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風吹く時  作者: ゆらゆらゆらり
8/9

8~くすみゆく屍

 少年が倒れた原付バイクを起こした。

「痛っ」

 腕でもぶつけたのだろうか。少年はバイクを起こすと、顔をしかめて腕をさすった。

「大丈夫か?」

 白髪の男が声を掛けた。

 心配して人々が集まってきていた。


「大丈夫、平気ですから」

 少年は集まった人々に照れ笑いを浮かべながら、そう答えた。

 特にケガもしていなそうな少年に安心すると、集まった人々は口ぐちに話しを始めた。

「まったく危ないったらありゃしない。急に道路に飛び出しやがって」

「なんか前に警官に噛みついたんだって」

「そうそう、ケガさせたらしいわよ」

「知ってるわよ。あの公園でしょ。恐いわね」

「それにしても、あんなふうに逃げたら……」

「素直に捕まってればいいのにねぇ」

「本当にいい迷惑よ。あんなふうになっても仕方がないでしょう」


 ぶつぶつと文句を言いながら、人々が冷たい視線を向けたそこには――真っ白なイヌが転がっている。

 口からあふれた血が頭の周りに血だまりを作っている。

 縁石横に転がったイヌの側を、警察官の誘導で動き始めた車が何台も走り去っていく。排気ガスがイヌの顔や体に容赦なく吹きかかり、綺麗な白がくすんでいく。それでもイヌを抱き起こす人は誰も……誰もいない。


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