はて? 前回では関わり合いになったことはなさそうな方なのに……。
どうしてこんなにも見覚えがあるのでしょうか?
何か印象に残るような出来事に関わった給仕なのでしょうか?
考え事をしながら飲んでいると、すぐに飲みきってしまいました。
ですが物足りません。せっかくですので、おかわりしましょうか。
そう思ってもう一度、先ほどの給仕におかわりをお願いしようと思ったとき、モカ様の侍女がワインを貰っていました。
グラスが二つ。サイフォン殿下の分もあるのでしょう。
……あれ? 前回の時、このタイミングで何か事件みたいのありませんでしたっけ?
うーん……。
ともあれ、ワインのおかわりを頼みましょう。
「おかわりを頂けませんか?」
「え? あ、はい……いや、ですが……」
「?」
妙に給仕がソワソワしていますね。
どうしたのでしょう? 胸中で首を傾げた時――
あ。
――唐突に閃いたというか、思い出しました。
毒殺未遂ッ!!
そうです! 毒殺未遂がありました!
確かあの事件、モカ様の箱にワインを乗せたら毒に気づいたという流れでした。
でも、こちらのモカ様は箱に入っておりません。
もしかしたら、毒に気づかない可能性もあるのでは?
そうなってしまえば問題大ありです。
ちょっと歴史が変わりすぎてしまうので、さりげなく阻止とかしたいのですけど!
思い出せ。思い出せ。
あの時の一連の流れ……そうです!
まずはあの侍女――カチーナでしたか? 彼女に声を掛けなければ!
「あ、あの……」
「はい? なんでしょうか?」
声を掛けると、落ち着いた様子で振り向きます。
なんだか表情の乏しい方のようで少し怖いですが――それよりも。
確かあの毒は光に晒すとキラキラ光るとかそんな感じだったはずですわ!
「その、見間違い……でしたら良いのですが。
貴女が持っているワインの中に、妙にキラキラしたモノが見えた気がしまして。
変なモノでも混じっていたら、問題でしょう?」
「ありがとうございます。例え見間違いであれど、そのようにお声を掛けて頂いたコトにまずは感謝を」
丁寧に礼をしてから、カチーナはグラスに光を当て――目が眇まりました。
鋭く射貫くような目つきに、私へ向けられたものでも無いのに、身が竦みそうです。
「指摘頂きありがとうございます。どうやら本当に異物が混ざっているようです。
お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか? 当家より後日お礼があるかと思いますので」
名乗るほどの者じゃないです――と言って逃げたいのですけれど、妙に迫力のあるカチーナの雰囲気に飲まれて、素直に口にします。
「ル、ルツーラ・キシカ・メンツァールと申します」
「メンツァール伯爵令嬢でしたか。改めてありがとうございます。少々急ぎ対処をしますので、正式なお礼はまた後ほど」
そうしてカチーナは何気ない足取りで、けれどもとんでもない速度でこの場から去っていきました。
あれ――どうやってるのでしょう?
ともあれ、これで歴史が大きくズレることはなくなったはず。
いやまぁそもそもモカ様が引きこもってない時点でだいぶズレてはいるのですけど。
……ああ、そうだ。
もう乗りかかった船ですし、もうひと仕事しましょうか。
私は急いでワインテーブルまで引き返します。
「急に去ってしまってすみません。改めておかわりを頂いても」
「…………」
給仕に声を掛けると何やら睨まれました。
恐らくは、私が毒に気づいたことそのものに腹を立てているのでしょう。
「どうなさいまして? おかわりを欲しいと言っているのですから、給仕の仕事をして欲しいのですけれど」
少し大きめの声でそう口にすれば、周囲の人たちの視線が集まります。
こういう目立ち方はあまりしたくはないのですけれど。
「リッツ! あの給仕だ」
「カチーナ! リッツと共にあちらへ!
それとサイフォン様は箱へ入ってください!」
「え? うわあ!?」
言うやいなや、モカ様は生み出した箱の中にサイフォン様を放り込みました。
箱の中にマディアを入れて私の魔法を解除したことを思うと、あの箱の中では毒を無力化するチカラもあるのでしょう。
それを思うに、サイフォン殿下を箱に入れたのは、解毒が目的なのでしょうね。
とはいえ――なまじ前回とは異なりフィジカルがあるせいか、わりと乱暴な手段をとりましたね。彼女……。
「箱の中を知りたいとは言ったがこんなのはあんまりじゃないかな? もっとムードとか欲しいんだけど?」
箱の中から聞こえてくる殿下の声もだいぶのんきですけど。
「殿下、今は大人しく解毒されててください」
続けて、羽の生えた小さな箱を無数に召喚すると、会場内に解き放ちました。
「ハココ隊! 他にも口にした人がいないか確認。大至急ッ!」
召喚された箱たちはモカ様の指示に従って会場内を飛び回り出します。
なんというか箱の中でボソボソと喋るイメージがあるモカ様が、こんなにも堂々とハキハキした調子で指示を飛ばすのは新鮮ですね。
「会場内の騎士各位ッ! ハココが示す人は毒入りワインを口にしている可能性がありますッ! 大至急、私の元へ連れてきくださいッ!」
瞬間、会場内の騎士ならびに参加者だった騎士たち含めて、表情が切り替わりました。
サイフォン殿下を箱に放り込んだ上でこの指示です。
モカ様のことを騎士団の箱姫と知り、その実力や能力を知っている者たちからすれば、指示の意味を即座に理解することでしょう。
ざわめく会場を尻目に、給仕はこの場から去ろうとし――
「どこへ行かれるのです?」
――私は彼の手首を摑みました。
「……離せッ!」
「構いませんわよ」
暴れる彼に対して、私があっさりと手を離します。
私は彼に触れたかっただけですからね。触れてしまえば、別に手を離しても問題ありません。
「お前は何をしたいんだ?」
「王城敷地内での精神作用系は、例え理由があろうとも叱られてしまいますからね」
手をひらひらと振りながら、私は意味ありげに笑ってみせます。
正直、毒をワインに仕込むような恐ろしい相手に真っ向から睨みあうというのは心臓に悪いことこの上ありませんが――
「苦労したんです。元々は精神操作系。それを精神以外に作用するような使い方を編み出すのは」
「お前は、何を言って……」
――それでも、私も貴族で淑女ですからね。
内心がどれだけ恐怖に竦んでいても、それはおくびにも出さず優雅に振る舞って見せてこそ。
それは前回のお茶会で、モカ様が見せてくれた姿そのもの。
あれはある意味で、貴族として淑女として、理想的な姿ともいえましたから。
「どうぞお好きに逃げてくださって構いませんわ。もっとも、逃げられるのでしたら――ね?」
「意味がわからないがお言葉に甘えさせてもら……って?」
言いながらこの場を去ろうとする給仕は尻餅をつきました。
自分でも何が起こっているのか分からず、目を白黒させています。
「元々は強制的に順番や序列を守らせるコトを優先する魔法だったのですよ?
でも順番や序列を守るコトができるなら、逆に順番や序列を狂わせるコトだって可能ではないか――そう思ったのです」
「お、おま……なにを……?」
未知の何かを見るように私を見上げてくる給仕を無視して、私は説明を続けます。
彼に対しての説明というよりも、周囲――特に騎士の皆さんへの説明です
「以前、本で読んだのですけれど……人間というのは脳から発された合図を『順番』に全身へ伝えるコトで身体を動かしているそうです」
わざわざ手の内を明かすのは、これが精神作用扱いされて叱られないようにという保身。本来は悪手ですけど、モカ様の侍女と、サイフォン殿下の護衛騎士がこっちへ近づいてくる以上は、保身に走りたくなるというものです。
「では、その脳から発された合図が、全身を巡る順番を狂わせたらどうなるでしょう?
手を動かそうとして足が動き、足を動かそうとすると、首が動く。あなたは今、私の魔法によってそういう状態になっているのですわ」
前回の私を思い出しながら、出来るだけこの男を脅かすように、高圧的な笑みを浮かべて告げます。
「では説明を終わります。
ほらほら、どうぞお逃げくださいな。その身体でこの場から逃げ切れるというのでしたら」
「こ、こんな……」
尻餅をついた姿勢から立て直そうともがくも、どうにもできないどころか、床に倒れ込む給仕を下目使いで見下ろしていると、カチーナたちがやってきました。
「メンツァール伯爵令嬢。お怪我などは?」
「お気遣い感謝します。ですが無傷ですわ。
あのタイミングで毒を仕込めたのはこの方の可能性が高いと思いましたので、余計なお世話であったかもしれませんが、足止めさせて頂きました」
「助かります」
殿下の護衛騎士の方が会釈するように頭を下げ、給仕の男を担ぎ上げました。
それを見て、ふと思います。
「動きを阻害する魔法はいつ解除すれば良いでしょうか?」
その言葉に、護衛騎士の方は「ふむ」と小さく息を吐いてから逡巡を見せます。
やがて考えがまとまったのか、拳を握ると倒れている給仕の腹部へ勢いよくねじ込みました。
「ぐえ……」
うめいて白目を剝く給仕を確認してから、何事も無かったかのように言います。
「解除して頂いて大丈夫です」
「……わかりました」
若干、顔が引きつっているのを自覚しながら、私は給仕に左手で給仕に触れながら、右手で指を鳴らします。
指を鳴らす必要はないのですけど、周囲に解いた分かりやすいアピールがあった方が良いでしょう。
「これで解除できました」
「ありがとうございます。カチーナ」
「はい」
二人は私に頭を下げると、颯爽とこの場を去って行きます。
それを見送って一息ついた時――
「あら?」
――モカ様の放った小さな箱が私の周囲をふよふよと漂います。
すると、それに気づいた騎士の方がこちらへと駆け寄ってきました。
「キミ」
「はい?」
「毒入りのワインを口にしている可能性がある。解毒するのでこちらへ」
か、可能な限り関わらないようにするつもりが――まさか、こういうパターンがあるなんて……!
とはいえ断る理由はありません。
もっと言うなら、毒を口にしているかもと言われた状態で、突っぱねる勇気もありません。
あと、突っぱねたら怪しさが爆発し最重要容疑者へとランクアップしそうなので、断るという選択肢はそもそもありません。
「……わかりましたわ。ああ、でも――」
「どうかなさいましたか?」
こうなったら、もう一杯くらいないとやってられません。
ワインを飲んで腹を括りましょうか。
「喉が渇いているのでここのワインを飲んでも? 解毒して頂けるなら、飲んでも問題ありませんわよね?」
「問題しかありませんのでそれはやめてください」
「……そうですか」
何故か騎士様に残念なものを見るような視線を向けられてしまいました。
はぁ――結局、私は箱姫様と関わってしまう運命なのでしょうか?
===
Q「ハココ、最大何個召喚できる?」
A「最近、(戦闘用のハココは)二十五個になりました」
Q「IFモカは正史のような諜報活動してるの?」
A「してますし、その為の諜報用ハココは正史の半分ほど設置してあります。とはいえ、常時引きこもりという万年魔力消費による最大MP成長が正史と比べると控えめになっているのと、戦闘用に余力が必要なので、諜報用ハココの最大設置数がだいぶ減ってしまっています」
Q「騎士団所属なのに諜報活動やってるんだ?」
A「文官系に転職したいのでお父様に文官として優秀ですアピールするべく情報収集してます。その下心を理解した上でもうしばらくは優秀アピールを続けてもらおうとお父様は思っています。
だって箱魔法による情報収集優秀なんだもの。変に文官にするくらいなら、このまま続けてくれた方が助かる。収集した情報に緊急性がある場合、騎士でいた方が自分から動きやすいでしょ?」
Q「モカちゃん文官になれるの?」
A「文官になんか転職させたら引きこもり加速しちゃうじゃない。だからネルタ、貴方が水際で食い止めるの、いいわね?」
「は、はい……」
ここまでお読み頂きありがとうございました٩( 'ω' )و
そして――
コミックス最新8巻が2025/5/29発売予定です!
越冬祭が近づく今巻はシリアス風味の表紙となっております!
予約受付中ですので、是非ともよしなにお願いします!
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2025/05/18
こちらの閑話の連載版スタートしました!
https://ncode.syosetu.com/n6701km/
タイトル上のシリーズリンクや、このあとがきの下の方のリンクからも飛ぶことができます。
ご興味ありましたら是非とも٩( 'ω' )وよしなに!