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新生ゲーマー アカリ  作者: ゴーレム
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第五話 変身の利便

『ムフー、食事を持ってきたぞ』


壁に割れ目ができてアレイスターが入ってきた。

持ってきた黒い板を床に置くとそれ以外言葉も話さずにそそくさと部屋から出て行ってしまった。


「…え、これって食べれるモノなの?」


私はアレイスターが置いたモノに近付いて運ばれた物を確認すると戸惑ってしまった。


黒い板の上に置いてあったのは蛍光塗料を何色も混ぜたようなカラフルで淡く光っているキューブ状の固形物で思わず固まってしまった。

その横には何を混ぜたらこんな色になるのかと問いただしたくなる球体がフワフワと宙に浮かんでいる。


アレイスターはわざわざ言葉を翻訳する機能があるらしい、顔の半分を模したカラフルな仮面をつけて食事だと、これは食べれるモノだと私に伝えていたが、本当は仮面がなくても言葉は日本語として伝わっている。


しかし、私の聞き間違いだったと思いたい。

目の前にあるのはせっけんやおもちゃなどの食べれない人工物ではないのか。

とても食べ物だとは思えない。


色々な角度から見ても食べ物とは思えない一口サイズのキューブを一つ摘んでみると中々の硬さで指の力だけでは形が崩れるような様子はない。

そのまま鼻に近付けて匂いを嗅いでみる。

…無臭だ、食べ物で無臭なんて恐ろしいぞ、異世界。

意を決して口の中にキューブを放り込む。

硬い、ただひたすらに硬い。

噛んでも噛んでも噛み砕けない。

それに味が無い。

舌に何か当たっている感覚はあるのだが、それ以上の刺激が無い。


もしかしたら飴の類かと思って数分程、口の中で転がしてみる。

…私は石でも舐めているのだろうか。

ますます食べ物とは思えない代物だ。


流石にこのキューブを原形のまま飲み込むのは無理だと思って手の上に吐き出すとキューブはヨダレで濡れていなかった。

口の中の水分を全て奪われたのだろうか。


心配になって口の中に指を入れて触ってみると素肌とは違った口内特有のはツルツルとした触感はあるがサラサラとして水気が全くない。

ヨダレを出そうとすっぱい物を思い浮かべたり舌を動かしたりしたが、ヨダレが全く出ない。


この物体Xが原因かと思ったが、この世界に来て生唾を飲み込んで無いことに思い至り、最初からこの体の仕様という事で納得した。

しかし、今後何かを飲み込む時は気を付けた方が良さそうだ。


次にフワフワと浮いている球体を突いてみる。

すると突いた分だけ球体が変形してもう少し強く押すとその分だけ球体が動いた。


こちらもこの世界の食べ物だろうか。

キューブとはまた違った意味で食べ物とは思えないが。

とりあえず摘んでみると柔らかく、まるで小さな水風船のようだ。

少し力を加えると割れてしまいそうだ。

匂いは無臭だったが、さてこちらは食べられるだろうか。

口の中に入れて球体を噛むとドロッとした食感が口いっぱいに広がり、まるで目玉焼きの半熟卵を食べたような気分だ。

ただし、こちらも味が無い。


異世界の食事は文字通り味気なかった。


そんな味気ない食事を体が拒否反応を起こしているのか、どうにも上手く飲み込めない。

仕方なく、黒い板の上に口の中のドロドロとした液体を吐き出した。

元々の色合いは酷かったが、液体になると本物のゲロに見えてしまう。

無臭のはずなのにどこかすっぱい臭いがしてきそうだ。

完全に吐き出す事ができず、口の中にまだ残っているせいか落ち着かない。


ハンカチを持っているコスチュームに変身して口の中を拭おうとしたら、すっきりとしていた。

どうやら、変身すると私以外のモノは全て消えてしまうらしい。

これで常に清潔を保てそうだ。


異世界の食事のひどさからか、不思議と空腹も渇きも感じない。

しかし、これから毎日あんな食事しか出ないとしたら、いつかはアレに慣れないといけないのか。


もしかしたら魔法の世界ならではな特定の手順を踏まないと食べ物さえ食べられないのだろうか。


この施設で私はモルモットにされるようだし逃げるか。

まず、壁が壊せないか試そう。

壁を蹴ったり体当たりしてみたが、びくともしない。

激しくぶつけたが痛みはない。

それでもこの部屋の壁は頑丈だな。

傭兵のコスチュームで私と同じくらいの鈍器を出してみたが重たくて持てない。

その前に装備が重過ぎて鈍器と一緒に床に倒れてしまった。


どうやら私の身体能力は見た目通りの凡人らしい。

今度壁の割れ目が現れたら、そこから逃げ出そうか。

でも、あの緑の服のように取り込まれたら身動き一つできなくなる。

今は逃げるのは難しそうだ。


…今度、食事について相談しよう。

そうしないといつか餓死してしまいそうだ。


それにしても暇だ。

…あ、そうだ。

あの恋愛ゲームの学生のコスチュームに変身してカバンの中に…あったあった携帯ゲーム機。


電源は…問題なく付いた。

どんなソフトが入ってるのかな?

お、おぉ!

今までやったゲームのタイトルがズラリと並んでいる。

懐かしのゲームも、思い出深いゲームも、クソとしか言いようがないバカゲームまで揃ってる。


試しに長年、時間潰しでやったパズルゲームのソフトを選んで、決定。

お、始まった。

………なるほど、覚えてる内容通りにゲームがプレイできる。

これは退屈しないぞ。

本当にこの変身能力は便利だ。

充電は必要だろうか。

ゲーム機を色々と確かめても充電用差し込み口が見当たらない。

もしかしたら充電しなくても良いのかもしれい。

充電が切れたとしても変身を解いてまたコスチュームを変えれば使う前に戻る、という事は記者のメモの件で分かっている。

つまり、どちらにしてもゲームができる訳だ。

やった!


私は喜んでマットレスに寝転がってゲームを始めようとした。

でも、その前にふと思ったのだが、コスチュームで武器、それも爆弾とかを出せばこの部屋から逃げられるのではないか、と。

爆弾だと私も無事では済まなさそうだが。


早速、変身できるゲームのコスチュームを調べないといけないな。

なんせ、私がプレイしたゲームは膨大だ。

それにさっきの傭兵のコスチュームみたいに変身できても重くて道具が使えなかったり動けなくなる可能性もあるからな。


あと、変身はコスチュームだけなのかも確認しよう。

精神が私で性別が男だったり、人外だったり、果ては無機物だったりしたしね。


よし、今日は眠気が来るまでトコトン調べるぞ。



アカリ

Lv1(1/100)

HP5/11

【ヒールタッチ】

【物理弱点】(2/100)

【水属性弱点】(1/100)

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