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【閑話】本編だと作風違いすぎてやれなかった話……その後のお茶会

前回があまりのも激しい戦いだったので、クールダウンもかねたお話です

本編終了後のお話な上に、前話からの続きでもあるので、そちらのご了承のほどを。


 先日、激しいバトルを繰り広げたコンティーナとコナ。


 二人は今、ドリップス公爵家のサロンで揃ってお茶を楽しんでいる。

 ちなみに主催者であるモカであり、彼女は箱の姿――ではなく、珍しく箱から上半身を出して参加していた。


「――それにしても、途中でモニカお婆様と、ゼフェリカ様が来てくれて助かったわ。

 私とティノはもういいかなー……って思い始めてるのに、お爺様たちがやめてくれないんだもの」


 お茶で口を湿しながらそう苦笑するコナに、コンティーナも一つうなずく。


「モカさん、あの時は助かったわ。

 魔法で様子をうかがってたんでしょ? だからモニカ様とゼフィリカ様を呼んでくださったんですよね?」

「あら? そうだったのね。本当に助かったわ」

「いやぁ……その、素直にお礼を言われていいのか、難しいところですけどね……」


 二人からの感謝に、モカは思わず目を逸らす。

 その問題児である祖父コンビを戦場に投入したのもまたモカである。その為、素直に感謝されても、罪悪感の方が勝るというものだ。


 ちなみに、モカとコンティーナはお互いに友達だと思っている為、プライベートではあまりかしこまらないようにしようと決めていた。


 コナは、モカとはそこまで面識はなかったものの遠縁とはいえ親戚筋。さらにはコンティーナとはあの一戦で仲良くなったのもあり、プライベートでは堅苦しいのはナシとしていた。


 そんな関係性の中で、モカとコナだけが堅苦しくやりとりするのも違うな――ということで、三人で揃う時、プライベートでは気楽に喋ろうということになっている。


「どちらかというか……ゼフィリカお婆様とモニカ様を投入しても、止まらなかったら……どうしようかな、という不安は……あったかな?」

「気持ちは分かるけど、お婆様二人を乱入させてなお止まらなかったら、誰がお爺様たちを止めれるの? とは思うんだけど」

「そこは……否定できませんね……」


 モカとコナは同時に嘆息してから――脳裏に、あまり過らせたくない思いつきが過った。


「まだお母様がいましたね」

「まだお母様がいるわね」

「二人のお母様はいったい何者なの?」


 遠い目をするする二人に、コンティーナが思わずツッコミを入れる。


 コンティーナの中ではドリップス公爵夫人ラテも、ウェイビック侯爵夫人エクリッセも、淑女の鑑というイメージが強い。


「うちのお母様は、サテンキーツの血が強く……根は武人の武闘派ですからね。魔法を纏った回し蹴りで、お爺様のガントレットを……壊せますよ」

「あれ、壊すコトできるんだ……」


 若干、ドン引きのコンティーナである。


「そう聞くと――ラテ様と違って、別に武人のルーツのないキューリール伯爵家出身なのに、ふつうにお父様やお爺様を黙らせるコトのできる武力を持つうちのお母様ってなんなんだろう?」

「キューリール家の、エクリッセ様といえば……殿方顔負けの武力をもった騎士として、有名になった……方ですよね?」


 モカがそう口にすると、コナが目をぱちくりと瞬いた。


「え? そうなの?」

「むしろ、なんでコナさんが知らないんですか?」


 コンティーナが思わずそう口にしてから、軽い解説を始める。


「エクリッセ様といえば――サテンキーツ家やウェイビック家のような、元々優秀な武官を輩出するコトで名を轟かせている家系の出身ではなく、むしろ有能な文官を輩出するコトでドリップス家と並んで有名なキューリール家に生まれながらも、文官ではなく武官として有名になった女性として、わたしたちの一つ上の世代では知らぬ者なしって感じよ」

「……初耳ってコトは、意図的にあたしの耳に届かないようになってた?」

「恐らく」


 コナが騎士団に所属してからも耳にしてないところを思うに、騎士団の面々にもエクリッセが釘を刺していたのだと思われる。


「まぁお母様が意図してそれを隠してたんなら、まだしばらく気づいてないフリしてた方がいいのかな」


 うーむ……と逡巡したのち、コナは最終的に「まぁいいか」とあっけらかんと自己完結した。


 それから、三人はそれぞれにお茶やお菓子を一口。

 これで、母親関連の話題は一区切りという空気となった。


 そのあとで最初に新しい話題を切り出したのはコナだ。


「あ、そうだ。話は変わるんだけどさ、ちょっと困っているコトがあるんだ。

 サイフォンとの結婚が決まってるモカになら相談乗れないかなー……って思うんだけど」

「内容にも、よりますけど……?」


 モカがそう首を傾げた時、何かピンと来るものがあったのか思わずコンティーナが漏らす。


「コナさん、もしかして騎士団の居心地が悪い?」

「あれ? なんで分かったの?」


 それをコナがあっさりと認めたことで、コンティーナが申し訳なさそうな顔をする。


「わたしのせいですよね? フラスコ殿下が婚約破棄をしたから……」

「だいたい正解かな。でもティノのせいかと言われると微妙よ? 一番悪いのは正規の手続きも踏まずにやらかしたアイツだし」

「コナさんって、殿下兄弟に辛辣……ですよね?」

「幼馴染みというのもあるし、ほぼ兄弟同然に育ってるからねぇ……」


 コナは苦笑しながらお茶で喉を湿す。


「フラスコは剣や魔法を一緒に鍛錬する男友達って感じが強いし、サイフォンは生意気可愛い弟って感じかな?

 もちろん、プライベートではってだけで、公にはそういう扱いはしないけどね」

「それなら……サイフォン様と結婚する私は、コナさんにとっては……妹みたいなモノ、ですか?」

「そう扱っていいなら」


 笑いながらコナが答えると、モカもちょっと嬉しそうにうなずく。


「はい。是非」


 一人っ子というのもあり、兄弟姉妹にちょっとした憧れがあったのだ。


「わたしも頼れるお姉様がほしいなー」


 横からコンティーナが甘えた声を出すと、それをコナが笑って受け入れる。


「どんと来いよ!」


 年下の二人から頼られることが嫌ではないのだろう。

 コナもコナで、楽しそうにうなずいている。


「さて、妹たち。話を戻したいんだけど」

「あ、はい。騎士団の居心地が悪いって話だよね……」

「そうそう。腫れ物扱いってほどじゃないんだけど、あたしは気にしてないのに、周囲が気にしすぎて居心地悪い――みたいな感じかなぁ」

「なるほど」


 そんな事情により、どこかに転属できないか――というのがコナの悩みのようだ。

 武官の仕事は続けたいが、今の騎士団だと居心地が悪すぎてストレスになっているようである。


「とはいえ……私に相談されても、そういうのは……」


 うーん――とモカが考え込むように眉を(ひそ)める。

 そこへ、モカの背後で控えていたカチーナが、声を掛けた。


「モカお嬢様。発言をよろしいでしょうか」

「うん……どうしたの、カチーナ?」

「人事として転属が可能かどうかはわかりませんが、一つコナ様の要望に応えられる役職に心当たりがあります」


 その言葉に、一番反応したのはコナだ。よほど今の騎士団へストレスが溜まっているのだろう。


「是非、教えて欲しいわ」


 身を乗り出すかのようにしながらコナはカチーナを見、それからモカへと視線を向けた。

 モカはその視線を受けると小さくうなずき、カチーナへと話をするよう視線で示す。


「僭越ながら――ずばり、モカお嬢様の護衛騎士です」

「!」


 コナの目が輝く。完全に乗り気である。


「……必要?」

「必要です。お嬢様が結婚され、住まいを王城へと移せば、お嬢様は王族として扱われます。

 普段は引きこもって外に出ないにしろ、今のように完全な引きこもりはほぼ不可能。出かけるとなれば護衛騎士が必要となるコトでしょう」

「でも、領地から……ラックを呼ぶ、よね?」

「はい。当初の予定ではドリップス領の騎士ラックを護衛騎士として付ける予定ではあります。しかし、ラックには男性であるという欠点があるのです」


 カチーナの解説に、コナとコンティーナの二人は、どこか納得したような顔をする。

 一方で、モカはあまり分かっていなさそうだ。


「護衛対象が女性であり、護衛担当が男性――あるいはその逆もそうですが――といったように、組み合わせの性別が異なると、どうしてもカバーしきれないところが出て来てしまいますから」


 男子禁制の場所ともなれば、ラックは護衛でありながら、モカと共にいれないのだ。

 そうなると、護衛としても意味がなくなってしまう。


「殿下方は、リッツ様とピオーウェン様の一人ずつを護衛騎士としてはいますが、別に一人でなければならないという理由はございません。

 むしろ、コナ様とラックの二人体制になった方が、安全性は増すかと」

「なる……ほど?」


 あまりピンと来た様子のないモカだが、コナとコンティーナはカチーナの説明を正しく理解していた。


「可不可は別にして、候補に挙げて貰いたいかも」

「そうなんですか?」

「そうなんですよ」


 切実な顔をするコナに、モカは少し逡巡してからうなずく。


「それなら……お父様にちょっと、相談してみましょう」

「そうこなくっちゃ!」


 嬉しそうな様子を見ると、よっぽど今の騎士団の居心地が悪いのだろう。


「モカの護衛となれば、リッツも近くで見れるのよね」


 ふふふん……と鼻歌でも歌いそうな様子のコナに、モカとコンティーナは顔を見合わせた。

 もしかしたら、騎士団の居心地よりも、リッツの近くに行けることの方が嬉しいのでは――とモカとコンティーナが考えるのも無理ないことだ。


「コナさんって、リッツ様に会いたいの?」

「会いたいというか……あの筋肉、良くない? 素晴らしい筋肉を間近に見る――こんな眼福はないと思うのよ!」


 グッと握りこぶしを握るコナに、二人は何とも言えない顔をする。


「新しい恋バナの気配がしたのは気のせいだったかしら?」

「案外、自覚が……ないだけかも?」


 だとしたら、そこを突いて盛り上がるのは悪くないかもしれない。


 三人のお茶会は、まだまだ続くのだった。


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