2~幸せ
「ほら、これ自分で作ったんだよ」
彼女は嬉しそうに、学生鞄からお弁当を取り出し、膝の上で広げ始めた。
噴水前のベンチは相変わらず閑散としていて、空気は冬の近づきを感じるほど冷たい。でも、何故だかとっても温かく、心地がいい。
少女は出会ったばかりのボクに、いろいろな話をしてくれた。
名前がマコっていうことや通う中学校のこと、家族のこと……そして、ボクは知った。マコも孤独だということを。
ボクはマコが作ってきてくれたお弁当を夢中で食べた。何だか気持ちが伝わってきて本当においしい。とてつもなく嬉しい。
「いっぱい作ってきたから、どんどん食べて」
マコはにこりと微笑んでいる。
お弁当を食べ終わるとボクらは公園の中を歩いた。笑顔で話す姿が本当に楽しそうだ。
マコが急に足を止めた。突然、横の植栽に駆け寄り、何かを拾ってきた。そして、後ろで手を組むように隠しながら
「いいもの見つけちゃった」
にやりと笑って、それを天に向けて放り投げた。
視線が上へと向かう。
太陽の強い光に視界が白くなる。そんな中、黒く丸いモノが光りに向かって真直ぐ進んでいく。でも、すぐに落ちてきて、地面で気持ちよさそうに弾んだ。
白い視界がもとに戻ってくると、黒かったモノが本当の姿を現した。かわいいその姿を。
転がるピンクの小さなボール。
マコを見ると、視線が重なった。
「ヨーイ、ドン!」
声とともにマコが走り出している。
ボクも負けじとボールに向かった。
ボクらは時間を忘れて夢中で遊んだ。まるで小さな子供のように。
そんな楽しい日々が何日か続いた。時間が本当に早く流れていく。
ボクがおどけて足をあげたり、首をまわしたり、グルグルと体をまわしたりすると、ばあちゃんと同じように手を叩いて喜んでくれた。ヘンテコな動きをダンスと言いいながら。
心の中に水が注がれていく。ばあちゃんが天に旅立った時、一度は枯れてしまった花だけど、マコが新たな種を蒔いてくれた。
マコは平日は制服姿で、土日はかわいい私服で毎日デートをしてくれた。いつもこの公園で。
こんな日がいつまでも続けば……ボクはマコと一緒にいれるだけで幸せだった。