凍てついた場所
凍夜がやってくる
腕はひしゃげ
足はちぎれ
口は裂け
耳は破れ
皮膚はただれた
いつから
この街がきらいになったか
好きだったことがあったか
沈んでゆく
日に日に
太陽が溶けるのを待って
みつからない
ただ怠惰にながされて
ここにいる理由
夕闇にまぎれて
浮かびあがれない
見開かれず
笑いかける者はあったか
なぜか幸福に笑顔することは
ずっと彼方の亡霊
ため息の度
肺に開いた凍穴が
チクチクと
刻印された眉間の皺
深く深く
責めを負わすがごとく
涙は止めどなく
硝子の冷たさに震えながら
閉め切った窓にもたれて
ああ死の床にあっても
きっと同じように
今日という時なのだろうと
窓をなぞった指先
冷たい不安が伝わって
爪が割れた
カタカタカタ
夜風におびえるガラスが
静寂を破って
窓枠の隙間が
黄ばんだ新聞のキレハシ
埋めてあったのに
破れた裂け目から
きた
あああ
襲いかかる
凍った記憶
全身の毛穴を犯す
うめき声をあげ
何度も何度も
搾り出される汚物
著しい臭気
残酷に覚まされた意識
簡単に消えることを許さない
震えながら
立ち上がる
窓辺から逃れ
当てもなく
四畳半を彷徨う
ぐるぐるぐるぐる
むき出しの腐れかけの床
足の裏を伝わって
冷たく心臓を貫いた
凍夜はまだ終わらない