第101箱
本日3話更新。こちらはその2話目です。
まだ前の話を読まれていない方は、先にそちらをどうぞ。
「君がいれば、国の膿出しが盛大に出来そうだ――なんて思惑があったのだけれど、蓋を開けてみたら、想定以上の成果が出てしまったな」
「ダメ……でしたか?」
「まさか。最上の結果だ。それをダメだなんて言わないさ。
何よりの誤算は、俺が君にここまで惚れ込んでしまったコトだけど」
「私は嬉しいです。引きこもりで……箱入りな私を、こんなにも好きになってくださったコト」
「そう言って貰えるなら、惚れた甲斐もあったものだ。
ところで、君の思惑っていうのが何だったのか、聞いてもいいかい?」
「えっと……笑わないで、欲しいのですけど」
「ああ」
「サイフォン様と、お近づきになるコト……でした」
私が口にした思惑の正体に、サイフォン様はキョトンとした顔をしました。
ややして、言葉の意味に理解が追いついたのでしょう。彼にしては珍しく照れがあるのか、少々顔を赤くしました。
「それは……何というか……嬉しいと言えばいいのかな?
いや待て。モカ、君のその思惑はいつからのコトだ?」
「いつでしょう……? でも、最初から成人会に焦点をあてていましたよ。サイフォン様に興味を持って貰うなら、あそこしかないと思っていましたから」
「参ったな。つまりほとんど最初から君の手のひらの上だったのか」
「そんな大層なモノではありません……。予想外予定外いっぱいありました。今の結果は――貴方と二人で手に入れたモノですから……」
「そう言って貰えるのは嬉しいね。それにもう堪える必要がなくなったのも嬉しい」
そう言うとサイフォン様は私の額に口づけを落とします。
「サイフォン様……」
「本当に君を気に入っているんだ。手放したりしないから安心してくれ」
ぎゅっと、私を抱きしめる手にチカラを込めるサイフォン様。
それから、以前まどろむ私へと告げた言葉を改めて口にします。
その上で――まだ何か、口にしてなかった言葉を告げようとします。
「だからちゃんと口にしたい。
改めて口にしようとすると、妙に照れてしまうのだけれど……」
恥ずかしそうにはにかむサイフォン様の姿を、私は思わず可愛いと思ってしまう。
そんなちょっと失礼かもしれない感想を胸の奥にしまいこんで、サイフォン様の言葉を待ちます。
「式の後で告げる形になってしまったけれど――愛してる。
今だけは、どんなに恥ずかしくても、箱に隠れないでほしい。
モカ、大好きだよ。俺の伴侶になってくれてありがとう」
愛している。大好きだよ。
事前に箱に入らないで欲しいと言われてなければ、飛び込んでしまったかもしれません。
それくらい恥ずかしくて、でもそれ以上にそれ以上に嬉しい言葉。
だから――私も……。
「私も、大好き……です。愛して――おります、サイフォン様!」
彼の顔を見てちゃんとまっすぐに目を見て、恥ずかしいけど目を逸らさずに口にします。
一生懸命に言葉を紡いだ私に、サイフォン様は嬉しそうに微笑むと、唇を重ねてきました。
最初は驚いて――でも、私はすぐにそれを受け入れて……。
イタズラが好きで、嘘も得意なサイフォン様。
引きこもりで、人と話すのが苦手な私。
本音を見せることが少ない私たちですが、でも今は二人きり――
ゆっくりと離れていくサイフォン様の唇。
――だから、もうちょっと素直な感情を見せても良いですよね?
それを追いかけるように、今度は私からサイフォン様の――旦那様の口に自分の口を重ねるのでした。
本日3話更新。もう1話あります。
次が最終話となります。