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(仮題)無自覚総受け誘い受け系TS娘の冒険  作者: 幻想大好きおじさん(仮名)
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6話 初クエスト~再来する森、躊躇いの正体~

4話と5話の間を考えると早い投稿です。え?数ヶ月間放置と比べるなって???

おっしゃる通りですm(_ _)m

ユアが指してくれた目印のところへゆっくりと進んでいく。移動の大半がユアに背負われて、抱えられてなんていう悲しみ溢れる俺だが、今はしっかり地に足つけて歩いている。隠密行動中だからな。

ちなみにユアは聖騎士の様な鎧を脱いであの黒を基調としたシスターの服のような格好である。

腰まで掛かる艶やかな金髪には良く似合う服装だ。あの長い髪は鎧のときに邪魔になりそうだが、元が精霊に近いため色々上手くやってるそうだ。ユアから聞いた。

そして引き締まったスタイル、ボンキュッボンを地で行っている体のラインが分かるようなデザインのため何日か一緒にいてもやはり目のやり場に困ってしまう。

じゃあなんで脱がせてんだって?

道が狭いからだよ言わせんな。あと俺が脱がせたんじゃない状況的に仕方ないだけだ!


ザク、ザク、と森の中を歩いていく。俺が最初に転生したのは中心部あたりで岩場が多く、比較的歩きやすいところであったのだが……今踏みしめている土の地面。鬱蒼と茂る枝葉に多様な植物と、外周部は森という言葉をそのまま表しているかの様だった。

だが、別に歩行に障害はない。なぜなら、来た道をもどっているだけだから。そう、ユアが不思議なバリアーで俺とユア自身を守って聖騎士姿のそこそこ広い面積で阻む木々をなぎ倒して行った、あの道である。

爆速で進んでいたユアがそれだけの推進力を得るには地面は固く踏みしめる必要があるし、ユアを覆っても余りがあるぐらいの大きさだったバリアは地面まで丁寧に掃除してくれていた。つまりはこの道だけクッソ歩きやすいのである。


「ディー、大丈夫ですか?やはり今からでも私に抱えさせてくれませんか。ディーの透き通った白雪の如く綺麗な足が傷ついてしまう姿を想像しただけで私はおかしくなります……」


だがユアは本当に気が気じゃないみたいに俺の横でうろうろしている。仕草がなんだか可愛くて笑いそうになるが堪える。心配してるところを笑うなんて失礼なことしたら、俺のことを嫌いになっちゃうかも知れないからな。


「そりゃユアに運んでもらった方が効率いいのは分かってるけどさ。俺にも威厳…は無いか。こんな姿だし。コホンっ、プライドくらいある。それに戦闘はユアに任せっぱなしになっちゃうし、少しくらい迷惑かからないようにしたいじゃん。」


「め、迷惑など!」


「っそれ!敬語なんて使わなくていいから。俺たち、と、友達だろ?」


前々から思っていたが、ユアは敬語とタメ口がよく入れ替わってる。もともとが俺が主だから(誰も頼んでない仕様だけど)仕方ないことなんだろう。でも、友達から敬語を使われるのは、少し……寂しい。


「あ^〜ディーマジ天使。我尊死主最高悔無。友達って単語をこんな可愛く言えるの他におる?いやいない。(反語)」


このテンションにも少しは慣れたもので、心の声らしきものは自然と聞き流せるようになってきた。内容覚えてちゃ可哀想だしなぁ…。


「ごめんなさいディー。次から気をつけるわね。」


「べ、別に謝って欲しいわけじゃないから、俺もごめんね。」


和解と俺のワガママが終わった。本当にワガママばっかり言って、迷惑かけていると思う。いつか恩返しをしないとな。なんて思いながら歩いて、ふと気づく。


───これ、バレバレでは?


先に隠密行動がどうたらこうたら偉そうに述べてきたけど、要は少女と美女が、つまりは餌が自分たちからその姿をよく見える道を闊歩している訳である。ユアと話しているときも別に声量を落としていた訳でもなし。


…………マズったな?


森の中から近ずいてくる目印ども。

その輪郭は嫌というほど明確で。


「Gobuu……」

「Gobrr……」

「Grorr……」


現れた緑色の体。その体躯は子供ほどで細く、顔はティッシュを丸めたみたいなクシャッとしたバケモノ顔。

今生の初っ端からお世話になったゴブリンさんである。しかも三体。


依頼内容とピッタリだ、運がいい。さっさと終わらせて帰ろう。

そんなことをユアに伝えようとして、声が出ないことに気づく。


「…ッヒュー……カヒュー」


こんな掠れた声どっかで聞いたな。……あぁそうだ。怖い夢を見た時に……



あ、

ゆ…め…?


不意にお腹に熱さが宿る。まるで何かで殴られたかのような、熱さ。


「……ァ」


ユアの名前すらマトモに呼べないか……。脂汗で髪がべっとりと張り付いている。顔は蒼白に近しいだろうなと思うが、内心、そんな自分を他人事のように思っている自分がいた。森に入る前に感じた躊躇いはこれか。


(トラウマに、なってるってことか。随分と堪えるな)


ガクガクと震え出した足に、情けないながらも失禁の予感すらあって───


───そんなディーの肩を、滑らかな細い腕が抱き寄せた。


「ディー、ディー。大丈夫よ。あんな塵に等しい下等生物があなたに害をなせるわけないのよ。ああディー。私の友。必ず、絶対に、何があっても、何をしても、ディーは私が守るわ。誰にも、何にも、ディーを傷つけさせない。友達だもの。ね?だから安心して。ゆっくり……ゆっくり息をするの。」


ユアの声が、手が、艶めかしさすら感じる囁きが自身に触れる度、体に熱が戻っていく。彼女の言葉が体に溶けていく。


「は、はは───やっぱりユアはすごいや。」


有り体に言えば、ユアはディーを励ましただけである。ゴm…ゴブリンどもへの憤怒とディーへの心配が入れ混じった励ましは、ディーの中でトラウマへとなりかかっていたゴブリンという存在を簡単に解いてしまっていた。


「ねぇ、ユア。ありがとうついでにお願い。あいつら、やっつけちゃって…?」


「ふふっ、やっぱりいつものディーが最高にかわいいっ。任せてディー。」


ディーと同じ目線までくるよう下げていた体を起こし、横に右手を向ける。

ユアの金髪と同じような、黄金のような、蜂蜜のような、荘厳な明るさを携えた魔法陣が浮かぶ。手を突っ込み、引き抜く。それは最初にあったときに使っていた、あの白を基調とした聖騎士鎧とベストマッチな大剣だった。

ユア、ディーが視界から居なくなると真顔。こっそり掛けていたゴブリンたちへの消音(サイレンス)捕縛(バインド)を解く。


「GoBrA…!?!?」


そのときのユアの表情を文に起こすのは……精神衛生上良くないと思うのでこのように想像していただけたら良い。

「ウチのディーを何怖がらせてんだテメェら。種族ごと滅ぼすぞ」といった顔である。実に見たくない類のものだ。現に、ゴブリン達は恐怖によって、元のグチャグチャの顔をさらにグチャグチャに歪ませている。


「本当ならテメェら程度の魔石欠片もいらないが、どうやらクエストの達成とやらで必要だからね。軽く───


───死に晒せ!!!!」


ダンッ!!!ザン!!!!!擬音にすればこのくらいのものだろうか。踏み込んで、横に薙ぎ払う。それにより胴体は切断され、しばらくすると体が塵になっていく。コロ、といくつか魔石が落ちる。

魔力により形作られた魔物たちの核。ゴブリンのそれは随分と小さく。ユアは冷徹な眼差しを向けつつ左手をかざす。手のひらサイズの魔法陣に吸い込まれた計3個の魔石。未だ真顔のユア、なのだが。


「ありがとう、ユア」


白銀の髪を片手で弄り、少し照れつつ(恥ずかしいところを見られたため。)お礼を言うディー。


「はぁ〜ディーの可愛さが身に染みます〜!」


そんなディーに向ける顔は、随分とだらしないもののようだ。


▼▼▼


「では、こちらがクエスト達成の報酬です。」


受付嬢さんから手渡された銅貨6枚を見つめ、表情を緩める。仕事するって達成感あるんだな…

おいそこ、俺は何もしてないとかって言うんじゃない。事実でも言っちゃいけないことがあるんだぞ…!!


「あ、ありがとうございます!」


「いえいえ、お礼なんて言わなくてもいいんですよ。それはディーちゃんの頑張りですから。」


またまた戻ってきて冒険者ギルド。ゴブリン3匹の魔石を届けに来た次第だ。もちろん、と言っていいのか分からないがユアは聖騎士風の鎧姿である。結局ほんとに聖騎士なのか、だって?分かるわけないだろこの世界の聖騎士のことなんざ。そんなのが居るのかも分かんないんだぞ。


「…ディー、用事が終わったのなら帰りませんか?」


「え、あ、うん。いいけど、」


「あぁ、お泊まりの宿は決まっていますか?お金を気にするようでしたらそういう方用の宿泊場所もこちらにありますけど…」


何それ便利。ちょっとkwsk。

受付嬢さんに話を聞こうとしたとき、パシッとユアに手を握られた。


「いえ、間に合っているので結構。」


俺を引っ張ってさっさと冒険者ギルドを抜けるユア。なんか、怒ってる…?

しばらく、ユアに任せるままに歩く。結構な人が2度見してくる。そりゃそうだー俺ら以上に目立つやついないだろ。

だって、()()()()と少女だぜ?そうなのである。俺の手を取った時、ユアはいつの間にか聖騎士鎧姿からシスター姿へチェンジしていたのだ。理由を聞いたら、"無粋な金属でディーの柔肌に触れるなどあってはならないことです。"と言われた。おま、散々おんぶにだっこに人力ロケットとF1体験させといてそれいう?しかも柔肌とか。


「ここまでくれば……ああ、ディー。ごめんなさい。あなたの体力を考えずに引っ張ってしまって。少し顔が赤いわよ。大丈夫?」


「だ、大丈夫。疲れてるわけじゃないから。…コホン、それはそうとユアはどうしてこんなことをしたの?」


街中のディーは凄く無口だった。俺と一緒にいる時みたいなはしゃいだ感じもなく俺に付き従ってくるだけだった。別にそれを気にしてた訳じゃない。感情が抑えられないのに沢山の人がいる街に来るっていうことは大変なことだって俺でも想像がつく。だからできる限り周りを見ないようにしてたのかなって思ってたんだけど……


「急に引っ張るからびっくりしちゃった。いつの間にか鎧姿でもなかったし。」


「あの女にディーの名前を呼ばれたとき、とっても心が荒ぶって、押さえつけられなくなったの。きっと、独占欲というやつだと思うわ。こんな感情を持ったのは初めてで確信はないけれど。」


「ど、独占欲…」


「うぅ、ディーの前では頼れるお姉さんで居たかったのに……幻滅、したかしら…」


めっちゃ落ち込んでる。ドヨーンっていう擬音が見える。独占ってのはつまり独り占めしたいってことで。普通ならあんな態度とった事を怒るべき、怒るべき、なんだけど…


「へへ、へへへ…独占欲があったのか、そっかぁ…」


やばい、嬉しい、にやけちゃう。ユアがぽけっーとした目でこっちを見ているのだけど。これって要は友達が他の人と友達になって自分と疎遠になるかもっ!ていうのを阻止しようとした訳じゃない?んもー可愛すぎかよ俺の友達。友達のユアが最高に可愛い件について。


「ユア、ユア。幻滅なんかしないよ。今すっごく嬉しいんだ。ユアがそんなこと思ってくれてるだなんて。やっぱり最初に来てくれたのがユアで良かった。」


なんとなくそうするべきだと思ったから、ユアにそっと抱きつく。大丈夫だよって、どこにも行かないよって伝えるために。…俺、ユアとあってから随分と大胆なことするようになったな。前は余裕で吃ってたりしたのに。


「ディー。そうですね、友達ですからね、私たち。」


「ははっ、ちょっとは落ち着いた?」


「えぇ、軽く語彙力が消失するぐらいには取り乱して、感情が限界値に達すると逆に鎮静化するってことに気づきましたが、落ち着きました。」


……あ、あはは……

この小説のタグ見返してて思った。コメディってついてんだワ。

これ、コメディ…?(震)

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