表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風吹く時  作者: ゆらゆらゆらり
1/9

1~出会い

 ボクはあてもなく歩いていた。

 晩秋の冷たい風が吹き抜け、もの悲しさが胸の中に広がっていく。

 ふと、甲高い笑い声が流れこんできた。

 振り返れば、公園内を老夫婦が散歩をしている。賑やかな子供たちの声が何処から聞えてくる。


 ばあちゃん……。


 もう誰もいない。誰も……。

 ボクは公園に背を向けると、目の前の大通りに視線を向けた。車がひっきりなしに前を通り過ぎていく。

 目をつむった。

 そして、車の流れの中へ身を沈めようと一歩前に――


 冷たい空気の中、風がそっとボクの頬を撫でた。まるでばあちゃんが撫でているような心地いい風に包み込めれていく。冷たいのになんだか温かさを感じる風が優しく囁いてくる。


 優しい音――元気だった頃のばあちゃんがよく口ずさんでいたあのメロディー。


 ボクは公園の中へと走った。




 メロディーは公園内の噴水広場からだった。少し前にはここも夏の日差しをいっぱいに浴びた子供たちが水遊びをし、笑顔と大きな声が広がる場所だった。

 でも、噴水も止まっている今は閑散としている。

 そんな中で、一人の少女が噴水前のベンチに座っている。オルゴールを膝の上に置き、目を閉じている。


 ボクは黙って隣のベンチに座ると目を瞑り、音が心にしみてくるのを受け止めた。



 どれくらいの時間が経っただろうか。

 いつのまにか、メロディーは遠ざかり、ボクは想い出の世界に浸っていた。

 ふと、感じるものがある。目を開けて視線を横に向けると、そこにはボクを見つめる少女の姿があった。


 視線が重なる。


 少女の肩にかかる黒髪が揺れ、口もとが緩んでいく。そして、白い八重歯が輝いた。

 それがボクたち二人の始まりだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ