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【閑話】ハコハコクネクネ

 結婚編(書籍2巻)アウター

 結婚後のある日の雑談


 あくまで雑談なので、モカとサイフォンの互いの呼び方以外にはネタバレはありませんから、結婚編未読な方が呼んでもネタバレなどは特にありませんので、警戒せずにどうぞ

 雑談にかこつけてイチャついているだけです٩( 'ω' )و




 ある日、サイフォン様とお茶をしていた時のこと――


「そういえば、以前にフレン様と……お茶した時のコトですが、ハコクネという……話題がでたの、覚えてます?」

「ああ。かなり笑わせて貰ったからな、ちゃんと覚えている」

「色々試して見たんですが、実際にアレはかなり有用ではないか……などと思いまして」

「ふむ?」


 よく分からないという顔をするサイフォン様の前で実演することにします。


 私は箱から上半身を出しました。


「よくやるのが、これですけれど……」

「うむ。よく見るな。最近は身内の前では、積極的に出てくるようになって嬉しいぞ」

「あ、ありがとうございます……」


 なんか急に褒められると照れますね――ってそうではなく。


「箱魔法を組み合わせて、四対八本の足を作ります……」

「おお! 箱が連なったような足が生えてきた!」


 なかなか好感触のようですね。


「ところでどうして八本なんだ?」

「蜘蛛と言えば八本でしょう?」

「え? そここだわるのか?」

「一応ハコクネ――アラクネですし?」

「ふむ。そのこだわりは嫌いではないがな」


 名前的に八本かなぁくらいの感じだったんですが、反応微妙ですね。

 まぁでも、本題はそこではないので!


「このまま足を動かしますと」

「おお!」


 目を輝かせるサイフォン様に、私も思わず笑みをこぼします。


「これ、歩いてみて……思ったんですけど、かなり便利です」

「便利? 確かに箱のまま移動できるのは便利だと思うが」

「そういうコトでは、なくて……ええっと……」


 どう説明したモノかと少しだけ悩み、そして一つ思いつきました。


「えいっ」


 魔法で小さめの箱を呼び出してベッドの側に並べます。

 これで、床と箱とベッドが段差になりました。


「こういう……階段や、斜面に対して……すごい、安定します」

「ほう」


 サイフォン様が目を輝かせる一方で、カチーナとリッツは頭を抱えています。


「安定するのは待機中だけか?」

「いえ、移動も……ですね」


 リッツとカチーナの眉間のしわがますます増えていきます。


「モカ……君は今、兵站や兵法が大きく変わりそうな話をしている自覚はあるかな?」

「カチーナとリッツの……顔を見れば、まぁ……」

「道の悪い荒れ地や、山の斜面とかもいけそうなんだな?」

「問題ないかと」


 ニッコリとサイフォン様は笑うものの、どこか困ったような感じです。


「君の箱の中に他人を入れたくはないが……これは少し考えてしまうな」

「殿下……!」

「落ち着けカチーナ。無論、そのようなコトはしないし、させない。だが実現が可能である以上は、それを想定した思考は必要だ。

 私が王子であり、モカがその妃である以上は――な」

「……失礼しました」

「いやいい。君のモカの忠義を少々軽視した発言をしてしまったのはこちらの落ち度だ」


 あー……えーっと、軽い雑談のつもりが、ちょっと大きくなってしまっているような……。


「モカ、それの歩行は、君の上半身を出した状態でないとダメなのか?」

「えーっと……試してみます」


 箱の中へと潜り、そうして足を動かそうとしますが――


「あらら?」


 そのまま箱はグラリと傾くと、段差を転がってしまいます。


「モカッ!?」

「あ、大丈夫です。転がっても……中には影響が、ないので」


 サイフォン様の慌てた声にそう応え、私は一度足を消しました。

 それから、改めて足を作りだし……作りだし……あら?


「どうしたモカ?」

「んー……これはもしや……」


 私は箱から上半身を出し、改めて足を作りだすと――今度はうまくいきました。


「……なるほど」

「私の声に反応せず百面相……これは魔法考察が捗っている証拠だな」


 横でサイフォン様が何か言っています。

 ……言っているんですが、妙に声が近いような……。


「君の魔法()に嫉妬しそうだ」

「ひゃう!?」


 突然、首筋に口づけをおとされた思わず声を上げてしまいます。


「な、な、な、な……!?」

「呼んでいるのに返事をしてくれなかったからな」


 私は真っ赤になりながら、口付けされた場所を押さえ、カサカサと箱の足を動かしながら遠ざかりました。


「素早いな」


 ……思った以上に速度が出ますね。


「それで、何を考察していたんだ?」


 私が飛び退いた先で考察を再開しようとすると、思考の海に沈む前に、サイフォン様が質問してきました。


 それに、頭の中で答えをまとめながら、返事をします。


「えっと……その、このハコクネモードなんですが」

「ああ」

「私が、箱から上半身を……出してないと、足を生やしたり……動かしたりが、できないようです」

「ふむ」

「元々この使い方は、ハコクネ――というかアラクネの……イメージをベースに、しているせいだとは……います。

 アラクネの形から、大きくはずれるような……姿では使えないのでしょう」


 私がそう解説すると、サイフォン様はとても嬉しそうになるほど――とうなずきました。


「それならあまり無理は言われないな」

「無理、ですか?」

「有事の時に騎士団に請われたら困るという話だ。

 上半身を出したまま君が、戦場を駆け回るところなど想像したくない。

 ……いや、絵面は大変おもしろいのだが、私の心が安まらない」


 真面目なんだか笑っているんだか分からない顔で、だけど真剣な声でサイフォン様がそう言います。

 ちょっと、余計な心配をかけてしまったかもしれませんね。


「何より君の素顔は安売りするべきではないからな。

 見たいときに君の顔を見れるこの特権は、手放したくない」


 ――などと思っていたら、箱から飛び出している私の上半身を抱き寄せて、サイフォン様はそんなことを言ってきました。


「えっと、それは……その……」


 あわわわわわ……嬉しいんですけど、その、やっぱり……こうやって抱き寄せられたり、囁かれたり、撫でられたりは……その、あう~……。


「ハコクネは緊急手段だ。平時は箱のまま動かなくていいさ」

「……はい」


 もう、なんかうなずくしかできません。

 髪を一房つままれて、耳元で囁かれて……。


「しかしハコクネは悪くないな」

「え?」

「足のおかげで少しモカの位置が高くなるだろう? おかげでこうやって触りやすい」

「~~~~~!」


 言いながら、サイフォン様は額に口づけを一つ。

 嬉しいのですけれど、自分がどんどん真っ赤になっていって、動けなくなってしまっていくのを感じます。


「殿下、その辺に……そろそろ限界かと。このままでは茹であがってしまいます」

「名残惜しいな。いっそ逆上せるぐらい茹であがらせてしまってもいいのではないかと思うのだが。

 ……君は見たくないかな、カチーナ。そういうモカを」

「そう言われてしまいますと、悩みますね」

「か、かちーなー……」


 助け船を私の方へと近づけてくるようで、途中でサイフォン様の方へと寄せていくカチーナに、私は思わずか細い声をあげてしまいます。


 それを見かねたのか、サバナスが手を叩きながら私たちの間に入ってきました。


「殿下もそこまでにしてください。

 カチーナもストッパーのようで殿下に協力するのやめましょう?

 モカ様、箱の中に逃げるなら今です」

「サバナス、ありがとぅ……!」


 言われるがままに箱の中へ。

 ああもう……茹だる茹だらない関係なく、真っ赤です真っ赤。

 もう身体中から火を噴いてるようです。


「殿下もカチーナも、どうして一緒に口を尖らせてるんですか……」

「そりゃあ茹だったモカが見たかったからな。なぁカチーナ?」

「同意はします。ですが私は別に口を尖らせたりしてませんよ」

「カチーナのポーカーフェイスは時々すごいよなサバナス」

「殿下も十分にすごいと思いますけどね」


 サバナスはカチーナが共にストッパーになってくれると思っていたようですが、フタをあけてみると、わりとサイフォン様と結託すること多いんですよね。


 主に私をからかったりする方向で……。

 それはそれで困るというか、サイフォン様と一緒になって色々と褒めてくれるのが、恥ずかしいというかこそばゆいというか……。


「二人ともあまりモカ様をからかいすぎると、嫌われてしまうのではありませんか」

「それはないな」

「それはありませんね」

「どこまで自信たっぷりなんですかあなた方は」

「いやでも、私も……たぶん二人のことは、嫌わないと……思いますので……」

「モカ様……」


 なんか、いつもいつも頭を抱えさせてごめんなさい、サバナス。


「サバナス」

「なんですか、リッツ」

「そろそろ色々諦めろ」

「慰める気はゼロですかそうですか!」


 そんなこんなで、ハコクネモードは緊急時と、サイフォン様と視線の高さを合わせる時以外は、使用を控える方向に決まるのでした。



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― 新着の感想 ―
[一言] >殿下、その辺に……そろそろ限界かと。このままでは茹であがってしまいます ・ハコクネじゃなくて、(茹で)ハコタコになってしまうw。
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