表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風吹く時  作者: ゆらゆらゆらり
2/9

2~幸せ

「ほら、これ自分で作ったんだよ」

 彼女は嬉しそうに、学生鞄からお弁当を取り出し、膝の上で広げ始めた。


 噴水前のベンチは相変わらず閑散としていて、空気は冬の近づきを感じるほど冷たい。でも、何故だかとっても温かく、心地がいい。


 少女は出会ったばかりのボクに、いろいろな話をしてくれた。

 名前がマコっていうことや通う中学校のこと、家族のこと……そして、ボクは知った。マコも孤独だということを。


 ボクはマコが作ってきてくれたお弁当を夢中で食べた。何だか気持ちが伝わってきて本当においしい。とてつもなく嬉しい。

「いっぱい作ってきたから、どんどん食べて」

 マコはにこりと微笑んでいる。


 お弁当を食べ終わるとボクらは公園の中を歩いた。笑顔で話す姿が本当に楽しそうだ。

 マコが急に足を止めた。突然、横の植栽に駆け寄り、何かを拾ってきた。そして、後ろで手を組むように隠しながら

「いいもの見つけちゃった」

 にやりと笑って、それを天に向けて放り投げた。

 視線が上へと向かう。

 太陽の強い光に視界が白くなる。そんな中、黒く丸いモノが光りに向かって真直ぐ進んでいく。でも、すぐに落ちてきて、地面で気持ちよさそうに弾んだ。

 白い視界がもとに戻ってくると、黒かったモノが本当の姿を現した。かわいいその姿を。


 転がるピンクの小さなボール。

 マコを見ると、視線が重なった。

「ヨーイ、ドン!」

 声とともにマコが走り出している。

 ボクも負けじとボールに向かった。


 ボクらは時間を忘れて夢中で遊んだ。まるで小さな子供のように。

 そんな楽しい日々が何日か続いた。時間が本当に早く流れていく。

 ボクがおどけて足をあげたり、首をまわしたり、グルグルと体をまわしたりすると、ばあちゃんと同じように手を叩いて喜んでくれた。ヘンテコな動きをダンスと言いいながら。


 心の中に水が注がれていく。ばあちゃんが天に旅立った時、一度は枯れてしまった花だけど、マコが新たな種を蒔いてくれた。

 マコは平日は制服姿で、土日はかわいい私服で毎日デートをしてくれた。いつもこの公園で。


 こんな日がいつまでも続けば……ボクはマコと一緒にいれるだけで幸せだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ