私無双
人気出たら連載にしたい
出なかったら諦めます
今回めっちゃ楽に書けた
横断歩道を渡る。信号は既に赤。
ピピーッ!!けたたましくクラクションが鳴る。
だが無駄だ。私には通じない。
私は握り拳を掲げ、「ありがとう!」と呪文を叫ぶ。
『ありがとう』は軽い治癒と人間関係系の防御効果を併せ持つ魔法だ。
そして堂々と対岸を踏みしめた。
続いて周囲のざわつきがくる!
間一髪私はそれを鞄でガード。
しかし視線の先に半笑いの若いチャラ男がいた。
(まずい!)
私は素早く視線を外し回避する。
もし視線を合わせていたら、チャラ男に話しかけられる羽目になっていただろう。
(へッ、隙は作らないぜ)
私はニヤリと笑った。
「カーッ、ペッ」私はタンの魔法を吐いた。この魔法は雑魚との遭遇率を下げてくれる。
人垣に裂け目ができた。
私はそこを通って人混みから離れた。
喫茶店がある。
ここを訪れる冒険者は少なくない。
そうでなければこのダンジョンは閉鎖されている。
まあ、要するに中では冒険者同士の競争が激しいということだ。
何はともあれ、私は喫茶店に入る。
するとダンジョンの門番を兼ねる管理人が現れた。
「いらっしゃいませ!」
かなり潤っているのだろう、明るい表情だ。
予想に反し中はすいている。
お陰ですんなりバトル場に案内された。
バトル場。私は椅子に座ると身構えた。
「こちら、メニューになります」
案内してくれた門番から1枚の薄いプラスチック板を渡される。
そこにはモンスターの名とその討伐料がずらりと並んでいた。
ここではモンスターを注文し、討伐料を払って戦う訓練をするのだ。
私はコーヒーを頼んだ。黒っぽくて小ぶりな初級モンスターだ。
「かしこまりました、出来上がるまでお待ちください」
門番はダンジョンの奥へ消えた。
私は静かに目を閉じて待つ。コーヒーなど敵ではない。油断が敵なのだ。
門番がコーヒーを連れてきた。
「こちらコーヒーになります、ごゆっくりどうぞ」
「ありがとう」
門番は疲労が少し治癒。
いよいよバトルだ。
私は傍らに備え付けてある箱から、聖なる粉・砂糖が詰まったスティック状の袋を1つ取る。そしてその封を切るとコーヒーにかけた。
これでコーヒーは判断が甘くなるはずだ。
しかし私もコーヒーの甘い香りで不覚にも眠りを誘われてしまう。
(まずい!)
私はコーヒーにスプーンを突き刺しえぐった。
「チャポーン」
コーヒーは悲鳴をあげ、どす黒い体液を撒き散らす。
「喰らえ!」私はコーヒーに口をつけると一気にカタをつけた。
「ふう……」息をつき、獲物をほふる余韻に浸る。コーヒーの残り香が鼻を撫でる。
満足した私は伝票をあとに残し席を立つ。
ダンジョンの出入り口にあるカウンターに料金をそっと置くと
退出した。
ダンジョンから家に繋がる街道。
先程の人垣はすっかり失せていた。
(今日もよく頑張ったなあ)
私は自分で今日の自分を讃えた。